思考の踏み込み

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蔵六16

2013-12-15 03:00:55 | 
ここで前途した文明と文化の問題に少し戻る。
あるとき蔵六は鉛筆を使っているところを攘夷主義者に見られ、理由を問われ小気味よく答えている。

"便法ノミ ー "

一歩間違えば鉛筆を使っているという、ただそれだけのことで切って捨てられてもおかしくない時代である。
このセリフは容易には言えない。

人斬り彦斎


蔵六の合理的な頭脳は西洋文明というものの価値をその合理性においてのみ認め、必要な部分だけを使い残りはむしろ遠ざけた。

西洋の文化的要素まで纏おうとすれば
どうしても似合わず、美しくない。
だから兵達には洋服を着せたが、自らは絶対に着なかったのである。

蔵六のホンネは 「そんなヘンテコな服着てたまるか」もしくは、俺に似合うもんか!といったところだろう。
美意識に対する繊細さと強い自信が伺える。

彼の面白いところは、こうした事を思想によってではなく、その感覚で貫いた点であろう。
そのストイシズムも、ナショナリズムも、彼の強烈な美意識から出ている。



それは思想ではないから、人には説明し得ない。従って当然誤解される。
だが誤解されることより、誤解されようが何だろうが己がスタイルを貫くというストイシズムの方が彼には大事だったのではないか?


「お暑うございます」といわれ、「夏はこんなものです」という彼の神経はこうして考えるとよく分かるような気がする。

要するに普通人ではない。


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