IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

選挙の季節になると

2005-08-24 14:18:52 | スポーツ
月11日に行われる日本の衆議院選挙、僕ら海外の有権者も投票する事が可能だけれど、実は比例選の投票しか行えない。なんでも、推定72万人の日本人有権者が海外在住との事だけど、今回のような非常に大きな話題となっている選挙においても、僕らは小選挙区に投票する事はできない。23日の読売新聞(ウェブ)に掲載されていた記事によれば、96年に一部の海外在留邦人が国を訴え、その影響もあって、ようやく衆参の比例選挙への投票だけが認められたらしい。世界中の多くの国では海外在住者に投票権が認められているそうで(どのくらいの国で海外在住者に対する完全な投票権が認められているのか、今度リサーチしてみようかと思っている)、日本は少数派だと読売新聞の記事は報じている。アメリカに来るまで全く知らなかった事だけど、こういった選挙が近付く度に、やっぱり悔しい気分になるのも確かで。

キリスト教右派の代表的指導者パット・ロバートソン師は月曜日、自らが出演するキリスト教系テレビ番組の中でベネズエラのチャべス大統領の暗殺を呼びかけた。ロバートソン師の発言にベネズエラ政府は正式に抗議する姿勢を示しており、同国のビセンテ・ランゲル副大統領はロバートソン師を非難するとともに、アメリカ政府に対してロバートソン師に法的措置をとるよう求めている。ロバートソン師は月曜日に長年ホストを務める「700クラブ」という番組でベネズエラのチャべス政権について触れ、チャべス大統領が豊富なオイルマネーを利用して、南米大陸全体を共産主義とイスラム過激主義で覆いつくそうとしていると警告した。ロバートソン師はさらに、チャべス大統領が以前に英紙ガーディアンのインタビューで「アメリカ政府から命を狙われている」と語った事にも触れ、「もしチャべス大統領が今でもそう思っているのなら、本当にそうしてやろうじゃないですか」とも語っている。

全米最大規模のキリスト教右派組織「クリスチャン・コーリション」の代表者でもあるロバートソン師は、これまでにもイスラム教徒や連邦最高裁などについて論争を巻き起こすコメントを繰り返している。月曜日の番組で、ロバートソン師はなぜベネズエラがイスラム過激派に利用されると警告したのか、その理由については語らなかった。カトリック国のベネズエラは、プロテスタント人口も含めると、国民の約98パーセントがキリスト教の国だ。国務省のショーン・マコーミック報道官は火曜日の記者会見で、ロバートソン師の発言は市民の権利として保障されているものの、発言はアメリカ政府の対ベネズエラ政策を表したものでは全く無いと強調している。「ロバートソン師の発言は不適切であり、これまでも噂されてきたようなアメリカ政府によるベネズエラへの敵対行動の事実は一切ありません」、マコーミック報道官はそうコメントした。

マコーミック報道官のコメントとは対照的に、ベルナルド・アラベス駐米ベネズエラ大使は、ロバートソン氏が決して「普通の一市民」ではないと反論している。アラベス大使は2000年の大統領選挙で200万人の会員数を誇る「クリスチャン・コーリション」がブッシュ陣営の躍進に大きな役割を果たした事に触れ、「ロバートソン師は昔も今もブッシュ大統領の忠実な仲間の一人じゃないですか」と語っている。1988年の大統領選挙でロバートソン氏と共和党大統領候補の指名者争いを演じたボブ・ドール元上院議員は、今回のロバートソン発言を「軽はずみで馬鹿げている」と批判し、ベネズエラ政府への早急な謝罪を求めている。1998年にベネズエラ大統領に就任したチャべス氏は、キューバのカストロ議長と非常に親しい事でも知られており、キューバに対して特恵レートで石油の輸出も行っている。

ロサンゼルス・ドジャーズのミルトン・ブレイドリー外野手は火曜日、チームメイトのジェフ・ケント内野手を「リーダーシップに欠け、黒人選手と上手くやっていく能力が全く無い」と強烈に批判した。火曜日に行われたコロラド・ロッキーズとの試合前、ブレイドリー選手は先週末のフロリダ・マーリンズ戦で発覚した2人の確執が「致命的なものだった」と語り、続けてケント選手の人間性に対して批判を行っている。「問題は彼がアフリカ系アメリカ人と上手くやっていけない事にあると思う。チームメイトの間で人種をネタにしたジョークは毎日のように話されているし、僕も普段はそういったジョークを気にする事は無いんだけど、時々彼のジョークをジョークと思えない時がある」、ブレイドリー選手はAP通信の記者にそう語っている。

「白人選手は野球に人種問題が存在すると思いたがらないようだけれど、現実にそういった問題は存在していると思う。メジャーリーグ全体で黒人選手の割合が9パーセント以下という現実も、きっとそこに原因があるんだと思う」、ブレイドリー選手は試合前のロッカールームでそう語った。先週土曜日に行われたマーリンズとの一戦で、1塁上にいたブレイドリー選手は次のバッターが放った2塁打でホームまで走ったが、得点する事はできず、アウトになっている。試合後、ケント選手がブレイドリー選手に放った言葉を巡り、クラブハウスは一触即発の状態へと変わった。試合後、ブレイドリー選手は監督と25分間の個別面談を行っている。「ロサンゼルスで育ってきた僕にとって、人種や価値観の違う人たちと上手くやっていくのは、毎日の生活の一部みたいなもので、何の問題もないよ。でも、自分と違うタイプと強調する能力がない人間も存在するんだと思う」、ブレイドリー選手はそうコメントした。

ベテランのケント選手といえば、サンフランシスコ・ジャイアンツ時代にチーム・メイトのバリー・ボンズ選手との間にあった確執が有名で、黒人のボンズ選手とは口も聞かないような中だったと語る関係者もいる。しかし、同じく黒人のダスティ・ベイカー監督や他の黒人選手とは良好な関係にあり、これまで人種問題が取りざたされた事はほとんど無かった。また、カリフォルニア州インランド・バレーのデイリー・ブレティン紙も、関係者の証言として、ケント選手とブレイドリー選手との間で人種的な口論などは存在しなかったと報じている。ブレイドリー選手は過去にもカッとなる性格をメディアから指摘されており、今回のクラブハウスでの口論も、ケント選手だけに非があると考えるメディアは少ない。「(ブレイドリー選手に)3塁で止まるべきだったと忠告してやるのも、ベテランの仕事だと思う」とケント選手はコメントしているが、ブレイドリー選手は「彼は自分の記録だけが心配なのさ」と反論しており、2人の和解には時間がかかりそうだ。

僕らのサッカーチームで去年一緒にプレーしていた友人の近況を聞いた。小学生の時にアゼルバイジャンからワシントンに移住したこの友人は、20歳で大学を卒業して、昨年秋からワシントン市内のロー・スクールに通い始めていた。まだ23歳と全然若いけれど、2年前からワシントン市内の法律事務所でアシスタントの仕事を始め、ロー・スクールに入学してからも、昼間は同じ法律事務所でアシスタントの仕事を続けていた。昨年4月の初め頃、ちょうどチームのメンバーで練習試合をした事があった。試合終盤にみんなエキサイトし始めて(チームにアイルランド人とナイジェリア人がいれば、どう転んでも、最後はそうなる…)、ドリブルで僕を抜こうとしたアゼルバイジャン人の彼に、僕は練習試合ではタブーの激しいタックルを披露してしまった。ジャンプ競技で着地に失敗したスキーヤーのように、彼はグランドの上で何度も転がり、その日はプレーができなくなってしまった。試合後に何度か謝ったあと、僕は彼を食事に連れて行き、それが縁で仲良くなってしまった。

その友人が逮捕されたというニュースを聞いたのが数ヶ月前。彼の働く法律事務所が移民関係の書類を長年にわたって偽造し、書類が必要な不法滞在者から莫大なカネを巻き上げていたらしい。僕を含めたサッカーの仲間達は何度か彼の実家に電話を入れてみたが、誰も電話には出てこず、彼がすでに刑務所に入ったという噂が一人歩きし始めた。サッカーの練習後に、みんながみんな思い出したように「あいつ、大丈夫かなぁ」って言っていたんだけど、今日聞いた話によると、彼は刑務所ではなく自宅軟禁措置に処されていたようだ。来年1月頃に裁判の判決が出るそうだけど、検察側はアシスタントの彼が犯罪に関わっていた証拠はほとんど無いと判断しているらしい。ただ、裁判の結果が出るまでは何とも言えず、自宅とロー・スクールの行き来だけが認められ、足首には逃亡防止のブレスレットが巻かれているんだとか。マーサ・スチュワートやらマフィアの幹部といった、「セレブ」な犯罪者ご用達のブレスレットを、まさか友人が巻いているとは…。でも、僕らはまだ彼の無実を信じているし、近いうちにボールを一緒に蹴れるんじゃないかなと思ってる。