IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

ビル・マーの毒舌、いまでも健在

2005-08-05 14:13:37 | スポーツ
コメディの本が好きで、本屋に立ち寄った時、思い出したようにコメディ関係の本が並ぶセクションへと足を運ぶ事がある。初めて買ったコメディ関係の本だけど、僕の記憶が正しければ、高校生の頃にオーストラリアの田舎町で買った古本だった。電話帳みたいなその本には、ジョークが数千個掲載されていて、エスニック・ジョークやエッチなジョーク、弁護士や医者をネタにしたジョークがまぁ掃いて捨てるほど書かれていた。僕が世話になった田舎町(しかも、随分と前のことです)にはインターネットもなければ、プレイステーションもなく、ラグビーボールとサッカーボールとテニスボール(これはクリケットの時にも使う)だけが僕らガキ共の遊び道具。でもそんな時代だったからこそ、僕らはみんな本だけは読んだ。外の世界を知る手段が本と雑誌だけだったからなんだけど、男も女も関係なく、みんなで本を回し読みしてた時代があったんです。一生懸命に辞書を引きながらロディ・ドイルの小説を読んだ時代が懐かしいけど、それよりも楽しかったのがジョークの本を読むこと。辞書で調べたあとに笑えるし、次の日に誰かに言いたくなるし…。楽しかったなぁ。

いつものように長い前書きになったけど、今日の夕方に新しいジョークの本を1冊買ったのです。帰宅途中にペンタゴンシティにある大型書店に立ち寄って、最初はスポーツ雑誌と音楽雑誌をしばらく眺めていたんだけど、新書コーナーに置かれた一冊の本が目に入って、それを手に取ってからパラパラと数ページほど読んでみた。この本、毒舌コメディアンとして人気のあるビル・マーが書いた「ニュー・ルールズ」というハードカバーで、ウォール街にいそうな性格の悪い証券マンにも似たマーが、今のアメリカの世相をバッタバッタと斬っていく内容だ。「ブッシュ大統領が自分の成功を陰で支えてくれたローラ夫人に感謝していたけど、あれは間違っているよね。みんなの前で本当に感謝すべきなのはパパやパパの友達や、最高裁判所、カール・ローブ、それからAA(アルコール中毒者更生会)なのにね」、本の中でマーはそう語っている。マー節は相変わらず健在。

本ではブッシュ大統領だけではなく、トム・クルーズから新ローマ教皇まで、実に多彩な顔ぶれがネタにされている。でも、アメリカ人の多くにとってマーと言えば、911同時多発テロ後に政治的な発言をしたコメディアンとして知られているのでは?2001年9月17日に放送された深夜トーク番組の中で、マーは「臆病者のテロリストたち」というブッシュ大統領の発言に噛み付き、「本当に臆病なのは数千マイル先から巡航ミサイルをぶっ放し続けている、俺らアメリカ人じゃないか」と語っている。この発言にはホワイトハウスも敏感に反応し、マーはやがて番組を降板させられてしまう。マーはケーブル局HBOでトーク番組を持つようになり、相変わらずの毒舌で僕らを楽しませてくれているけど、911テロ後にこの国のコメディアンに変化が起こったのは事実だと思う。同じくHBOで長年トークショーの司会をしてきたデニス・ミラーも、気がつけば保守的な愛国者というイメージで自分を売り始めていた。マーよ、頼むからもっと毒を吐き続けてくれ。

3月に下院政府改革委員会がによって開かれたステロイド問題に関する公聴会で、ボルチモア・オリオールズのラファエル・パルメイロ選手は人差し指を立て、「これまでステロイドを使用したことは一度も無い」と断言した。しかし、パルメイロは月曜日にメジャーリーグ機構から薬物検査で陽性反応が出たペナルティとして10日間の出場停止処分を受けており、議会での宣誓証言で嘘をついていた疑惑が持ち上がっている。下院政府改革委員会はパルメイロによる証言の真偽に関する調査を開始した模様だ。委員会の議長で共和党のトーマス・デービス議員は火曜日にパルメイロと電話会談を行っており、委員会がパルメイロ証言についての詳しい調査を行うと通達している。パルメイロは調査に協力する姿勢を示したものの、月曜日に行われた電話会見同様に、「禁止薬物がどのようにして体内に入ったのか、全く心当たりが無い」との主張を繰り返した。

ワシントンポスト紙の取材に答えたデービス議員は、パルメイロとの電話での会話の中で「ラフィー、僕らが君の証言の真偽を追求しなければならない理由を分かってほしい。君は宣誓供述を行ったのだから」と話しかけ、ラファエロの体内にいつ頃から禁止薬物が存在したのかに興味があると語った。ニューヨークタイムズ紙は2日、パルメイロの薬物検査の結果を知る関係者の話として、ステロイド剤の一種「スタノゾール」が検出されたと報じている。1988年のソウル・オリンピックで金メダルを剥奪された陸上のベン・ジョンソンが使用していたとされるスタノゾールは、通常のサプリメントに含まれる事は決してなく、意図的にしか入手は不可能とされている。下院政府改革委員会のステファン・リンチ議員は、「仮にパルメイロがこの特定の薬物を使用していたなら、事態は相当深刻なものになるだろう」と警告している。

パルメイロの代理人をつとめるアーン・テレム氏は、パルメイロが使用したとされる薬物の名前がメディアによって具体的に報じられたことから、情報を外部に流したメジャーリーグ機構の関係者らを非難する声明を発表している。「仲裁人によって定められた(検査結果に関する)秘密保持のルールが、機構によってやぶられました。ラファエルはルールを尊重し、これまで沈黙を続けてきたわけですが、機構側に同じ事はできなかったようです」、テレム氏は声明でそう語っている。メジャーリーグ機構や選手会の中には、パルメイロの一件が球界の薬物検査システムが正常に機能している証拠だと語る関係者もおり、3月には機構の薬物検査における「甘さ」を猛烈に批判していたデービス議員も、パルメイロに対する迅速な処分を高く評価しているようだ。しかし、薬物問題の本質的な部分は依然として何も変わっていないという指摘もあり、ニューヨーク州のジョン・スウィーニー議員などは薬物検査が独立機関によって行われるべきだと主張する。

スポーツ用品大手のアディダス・ソロモン社は3日、アメリカのスポーツシューズ製造大手リーボックを買収すると発表し、複数の報道によれば買収総額は38億ドルに達する見込みだ。AP通信の報道では、アディダス社はリーボック社の株を1株あたり34.2パーセント割り増しした59ドルで全て買い取り、買収手続きは来年の上半期内に終了するとの事。アディダス社は全米における自社製品の販売を大幅に促進させるため、アメリカ国内第2位のスポーツシューズ製造メーカーの買収に踏み切ったわけで、ライバルのナイキ社を追撃する体制が着々と整えられている。ナイキ社のアメリカ国内での昨年度売り上げ総額は約100億ドルで、アディダスとリーボックの2社による売り上げ総数は96億ドルとなる。

少なくともこの20年間、アメリカ国内のスニーカーやスポーツ衣料はナイキ・ブランドに独占され続けており、アディダス社もアメリカ市場でナイキ社との一騎打ちは困難なものと判断したようだ。マサチューセッツ州カントンに本社のあるリーボックは、スニーカーと若者向けファッションを融合させる戦略で見事に蘇生している。アメリカ国外でのアディダス社ナイキ社の戦いは互角といったところだが、リーボック社の買収によってファッションに敏感なアジアの若者へのアピールがより効果的に行える可能性が高い。また、世界的なサッカー市場ではアディダス社が今もトップに君臨しているが、リーボック社の買収はアディダスにとっての「未開の地」を獲得する意味も持つ。リーボックは全米プロバスケットボール(NBA)のヤオ・ミンやアレン・アイバーソンといったスター選手とスポンサー契約を結んでおり、レブロン・ジェームズのような別のスター選手と契約を結んでいるナイキ社に対してバスケットボール市場でも互角に戦える可能性が出てきた。

エアロビクス用シューズのメーカーとして大成功を収めたリーボック社は、別のスポーツに消費者の関心が移ったこともあり、最近10年間はブランド人気の凋落に頭を悩ませていた。しかし、カジュアル・シューズといった新しい分野に進出すると、Jay-Zや50Centといったヒップホップ系アーティストとスポンサー契約を結び、アメリカ国内の若者の間で再びリーボック人気に火をつけた。ストリート系ファッションのシューズといえば、これまではナイキ社の独壇場となっていたが、最近ではリーボック社のシェアも確実に増加している。リーボック社のあるマサチューセッツ州では、これまでにも地元の大企業が買収されるケースが相次いでおり、最近でもフリート・ボストン・ファイナンシャル(バンク・オブ・アメリカに)やジレット(P&Gに)が買収されている。3日のウォールストリート・ジャーナル紙は、今回のアディダスによる買収がマサチューセッツ州経済に少なからぬ打撃を与えるかもしれないと分析している。

ウェブで久しぶりに安藤正純さんのコラムを読んだ。ドイツサッカーを専門的に扱うジャーナリストで、僕は随分と前から安藤さんの記事やコラムの虜になっていたんだけど、レアル・マドリーの世界集金ツアーに関するコラムには思わずパソコンの前で拍手してしまった。「痒いところに手が届く」とはまさにこの事で、よくぞ言ってくれました。詳しい事は安藤さんのコラムで読んでほしいけど、簡単に言ってしまうと、日本に「サッカーをしに来た」バイエルン・ミュンヘンと、「カネを集めに来た」レアルとの大きな哲学性の違いを指摘している。目先の大金に踊らされたレアルと長期的なビジョンで日本を開拓しようとするバイエルン、いい分析だよなぁ。それよりも驚いたのは、ドイツの著名なジャーナリストであるマーティン・ヘーゲレの旦那がバイエルンのフロントに入閣していたこと。面白いねぇ。9月にドイツから友人が遊びに来るけど、それに合わせてドイツに飛びたくなってきた。