旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

高田の夏は爽涼と 2023.

2023-08-30 | 日記・エッセイ・コラム

『高田の夏は爽涼と 日本海の波が呼ぶ』
外濠に架かる朱の欄干の袂に、七五調の歌碑が置かれている。旧制高田中学校の寮歌だそうだ。
爽涼どころか連日の酷暑に草木はもちろん三重櫓でさえも、クタッと疲れているようにも見える。

春には4,000本の桜が爛漫に咲き誇る高田城址公園、夏には紅蓮と白蓮が外濠を埋め尽くす。
ハスは未明から早朝に咲き始めて午後には閉じてしまうから、午前中に訪ねるといい。
とん汁に時間を費やして、すでに蓮花はお椀状になっている。それでも濃緑に点描するピンクと白が美しい。

蓮に埋め尽くされた外堀の背景は詩に謳われる「南葉の山」か。
南へと尾根を辿ると「妙高山」が見えるはずだけど、今日は湧き出た雲に頂を隠している。
20代の頃は東京を遠く離れて配属された我が身を嘆いたけれど、
今はただ穏やかにこの風景を眺めるのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Dandelion - The Late Blooming Dandelion / 松任谷由実 1983


新井名物たちばなのとん汁

2023-08-23 | 日記・エッセイ・コラム

白味噌で仕立ての汁に豚肉と豆腐が辛うじて原形を止める程度に蕩けている。
先ずはレンゲで一口啜る。大量の玉ねぎが自然の甘みを引き出して、名物の “とん汁” が美味しい。
小さな民家のようなお店で、路肩に長距離トラックが停まっていた、あの頃の味と変わらない。嬉しい。

箸休めに “なす漬け” を頼んだ。新潟の茄子は枝豆と並ぶほど種類も多くて美味い。勢い消費も多い。
夏の夕方、新潟駅の新幹線コンコースでは、茄子やなす漬けのワゴンが出る。
出張族や、金曜日にはボクのような単身族が買い求めて東京行きに乗る訳だ。それほどに美味しい。

信州でお盆の義理ごとを終え、少々遠回りになるけど新潟県上越を巡る。
20代で8年、40代で3年を過ごしたから、それなりに食べたいもの、訪ねたいところがある。
とん汁の名店のその一つ。きっと帰省した家族が連れ立ってふるさとの名物を食べに来ている。
狂ったような暑さの中を1時間と少々待ったけど、懐かしくも美味しい一丼だった。
ごちそう様でした。

<40年前に街で流れたJ-POP>
CAT'S EYE / 杏里 1983


真夏のぎんねこ

2023-08-16 | 日記・エッセイ・コラム

思い出したように訪ねたくなるのが「ぎんねこ」という老舗の蕎麦屋さん。
県庁まで続く石畳の小路、向かい側はタイル張りの床屋さん、
その向こうに銭湯があって、昭和風情の趣のある一帯となっている。

暑い日の人気メニューは “冷やし月見”、シャキッとレタス、ワカメにトマトがのって賑やかだね。
お皿を傾けて山葵を汁に溶くのももどかしく大掴みに啜る。後半は半熟玉子を割ってこれまた美味しい。

客層はYシャツ姿は稀で、ビジネスカジュアルともいえない軽装の方が大半を占める。
古くからの商店街の旦那衆かご隠居ってところだろうか。

暑いからこそスパイスの効いた “カレーライス” は食べたい。
出汁の効いた蕎麦屋さんのカレーって好きなんだよね。昔ながらのポークカレーが旨い。

そしてボクの基本は “大ざる”、刻み海苔を絡めてやや甘の汁にサッと浸してズズッと啜る。美味しい。
年季が入っているけどよく磨かれた漆のせいろにお店の歴史と誇りを感じる。

ただいま「ぎんねこ」は8日間のお盆休み中、お休みが明けたら何を食べようか。
“冷やしたぬき” か “かつカレー” かな。お盆明けが楽しみな “真夏のぎんね” こなのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
家路 / 岩崎宏美 1983


夏酒 でんご@浦和

2023-08-09 | 日記・エッセイ・コラム

ホームタウンの駅を降り立った夜、なんだか急に一杯呑みたくなった。
ブログの展開的に毎日呑んでそうだけど、あくまでも旅のアクセント、普段そんなに呑むことはない。
暑い一日だったから、タンブラーの生ビールで自分に「お疲れさま」っと。
目の前で大将が茹で上げてくれた “枝豆” は甘味たっぷり、塩を振ってシンプルがいい。

商店街の豆腐屋さんが作っている “おぼろ豆腐” は薬味のバリエーションで味変して美味しい。
若狭の “早瀬浦” は福井を訪ねた夜、小料理屋の板さんが教えてくれた酒。盛夏の搾りたてが旨い。

この店の看板的メニュー “ねぎ豚ポン酢” は、カラッと揚がった豚ばら肉を青ネギとポン酢でさっぱりといただく。
涼しげなブルーボトル、米沢の “九郎左衛門” は、おそらく呑み人には初めましてのお酒。
香り華やかでフルーティーな旨味の “超裏•雅山流”、これは美味いなぁ。
でもアテとの親和性からしたら、この酒を先に飲むべきだったかな、ちょっと残念。

なにしろ帰宅直前の美味しい寄り道が、案外愉しい時間になることを知った夜です。

 

<40年前に街で流れたAmerican-POPS>
Tell Her About It / Billy Joel  1983


大人の休日 銚子港で旬の刺身定食を

2023-07-26 | 日記・エッセイ・コラム

利根川河口を眺める席で銚子漁港に入ってくる漁船の連なりを眺めている。
この時間に戻ってくる船はどんな魚を水揚げするのだろうか。ほどなくランチの膳が運ばれてくる。
“ほうぼう”、“かれい”、“かわはぎ” と白身が美味しい。ほんとは純米吟醸が欲しいところだ。

ちょっと前の話し、大人の休日の初日、ターゲットにしていた東北地方は梅雨前線が停滞していた。
それではと、ゆっくり始動して、10時過ぎの特急で銚子までランチに出かけることにしよう。

さっきまで追い抜く黄色い電車を数えていた都会の景色は、千葉を過ぎるとあっという間に田園風景に。
空いた平日の車内に、プシュッと SUMMER PILS を開ける音が案外大きく響く。

今にも降り出しそうな空の下、銚子漁港まで歩いたら、おっとめざした店は臨時休業。
行き当たりばったりの呑み人には結構起こる小さな事件だ。もう少し歩くか。

ところで予定より先の店まで歩いたから、目論んでいた帰りの特急が出発してしまった。これが2つ目の事件。
甲子正宗のチーバカップを舐めながら、鈍行列車を乗り継いで帰りますか。

<40年前に街で流れたJ-POP>
そんなヒロシに騙されて / 高田みずえ 1983


大樹

2023-07-15 | 日記・エッセイ・コラム

会津若松駅で東武鉄道の「大樹」を見かけました。
まだニュースリリースはありませんが、いずれ会津盆地まで営業運転するのでしょうか。
東武鬼怒川線から野岩鉄道〜会津鉄道〜只見線を長駆会津若松までやってきたら、
ましてC11が牽引してきて「SLばんえつ物語」のC57と並んだら、
なんだか鉄道ファンならずともワクワクしますね。

只見線の5番ホームにやってきたら10名ほどのカメラを構えたファンがシャッターを切っています。
「試」のヘッドマーク(試運転の意味?)をつけたディーゼル機関車がターゲットのようです。
なんだか北斗星カラーの機関車と3両の客車ですが、鉄分の足りないボクにはわかりません。

連結部分に回ってみると、こちらには「大樹」のヘッドーマーク。
なるほど東武鉄道の車両ですね。

ほどなくディーゼル機関車は切り離されて、単機、喜多方方面に走り去ります。
取り残されたブルートレインっぽい客車には、やはり「大樹」の幕が誇らしげに掲げてあります。

そうこうしているうちにエンジンを唸らせて、一本奥の機回し線にDE10 1109号機が戻ってきます。
こうなると構内踏切は鳴りっぱなし、市道には車の列ができているね。

小走りに改札を出て踏切までやってくると、ちょうどDE10が3度目の方向転換をしてバックしてきました。
っで「大樹」のヘッドマークが先頭に収まって、パチりと一枚。これから下今市まで戻ります。
ニュースリリースが楽しみですね。会津で拾ったちょっぴり鉄ネタです。

ホワット・ア・フィーリング / アイリーン・キャラ 1983


旅の途中の酒場探訪 浦和「旬菜料理でんご」

2023-07-12 | 日記・エッセイ・コラム

旧中山道と埼玉県庁官舎の裏門をつなぐ道だから「裏門通り」ってこの街では親しみを込めて呼称される。
賑やかな商店と飲食店が並ぶタイル張りの通りは、西に向かうにつれ徐々に閑静な雰囲気に変わっていく。
酒場詩人も訪れた焼き鳥の名店「弁慶」を過ぎた辺りにその店はある。県庁まではあと僅かだ。

“枝豆” に塩で焼いてもらった “つくね串” と “鴨ネギ串” を並べて生ビールで始める。

盛り合わせは、イサキ、カツオ、アジ、平貝、金目鯛を並べて鮮やか。
日本酒は西の夏酒をテーマに、まずは愛媛の “石鎚 吟醸酒 夏吟”、香り高いシャープな酒だ。

瀬戸内海を渡って山口は美祢の “大嶺3粒 夏純かすみ生酒”、甘酸っぱい香りで爽やかな夏酒が、
刻み海苔をたっぷりのせて、水菜とカリカリの “じゃこサラダ” をアテに美味しい。

グラタン風の一皿はなんだか忘れてしまった。三杯目は福岡の “三井の寿 夏吟醸チカーラ” を。
セミのラベルが愛らしい夏酒は、リンゴ酸の爽やかな酸味と優しい甘みが同居した清涼感ある純米吟醸が旨い。

暖簾の外はようやく暗くなってきたね。夏酒に酔いしれて、浦和の街に夜の帳が下りるのだ。

<40年前に街で流れたAmerican-POPS>
Every Breath You Take / The Police 1983


ちまき

2023-07-05 | 日記・エッセイ・コラム

信州の妹から小さな冷蔵便が届いた。
いそいそと開くとふた房の “ちまき” が詰まっている。

北信濃から越後のそれはシンプルで素朴な味わいの “三角ちまき” できな粉をかけていただく。
一説には戦国武将の上杉謙信が戦の際の携行食として考案したとも言われる。

思いがけず手にしたお袋の味、もう10数年ぶりになるのかな。
あの頃は決して好んで食べたりしなかったけど、
今となっては、たっぷり “きな粉” を付けて美味しい。
懐かしい味と思い出を、どうもありがとう。

千曲川 / サム・テイラー


青春18きっぷ 鶴ヶ城のさくら

2023-04-29 | 日記・エッセイ・コラム

 赤瓦の天守閣を背景にソメイヨシノが美しい。降りからの北風に花吹雪が舞い、濠には花筏が浮かぶ。 

青春18きっぷが利用できる最後の日曜日、tenki.jp を睨みながら、どうやら北を目指した方が良さそうだ。
東北本線(宇都宮線)の始発列車に飛び乗ると、09:30には郡山、ここから会津へ向かう快速電車に乗り換える。

30分もすると、車窓右手には「宝の山よ」と謳われる磐梯山が見えてきた。残雪は少ない。
鶴ヶ城、日中線しだれ桜並木、ちょうど満開の桜の名所を目指して、快速あいづ1号の車内は満員なのだ。
だから駅ビル・エスパル郡山で仕込んだ二本松の蔵のワンカップは肩掛けのバックに眠ったままだ。

会津若松で連絡する喜多方方面への列車が車両故障で遅延しているらしい。
ここは日中線しだれ桜並木を諦めて鶴ヶ城観桜に切り替える。日帰り普通列車の旅は滞在時間に制約がある。
駅から大町通りを南下すること10分、昔ながらの「若松食堂」は会津ソースカツ丼発祥店と言われている。

厨房はお婆ちゃんお一人だから、ボクはピーナッツを抓みながら瓶ビール。まだストーブが燃えている。
ゆったり時間は流れて、ご飯にたっぷりと敷いたキャベツの上にソースに浸したトンカツをのせて真打ち登場。
柔らかいトンカツが甘いソースに塗れて “ソースカツ丼” が美味しい。

曇りがちな空模様だけど、厚い雲は桜の枝を揺する北風に流されて、つかのま青空を覗かせる。
約1,000本のソメイヨシノを従えた鶴ヶ城の桜の季節も、青春18きっぷの旅も終わりを迎える週末だ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
恋人時代 / 長渕剛 1983


青春18きっぷ 人生のそばから

2023-04-22 | 日記・エッセイ・コラム

青春18きっぷに四つ目の入鋏印を受け、この日も高崎線・上越線を乗り継いで、ここは新潟県の小出駅。
昨秋、豪雨災害による不通から11年を経て復旧した全国有数の秘境路線・只見線を旅したいと思っている。
会津若松まで抜ければ、延長7,270キロ、JR東日本全路線の呑み潰しを晴れて達成することになるのだ。

430Dの出発まではちょうど2時間、雪解け水溢れる魚野川を渡って、こじんまりとした小出の市街地へ。
ふらりと寄ったそば処は、広々とした石のカウンターが流れて、なかなかどうして良い感じのお店だ。

椅子ひとつ開けてご常連がお銚子を傾けている。ならば遠慮なくとここ小出の酒 “緑川” をガラスの酒器で。
突き出しは “こごみおひたし”、春の苦味を淡麗辛口の純米酒と愉しむ。ちょっと贅沢な時間になりそうだ。 

蕎麦前の “栃尾あぶらげ” は納豆を挟んだ一品、中味はジューシー食感はサクサク、これは美味しいね。
足りなくなっちゃったね、お酒。こんどは六日町の酒 “八海山” 、これもまた新潟らしい淡麗辛口なのだ。

頃合いで “へぎ蕎麦” を注文、五合(二人前)からだけど、布海苔つなぎにした魚沼の蕎麦をいただきたい。
先ずは蕎麦ちょこを揚げ玉を浮かべて、手繰りの四つ五つをマイルドに楽しむ。なかなかいいぞ。
蕎麦つゆを入れ替えたら、わさびを溶いて布海苔のツルツルとした喉越しを楽しむ。こっれ美味しい。

足早に小雨降る小出駅に戻ったら、4番線の会津若松行きは2両編成に乗客を満たして発車5分前。
なんだか面倒になってきたね。雨は降ってるしほろ酔いだし。東京方面に戻ろう。奥只見の旅はまたいずれ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
感度は良好 / 門あさ美 1983


青春18きっぷ 高田城址公園のさくら

2023-04-15 | 日記・エッセイ・コラム

 青春18きっぷに三つ目の入鋏印を受けたら、高崎線の始発821Mに飛び乗る。まだ少し眠たい。
目的地はえちごトキめき鉄道の高田、満開を迎えた高田城址公園の4,000本の桜を観たい。

在来線で高田まで行くのは、かつては高崎線から信越本線に入って碓氷峠を登り、長野を経由した。
旧くは「妙高」とか「白山」って急行に乗ったはずだ。今では分断されたこのルートの代わりに、
高崎線から上越線に入って長岡から信越本線を逆走するしかない。(途中、ほくほく線でショートカットも)

昨年の桜の頃は、魚沼の田圃には厚く雪が残っていた気がするが、今年はもう代掻きができそうだ。
それでも越後三山(八海山・越後駒ヶ岳・中ノ岳)は残雪をたっぷり抱いて、越後路の旅情を掻き立てる。
ボクはと言えば、越後湯沢で求めた “風味爽快ニシテ” を飲みながら、この山々を飽かず眺めるのだ。

11:04、高田駅に上り下りの電車が停まると、普段から比べると信じられない位の乗客を吐き出す。
降車客は一人の例外もなく?、ソメイヨシノで着飾った駅舎を背に、高田城址公園に向かって列をつくる。

高田城址公園へ向かう途中で青田川を渡る。ボクが寧ろ推奨したい桜の情景がここだ。
かつて武家屋敷が並んだという閑静な住宅地、水面を覆うかのように桜枝を伸ばすソメイヨシノが美しい。

外濠を巡るようにどこまでもソメイヨシノの並木が続く。約4,000本の桜が爛漫に咲き誇っているのだ。
高田城は家康の六男、松平忠輝(越後少将)公の居城として天下普請によって造られた。
忠輝公は七十五万石の大封であったが、その改易後は徐々に小藩になっていく。
越後少将家が続いていたらこの町はまた別の発展があったかも知れないが、歴史にタラレバはあまり意味が無い。

話は逸れたが、高田城址公園は約3,000のぼんぼりに照らされる夜桜が美しい。
弘前公園、上野恩賜公園とともに日本三大夜桜といわれ、内濠に映る桜と三重櫓の姿はいい絵になるね。

呑み人のお奨めは真っ白な妙高山(2,454m)を背景にした外濠の桜たち。これってとびきり美しいと思うのだ。
さてこの情景を焼き付けたら駅への道を急ぎ戻る。片道5時間半、滞在1時間半、過酷な青春18きっぷの旅だ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
君に、胸キュン。/ YMO 1983


小雨降る土曜日には

2023-04-12 | 日記・エッセイ・コラム

 さして予定のない小雨降る土曜日は、少しゆっくり布団を這い出して、朝と昼を兼ねて近所の蕎麦屋へ。
蕎麦屋とはいってもメニュー豊富な大衆食堂的な店には、辺りの邸やマンションから常連さんがやってくる。
折よく四人掛けが空いた。女将さんにラガーの栓を抜いてもらったら、“カツ煮” と “餃子” を突っつく。

2本目のビールが終わるタイミングで、麺の上を賑やかせて “五目中華” が着丼。優しい塩味が美味しい。
「青春18きっぷ」の季節が終わって、ほんと久しぶりに怠惰な週末を楽しんでいる。ごちそうさまです。
さてっと、一息ついたら記事を書くか、試験の準備でもしようか。このまま呑んで終わる訳にもいかないね。

<40年前に街で流れたJ-POP>
夏色のナンシー / 早見優 1983


古刹の枝垂桜とカニ味噌と会津中将と

2023-03-30 | 日記・エッセイ・コラム

 伊勢丹の北側を真っ直ぐ西へ延びる小路を「裏門通り」という。県庁の裏門へ通じるから地元ではそう呼ぶ。
タイルを敷いたその小路は昭和レトロなノスタルジーに溢れている。大きな通りと交差する度、小路は趣きを
変えるのだけれど、住宅に昔からの商店、呑み屋が混在してくる辺りにその寿司割烹は在る。

三杯目の “ゆらぎ想天坊” は長岡の平野と日本海を分つ山麓の蔵、多分だけど、初めましてかも知れない。
“いわし塩辛酒盗和え” を突っつきながら、やわらかな甘みとキレを持った春季限定の原酒が美味しい。

酒肴五品を味わったら、平皿におすすめ握りが五貫が並んで美しい。っで、四杯目は白山の “手取川” を択ぶ。
爽やかでフレッシュな “大吟醸あらばしり” が案外赤身にも違和感なく、美味しくいだだいた。

握りで〆のはずが、翌朝スマホをチェックしたら、さらに一酒一肴。記憶は曖昧なのだけれど、
確かに “会津中将” の濃醇な純米酒をいただいている。肴は “紅ずわいのカニ味噌和え” か。
やはり調子に乗って少々過ぎたようではある。そろそろ二度目の訪問を考えているのだけれど、ちょっと怖いなぁ。

Strasse / CASIOPEA 1983


古刹の枝垂桜とあん肝と天の戸美稲と

2023-03-22 | 日記・エッセイ・コラム

 弘法大師の創建と伝わる真言宗の古刹・玉蔵院、地元では桜の名所としても名高い。
本堂横、樹齢100年を超える枝垂れ桜はピンクの花びらが舞いはじめて、今日あたりが最高の見頃だろうか。

いつまでも東京に通うわけではないから、何年か先を見越して、馴染みの小料理屋があったらいいと思う。
そう、人気TVドラマシリーズの「花の里」とか「こてまり」のような。

はじめてお邪魔したカウンターに8席のその店は、小料理屋と言うよりは寿司割烹だろうか。
板場には誠実そうな大将、寡黙に柳刃を入れるのは先代だろうか。森口瑤子似の女将のお酌は当てが外れた。

まずはご存知富山の “立山” を択ぶ。ほのかな芳香で旨味あり、軽快な飲み口の特別純米酒からはじめる。
お造りはレモンを絞って “たひら貝” に “タコ”、あとは “キンメ”、“しめさば”、“まぐろ” が並んだ。

二杯目は横手の “天の戸 美稲80”、味わい深い無濾過純米酒を愉しみながら、濃厚な “あん肝” を突っつく。

はじめましての店では「おまかせ」に限る。僭越だけれど、店の雰囲気と板場の腕を感じるには良いと思う。
なかなか素敵なお店に巡り会ったかな。ひとさら一皿が美しく美味しい。そして季節の旬を味わえた宵だ。

僕らは気に入ったお店だけど逆はどうだろう。実はこの後さらに三杯いただいている。ちょっと調子付いた。
まさか「出禁」の烙印は押されてないと思うけれど・・・。彼女の頬もほんのり桜色、枝垂れ満開の夜は更ける。

Long Term Memory / CASIOPEA 1983


SUSHI × Bourgogne

2023-03-01 | 日記・エッセイ・コラム

エントリーは “葡萄海老” の握り、「幻の海老」と呼ばれて高級すし店でもなかなかお目にかかれない。
なるほど、風味は濃厚で甘みがあって美味しい。

グラスに煌めくゴールドは “シャンパーニュ・ダヴィド・フェーヴル”、酸味と果実味が絶妙な味わいは
確かに白身の魚に相性がいい。以前家呑みしたことがあるな、珍しく覚えているぞ。

今宵、五反田で「寿司とブルゴーニュ」のイベントを愉しんでいる。無論ボクの趣味ではない。お供なのだ。
だいいちワインのことはさっぱり分からない。かと言って日本酒のことが分かる訳ではないのだけれど、
美味しいものを美味しくいただく素直で謙虚な味覚は持っている。そして今 “温野菜” の甘味と旨味を感じてる。

“イカ” それに “アジ” と握りが出てきた。赤酢で握ったシャリがなかなか良い。
注がれた辛口の白は “シャブリ2020”、んっと Tasting List に載っていない。ちょっとしたアトラクションか?
出てくるボトルのエチケットは皆同じデザインで、とサインがあるから、
今回はこの醸造家(作り手)さんのワインを楽しむ趣向らしい。きっと呆れられるから、今更連れには聞けない。

天麩羅は “ナメタカレイ” と “ふきのとう”、春の苦味が口の中にふわぁっと広がるね。焼き物は “桜鱒” だって。

 5杯目からは赤に代わって “ショレ・レ・ボーヌ” は、果実の旨みが溢れるピノノワール。
握りは “金目”、“サヨリ”、“赤貝” と続いて、すでに寿司とブルゴーニュワインはボクの中ではマリアージュ。

“鰤大根” は日本酒に味醂ではなくて、もちろんワインで煮ている。葡萄色にしみた “ブリ” の甘みが絶品。
隣でレシピを聞いているから、そのうち食卓に載るだろうか。

さて、握りの方は “毛蟹”、“赤身”、“中トロ”、“穴子” と好みのネタがラインナップされて至福。
最後の8杯目は “ボーヌ(ヴィエイユ・ヴィーニュ)2019”、果実の甘さと酸味がバランス良いピノノワール。

ここまで来ると呑み人的には思考の整理がつかない。美味しいか、まあまあか、好みか、今一つか、って位だ。
「このピノノワール、出汁をしっかりとった和食に合うんですよ」とインポーターの彼女が囁く。
そう言われるとそうかなぁ、いや絶対に合うなこれ。なんて、たまにはこんな席に着いてみるのも愉しいのだ。

<40年前に街で流れたfusion>
Dazzling / CASIOPEA 1983