IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

いけるかねぇ、4割の大台

2005-08-26 15:01:47 | イラク関連
よーやく、月刊誌記事原稿の手直しが終了(編集部のK氏、本当にご苦労さんです)。これで大丈夫かなと信じつつ、深夜1時にコーヒーメーカーのスイッチを入れる。ブログと同じように、なぜか寝る前にコーヒーを飲むクセは今も治らず。今回、僕が書いた記事のテーマは宇宙関連のもので、普段あんまり扱わないテーマという事もあって、取材前に受験生のごとく関連資料に目を通した。宇宙事業に詳しい人からも話を聞いたりして、なんとか原稿を完成させる事ができました。テレビ局時代にスペース・シャトル「コロンビア」の空中分解事故が発生し、その日すぐにワシントン市内にあるNASAのオフィスに資料テープをもらいに行った記憶がある。報道内容が事故に関する物だったので、僕の中で宇宙関連ニュースに暗いイメージを持ってたのも事実。でも、今回の取材であらためて分かったんだけど、夢があっていいよなぁ。話を聞いてるだけで、こっちがワクワクするくらいだから。

夕方、スーパーマーケットで買い物を済ませてから、約3週間ぶりに髪を切りに行った。場所はいつものトルコ人が経営する美容室で、相変わらず騒がしい場所だけど、僕はこの雰囲気を凄く気に入っている。この美容室の隣がスターバックス・コーヒーになっていて、夏場は店の外にもテーブルを出しているが、休憩中の美容師のオッサン達をそこで見ることが多い。テーブルの上には木製のバックギャモン台が置かれ、まぁ飽きる事も無く延々とゲームをするオッサンの姿が。去年も一昨年も、夏が来ると絶対に目にする光景で、仕事帰りの僕も無理やり参加させられたことが何度かある。アメリカというよりは、南イタリアの雰囲気に近いのかもしれないけれど、いい味出してます。バックギャモンをする姿が見られなくなった頃、僕らはセーターをクローゼットから出し、それからすぐに冬がやってくる。

イラク駐留米軍の早期撤退はないとブッシュ大統領が強調する中、25日付の英ファイナンシャル・タイムズ紙は今後12ヶ月以内に米軍の大規模な撤退が開始される可能性があると報じた。これは同紙が行ったダグラス・ルート米陸軍少将とのインタビューで明らかになったもので、イラク国内の治安状況に改善の兆しが見られない中で撤退はすでに現実的な話へと変わってきているようだ。米中央軍で作戦計画の責任者にあるルート少将は24日にファイナンシャル・タイムズ紙記者のインタビューに答え、今後12ヶ月以内の大規模撤退の可能性を示唆し、撤退計画がイラク駐留米軍の指揮を執るジョン・アビザイード司令官からの要請を考慮したものだと語った。ルート少将は撤退計画の背景にワシントンからの政治的圧力は無かったとも答えている。

「イラク国内の治安回復を米軍やその同盟国の部隊が担う状態が長く続いていますが、こういった依存状態はいずれ終了しなければならないですし、イラク軍部隊をそういった任務に就かせなければならないのです」、そう語るルート少将は米軍撤退の条件となるイラクの政治・治安状況改善に関しても、これまで報じられてきた以上にその基準を緩める可能性を示唆している。イラク駐留米軍のジョージ・ケーシー司令官も先月、ルート少将と同じように来年春頃から米軍が撤退を開始するだろうとコメントしているが、ブッシュ政権関係者はこの発言を否定している。先週、ピーター・シューメーカー陸軍参謀長は米軍によるイラク駐留の長期化に備え、すでに2009年までの行動計画が存在すると語っている。

現時点でブッシュ大統領は来年以降のイラク駐留米軍の規模について明確な言及を避けており、今月もテキサス州クロフォードで行った会見で「噂や憶測ばかりが流れている」とコメントしている。さらに24日に行った演説では、「これからもイラクに駐留し、テロ戦争に勝利するために戦います。イラクや中東地域からの早期の撤退はテロリストをつけあがらせるだけですから」と米軍のイラク駐留が長期化する可能性を示している。イラク撤退時期を巡り、米軍司令官達の間でも意見の食い違いが存在しているが、ホワイトハウスのマクラレン報道官はイラク戦争における米軍内部の共通認識に違いは無いと主張する。ルート少将によれば、米軍高官らは現在も激しいゲリラ攻撃が続く「スンニ・トライアングル」以外の地域に展開する米軍部隊を中心に、来年からの撤退を希望しているとの事だ。

キリスト教保守派指導者のパット・ロバートソン師は24日、テレビ番組内でベネズエラのチャべス大統領の暗殺を呼びかけたことを謝罪した。謝罪発表の数時間前まで「暗殺発言」について否定していたロバートソン師だが、複数のメディアからの指摘もあり、最終的に発言を認め謝罪した格好だ。「暗殺の呼びかけは正しい事なのでしょうか?答えはノーです。私は自分の行った発言に謝罪します。ただ、アメリカ政府による暗殺説を信じきっているチャべス大統領にフラストレーションを抱いたのも事実です」、ロバートソン師はそうコメントした。世界第5位の産油国ベネズエラで1998年から大統領職にあるチャべス氏は、ブッシュ政権を強烈に批判し続けており、ブッシュ政権の「政権転覆計画」で自分が暗殺の対象になっていると一部報道機関によるインタビューで語っているが、アメリカ政府はチャべス大統領が危惧する暗殺計画を「全く根拠の無い話」と一蹴している。

保守系キリスト教団体「クリスチャン・コーリション」の創設者であり、過去には共和党から大統領選挙に出馬した経験もあるロバートソン師は、22日に放送されたキリスト教トーク番組「700クラブ(ロバートソン師本人がホストを務めるこの番組は親イスラエル色が強い事でも知られており、番組内でもユダヤ教徒キリスト教の融合主義が頻繁に語られている)」の中でチャべス大統領に触れ、「もし彼がアメリカによる暗殺計画を信じているのなら、本当にその計画を実行に移そうじゃありませんか。戦争を行うよりも安上がりですしね」とコメントしている。ロバートソン師はさらに、石油産出国のベネズエラがチャべス大統領の影響で共産主義とイスラム過激主義の温床になりつつあるとの持論を展開し、チャべス政権の転覆を訴えかけた。ロバートソン師による発言が行われた頃、チャべス大統領はキューバを訪問しており、記者からの質問に「ロバートソンがどのような人物か、私には全く分からない」と答えている。

23日には国務省のマコーミック報道官が「(ロバートソン師の発言は)アメリカ政府の政策では全く無いし、我々が彼と同じ見解を共有している事はない」と語ったが、ブッシュ大統領とロバートソン師の親密な関係は周知の事実でもある。酒浸りだった若い頃のブッシュ大統領に信仰の大切さを説いたのがロバートソン師とされ、現在のブッシュ政権による政策の中にもロバートソン師から影響を受けたと思われるものが少なくない。幹細胞研究を巡るブッシュ政権の見解などは、ロバートソン師の強い影響があったものとされている。また、ロバートソン師を支持する福音派キリスト教徒達がブッシュ大統領の支持基盤の核になっている事実もある。2004年の大統領選挙では白人の福音派キリスト教徒有権者がブッシュ再選のキーとなった背景もあり、これら有権者の約90パーセントがブッシュ大統領に投票している。

ワシントン・ナショナルズ関連のニュースで面白いものがあったので(何度も書きますが、僕はレッドソックスのファンなので…)、ここで少しだけ紹介。久しぶりに出そうな大記録なので、僕も毎日ウェブをチェックしながら事の成り行きを見守っている。ナショナルズ参加の3Aニュー・オーリンズ・ゼファーズのリック・ショート選手、今シーズンはナショナルズで数試合プレーしただけで、シーズンのほとんどを3Aで過ごしているんだけど、なんと打率が3割9分7厘なんです。規定打数に達したプロ選手としては、44年ぶりに打率4割を記録できるかもしれないとあって、ワシントン・ポストやUSAトゥディなんかまで報じるフィーバーぶり。ワシントン・ナショナルズのチーム打率がメジャーリーグ最低の2割5分3厘という状況もあって、一部ではショート選手のメジャー復帰を望む声があるけれど、きっと本人は複雑な心境なんだろうな。

44年前に1Aサリスベリー・ブレーブスに所属していたアーロン・ポインター選手が4割2厘を記録しているものの、1Aよりレベルの高い3Aで最後に4割以上の打率を残した選手はオックス・エッカードで(シーズン打率は4割1分4厘)、1933年の事だった。メジャーリーグで最後に4割を記録したのは、ボストン市内を通るトンネルの名前にもなったレッドソックスのテッド・ウイリアムズで、1941年に4割6厘を記録している。ローテーション制が完全に確立されてしまった今、500勝(サイ・ヤング)や5000奪三振(ノーラン・ライアン)をピッチャーに求めるのは酷だけど、打率4割への到達は今でもチャンスがある。球速が上がり変化球のバリエーションが増えたとしても、それ以外に打率4割を制限するものは殆ど見当たらないので、全てはバッターの技量にかかっている。ショート選手にはマイナー暮らしを(今シーズンはね)続けてもらって、球団には彼への特別ボーナスを用意してもらいたい。本当に凄い事なんだから。