旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

駅そば日記 金沢「加賀白山そば」

2022-09-28 | 旅のアクセント

 “白えびかきあげそば” を択ぶ。金沢や富山を訪ねたら、酒場でアテにしたいやつだ。
温かいどんぶりに両手を添えて先ずは汁をひと口、んっいい香り、鼻腔をくすぐってくる。
カラッと揚がったかきあげは汁を吸わない。箸で運んでひと口齧ってみる。サクッと歯応えがいい。
ネギと一緒にそばを大掴みしてズズッと啜る。美味いね。駅そばとしては上々のクオリティーだ。

北陸新幹線延伸開業のタイミングで、改札内の蕎麦スタンドは駅ビルRintoに移転して、旅情もなにも無い。
ホームにあった頃の風景は味があった。もっともその頃は立ち喰いそばには興味はなかったのだけれど。
美味しいけれどちょっと寂しい、金沢駅は「加賀白山そば」での一杯なのだ。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
約束 / 渡辺徹 1982


駅そば日記 小田原「箱根そば」

2022-09-14 | 旅のアクセント

 自慢のかき揚げが丼の背にもたれ掛かって、刻みネギとワカメが “かき揚げそば” の麺と汁を覆っている。
具と一緒に麺を大掴みして、フウっと一息かけてズズッと啜る。汁はやや辛めか。美味い。
汁に浸って柔らかくなったところから “かき揚げ” を崩して、またズズッと啜る。旨い。汁が甘みを帯びてきた。

小田急系列の「名代箱根そば」のそばはなかなかレベルが高いと思う。
テーブル席も設置した明るく清潔な店内は、女性も家族連れもそのドアを開けることを躊躇わないだろう。
腹を満たしたら各駅停車で東海道をさらに西進する。青春18きっぷ最後の日は遠州鉄道を呑み潰すつもりだ。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
ゆ・れ・て湘南 / 石川秀美 1982


旅するどんぶり 清澄白河「深川めし」

2022-09-07 | 旅のアクセント

 夕暮れを待てずに生ビーを呷る、"かにみそ豆腐" をアテに冷えた一杯を楽しむ。
こだわりの出汁で炊き込んだ "深川めし" は、あさりとしめじをがふっくらと、ネギと海苔を散らして美味しい。

半蔵門線の旅は始まったばかりなのに、3つ目の清澄白河で早くも途中下車してしまった。
「深川釜匠」で江戸庶民の味を堪能したら、パープルの帯が何やら妖しげな8000系で渋谷をめざそう。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
ひとり街角 / 小泉今日子 1982


駅そば日記 大宮「駅そば」

2022-08-31 | 旅のアクセント

 川越のさつまいも、深谷ねぎ、名産がゴロっと入ってボリューム満点のかき揚げをのせて “さいたまそば”。
汁を一口、そばを大掴みしてズズッと啜る。出汁は辛め、そばは可もなく不可もなしってところか。
辛めの汁は、かき揚げの油と野菜の旨味が沁み出してだんだんマイルドになっていく。この変化が楽しい。
何より、さつまいもとねぎが大きく食感があって美味い。なるほど「旨い駅そば大百科」に載るのも頷ける。

「駅そば」と云う名の駅そばスタンドは、京浜東北線が発着する1・2番線にある。独立系店舗の生き残りかな?
件の “かき揚げ” は、常盤軒の “品川丼” (かき揚げを蕎麦ツユに浸して丼めしに盛る)風にしたら売れると思う。
案外近くで美味い駅そばを発見して、大汗を書きながらも満足の大宮駅なのである。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
NINJIN娘 / 田原俊彦 1982

 


旅先のひと皿 上野広小路「ヒレかつ」

2022-08-03 | 旅のアクセント

 11:30の開店に合わせて、名店・井泉に飛び込む。とりあえず男は黙ってキリンラガーを呷る。
「お箸できれるやわらかいとんかつ」が、創業明治5年(1930年)のこの店のキャッチフレーズ。
やわらかくしたのは、一説には花柳界の芸者衆が小さな口でも食べ易すくするためだとか。 

ビールのアテに和がらしたっぷりにジューシーなヒレを口に放り込む。甘辛なソースもいいね、美味しい。
グラスが空になったら、あったかいご飯とサクサクとした食感を楽しむ。具だくさんの豚汁と一緒にね。
銀座線でぶらりと巡る東京、ビルの谷間にある老舗の味を堪能する休日のランチが愉しい。


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<40年前に街で流れたJ-POP> 
ハイティーン・ブギ / 近藤真彦 1982


旅先のひと皿 瀬戸「ネギみそかつ」

2022-07-20 | 旅のアクセント

 やきものの町を散策した休日、薄らと汗をかいたら「みそかつレスト サカエ」で冷たいビールを一杯。
アテに択んだのは "ネギみそかつ"、甘い味噌ダレを山盛の刻みネギが中和して、これがなかなか美味しい。

2019年から2年間、名鉄や市営地下鉄を潰しにはるばる中京に遠征した。勢い “味噌カツ” を食す機会は多い。
八丁味噌をベースにした甘いタレの「名古屋めし」は、たいてい後半には飽きが来るのだけれど、
この豚カツを覆うシャキシャキの刻みネギとの相性は抜群、最後まで美味しくいただきましたとさ。
栄町から30分、窯元や工房を巡って名古屋めしを食す。瀬戸への小さな旅は密やかな大人の散歩コースなのだ。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
素敵なラブリーボーイ / 小泉今日子 1982


駅そば日記 立川「長田本庄軒」

2022-07-13 | 旅のアクセント

 香ばしいソースが絡んだモチモチの太麺、じっくり煮込んだとろろろの牛すじ、ゴロゴロっとサイの目の
煮込こんにゃく、たっぷりの刻みネギをのせた “ぼっかけ焼きそば” はどうやら神戸のB級グルメらしい。

     

L字カウンターに囲まれた大きな鉄板で、まるでお好み焼きのようにジュージュー焼いてくれる。
焼き色が付いてきた太麺におたまにたっぷりのソースをかけると、ジュッ、白い湯気と甘い香りが広がる。
そんな様子を眺めながら、冷たいジョッキーを呷って待つ。なかなかいい時間だ。

ほどよい待ち時間でボクの “ぼっかけ” が登場、目玉焼きのトッピングを奮発して、マヨネーズもかけちゃう。
量感たっぷりに口に運ぶ。太麺がモチモチ、ときおりシャキッシャキとキャベツ、奥歯にクニュっとこんにゃく、
濃厚な甘辛の太麺に、案外アッサリなぼっかけ(牛スジとこんにゃく)、食感と味の変化が楽しい。
後半、割り箸で突っついて黄身がトロリと麺を包むと今度はマイルドに美味しい。一食の価値ある一皿だ。

ここは多摩のターミナル立川、3路線が連絡する忙しい駅のコンコースに、なぜか「神戸」を見つけた。
ほんとは青梅線ホームの「奥多摩そば」を食べに来たんだけどね。美味しいイレギュラー発生が楽しい。
東京へ戻る中央快速に乗ったけど、シャツ(おそらく髪にも)についた甘い匂いが気になる呑み人なのだ。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
真夏の少女 / 堀ちえみ 1982
     


人生のそばから 浦和「あさぎや」

2022-07-06 | 旅のアクセント

 「はじめまして」のそば処を訪ねたら、“もり” か “ざる” を注文するのが良いだろうか。
先ずは薬味は入れずに、さっと汁につけてツルッと一口。んっ喉越しがいいね。
蕎麦猪口に大根おろしを一気に入れたら、霙をたっぷり絡めでズズッと一口。この辛味が楽しいね。
つけ汁を足して山葵を落とす、溶かない。無作法だけど、たっぷり汁に浸してズズッ。おっとツンときた。

蕎麦前は天ぷらを盛り合わせて、夏野菜と大ぶりの海老天が嬉しい。
酒は “天狗舞” を冷でいただく。山廃仕込特有の濃い山吹色が蛇の目を染めると、もうそれだけで楽しい。
香味と酸味が豊かな純米酒をちびりちびりやりながら、カラッと揚がった天ぷらに塩をまぶして口に運ぶ。
真夏日の休日、冷たい蕎麦を待つこの時間が心地いい。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
夏のヒロイン / 河合奈保子 1982


旅するどんぶり 勝沼「南瓜ほうとう」

2022-06-08 | 旅のアクセント

 勝沼宿の脇本陣?と見紛うような重厚な門を潜ると、ツツジが咲く庭が広がっている。
ワイナリーを3軒巡って漸くのランチは、落ち着いた和の佇まいの中で、郷土料理 “ほうとう” をいただく。

かぼちゃほうとうに、季節のごはん、小鉢、焼きプリンのデザートが付いたセットを択ぶ。多分これが基本。
野菜とキノコがたっぷり、優しい味噌の味にコシのあるほうとう、南瓜の甘みを楽しんで美味しい一杯だね。

緑豊かな庭を眺めながら、ちょっぴり贅沢な時間を過ごしたら、復路の120kmもボクがハンドルを握る。
帰りも下道かって?いいえ大月から中央フリーウェイ ♪。GWをちょっと外してご機嫌な週末のドライブだ。

しあわせについて / さだまさし 1982
     


駅そば日記 八王子「あじさい茶屋」

2022-05-18 | 旅のアクセント

 中央本線のほかに、八高線、横浜線が乗り入れて、八王子は賑やかかつ車両の彩り豊かな駅ですね。
信州から疾走してきた特急あずさに、大宮まで乗り入れる武蔵野線の電車、混沌としている。
そんなことは置いておいて、ボクは横浜線が発着する5・6番ホームの「あじさい茶屋」へ。
「いろり庵きらく」が主流になったJR東日本の駅そばにあって「あじさい茶屋」はむしろ少数派だ。

“菜の花と筍のかき揚げそば” を択ぶ、春を感じさせるこんな季節メニューがあるのは嬉しいね。
先ずはレンゲで汁を一口、えっ、かっ辛い。嫌いではないが、ちょっと辛いというかしょっぱすぎないか?
かき揚げに汁を吸わせて一口、そばをズズッと一口、冷水をゴクリと一口、この繰り返しで時間がかかる。
麺も汁も、どの店も同じものが入ってくるのだろうけど、けっこう店々で味が違うのは楽しいというか発見だ。
まだまだ通いがいのある駅そば日記なのだ。


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スローモーション / 中森明菜 1982
     


駅そば日記 新潟「万代そば」

2022-04-27 | 旅のアクセント

 朝8時、万代シテイバスセンター構内にある「万代そば」へスパイシーな香りに誘われてやってきた。
休日の朝だから客筋は観光客ほ方が多いのかな、立食いそばの店だけど多分9割以上の方がカレーを食べる。
「バスセンターのカレー」といえば誰もが知っている、新潟のB級グルメというかソウルフードというか。

土産用のレトルトを堆く積み上げたカウンターに、無造作にスプーンを突っ込んだ大盛のカレーが出て来た。
きっ黄色い、真っ赤な福神漬けとのコントラストが美しくもある。“普通カレー” だけどかなの量があるね。
とろみが強く、やや甘め、後味かなりスパイシー、豚コマのほかにニンジン、たっぷりのタマネギ、美味しい。

ボクの子どもの頃はすでにルウカレーはあったけど、カレー粉と小麦粉でカレーを作るお宅がまだあった。
叔母が作ってくれたのはこんな黄色いカレーだった。軽く円を描くようにソースをかけて食べた。懐かしい。
単身赴任時代、オフィスとマンションの途中にある「万代そば」で時折り空腹を満たした。Wで懐かしいね。
バスセンターのカレー食べたさに、上越新幹線に飛び乗った大人の休日なのだ。


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急いで!初恋 / 早見優 1982
     


ご当地旨ラーメン事情 富山「支那銀」

2022-04-20 | 旅のアクセント

 大将が言うには富山ラーメンは存在しない。ひと頃マスコミが騒いだ富山ブラックも定着していないね。
店々がさまざまな素材でダシにこだわったスープで味を競う。海の幸にも山の幸にも恵まれた富山らしい。
ゆで卵をのせてもらって “ラーメン” が着丼、「支那銀」の一杯は昔ながらの醤油ラーメンだ。
レンゲでスープをひと口、続けて極太麺をズズッと啜る。鶏ガラベースの醤油味が麺に絡んで旨い。

ボクにはやや濃いめのしっかりした味付けは、なるほど富山ブラックが生まれる素地はあるのかなぁと思う。
旅の途中で出会う昔ながらのラーメンはこころをほっこりさせるね。
店を出る。ライトアップされた富山駅前に、ワシントン ポトマック河畔の桜「里帰り桜」が揺れていた。


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妖精時代 / 石川秀美 1982


駅そば日記 上野「ピリ辛菜の花そば」

2022-03-23 | 旅のアクセント

「春の美味」と謳った季節メニューから択んだ “ピリ辛菜の花そば” がカウンターに着丼した。
ピリ辛って?丼の中にはゴルフボール大の坦々が浮いて、じわぁって赤い辛味がつゆに滲み出してきた。
汁をひと口、続いて割り箸で大掴みにしてズズッと啜る。んっ意外と坦々は蕎麦にも合うんだなぁ。
見た目も賑やかで良いのだけれど、春を感じるのには “菜の花” だけでいいね。

蕎麦スタンドが立つ11・12番ホームは常磐快速の折り返しホーム。多くの電車が品川乗り入れになった今、
ホームは閑散としている。これは売り上げもきついだろうなと思う。大きなお世話だけど。
この日の東京はソメイヨシノの開花宣言があって、スタンドとは対照的に、公園口は華やかに賑わっていた。


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私の16才 / 小泉今日子 1982


駅そば日記 曳舟「曳舟そば」

2022-03-02 | 旅のアクセント

 東京スカイツリーを見上げる曳舟駅の駅ナカに蕎麦スタンドがあった。思えば私鉄駅では初めての訪問だ。
これって関西風なの?いや違うな、鰹節と塩だし、とにかく透き通った濃厚な出汁が特徴だね。
択んだのは 本場大阪!“あぶらかすうどん”、丼の中でおかかが踊っている。
無料サービスの玉子を落としてズズッと啜る。昆布がいいアクセントになっているね。美味い。

カリカリの食感で中はプルプル、ところで “油かす” ってなに?
あとで調べたら、牛のホルモンを油が抜けるまでカリカリに揚げたものらしい。ええっ。
お酒は嗜むけど、モツだのホルモンだのレバーだの、大の苦手な私。「知らぬが•••」
そんなことはつゆ知らず、澄んだ塩だしを最後の一滴まで平げて、悔しいけれど美味しい一杯でした。


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愛してモナムール / 岩崎良美 1982
     


駅そば日記 藤沢「大船軒」

2022-02-23 | 旅のアクセント

 ここは藤沢なのに「大船軒」ってこれ如何に。
3・4番線の階段下にある古びた蕎麦スタンドは、ちょっと屈まないと入れないほど窮屈な造りになっている。
これまた冬の限定メニューだと云う “豚肉入りけんちんそば” は根菜たっぷり、見るからに温まりそう。
薄切りの豚肉と多めのそばを割り箸で掴んで大胆に口に運ぶ。ズズッと啜るとほのかに柚子の香り。美味い。

このホームで年季の入った蕎麦スタンド以上に目立つのがKiosk、初代湘南電車80系が小田原方面を向いている。
3扉両開きの電車がデビューする1960年代中頃まで、東海道本線の主役として東奔西走していたはずだ。
ボクの子どもの頃、信州では東海道本線で役目を終えた80系電車が走っていた。とても懐かしいなぁ。
さてっと、東海道本線を下ったら、次はどの駅に蕎麦スタンドがあるのだろうか?


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愛をください / 河合奈保子 1982