IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

ショッピング・グラディエーターズ

2005-08-17 14:11:20 | 歴史(?)
姉達も無事にワシントンに到着し、今朝ダレス空港で久しぶりに再開したんだけど、日本で昨日発生した地震が心配だった僕は開口一番「地震は大丈夫だったの?」と聞いてみた。どうも地震の事は全く知らなかったようで、彼女達のフライト後すぐに地震は発生したようだ。東京からワシントンまでの長旅でお疲れの姉達とジョージタウンで遅めのランチを食べた僕は、夜8時頃まで雑用をこなしてから、9時前に再びみんなの滞在するホテルに行った。姉のセントルイス時代の恩師が車で遊びに来ると聞いていて、水曜夜にワシントン市内でディナーを一緒にする前に、僕も久しぶりに会って話がしたかったのだ。奥さんと2人でアーリントンのホテルに来るはずのジョーさん、10時になっても姿を見せない。滞在先の息子さん夫婦の家に電話してみると、7時半には家を出たとの事。息子さんまで心配になり始めて、僕らも「まさか交通事故にでも」と思っていたら、息子さん宅に戻ったジョーさんから電話があり、道に迷って3時間近くドライブしていたという話。3時間のドライブでどこまで行ったんだろうか(フィラデルフィアまでは軽く行ける)。明日、コッソリと聞くのが楽しみになってきた。

首都ワシントンから60マイル離れたところにあるペンシルバニア州ゲティスバーグは、人口7000人ほどの小さな町だが、南北戦争時代の1863年7月には町周辺に16万の兵士が終結し、アメリカ史でも有名な「ゲティスバーグの戦い」が繰り広げられている。わずか3日間の戦いで、北軍と南軍の双方に5万人以上の死傷者を出している。同じ年の11月には、エイブラハム・リンカーンが「人民の人民による人民のための政治」という有名な演説も行っている。そのゲティスバーグの戦場跡にカジノホテルの建設計画が浮上し、地元住民や歴史家らは怒りを隠せない。地元ビジネスマンの主導による建設計画では、戦場となった場所に200室のホテルと3000台のスロットマシーンを備えたカジノを建設しようというものだ。

建設計画を進める開発グループは、カジノホテルの建設によって観光客が増加し、ゲティスバーグの地元経済も潤う事が間違いないと主張する。しかし、地元住民の多くは「アメリカ史の聖地を冒とくするに等しい行為」として、カジノホテル建設に真っ向から反対している。反対グループのリーダーを務める心理学者のスーザン・パドックさんは、英ガーディアン紙の取材に対し、「アメリカとアメリカ史にとって極めて重要な出来事がここで起こったんです」と語った。「この周辺一体が歴史のクラスそのもので、リンカーン大統領もここでの出来事を決して忘れてはいけないと語っています。我々地元住民は、これまでも歴史の保存に必死になって努めてきたんです」、リンカーン演説を記念して作られたモニュメントの前でパドックさんはそう語った。

パドックさんはカジノ建設を計画する開発業者だけではなく、カジノに関する法律改正を行ったペンシルバニア州議員達にも批判の矛先を向けている。ペンシルバニア州議会では昨年、住民の固定資産税を減らす目的で、州内に最大6万1000台のスロットマシーン設置を認めた法案を通過させている。このため、カジノ建設に携わる開発業者はビジネスに理想的な場所を捜し求めていたが、年間200万人の観光客が訪れるゲティスバーグは非常に魅力的だったようだ。今回のカジノ建設を計画するチャンス・エンタープライゼズ社は、カジノホテル建設によって800人程度の雇用が創出され、カジノ建設後に増えるだろうと予測される1000万ドルの税収で戦場跡地の保護も行えるだろうと語っている。現在のところ、開発業者と反対派の間で妥協点は見出されておらず、「ゲティスバーグの戦い」はしばらく続きそうだ。

アメリカでホームパーティーに誘われた経験のある人なら、きっと1度は目撃した事があるかもしれないけれど、さらに1つだけ残ったピザのスライスやドーナツを、周囲の間接的な視線を全く気にせずにペロリと食べてしまうアメリカ人は僕の周囲にも多い。「欲望のかたまり」だとか「自己中心的」だとか言ってしまうのもいいけれど、僕はその人間味溢れる部分が意外に好きだ。みんなが最後のドーナツを気にしながらチラッと見る中で、いきなりやって来てパクッといてしまう…。それと似た話で、アメリカ人の友人の中には買い物を「戦い」の一部と考えている奴までいる。つまり、バーゲンなんかでいかに早く店に到着して、目的の商品を予想よりも安く買えるかといった具合にだ。クリスマス後に全米各地のデパートで行われるバーゲンセールでは、小学生の小僧からお婆ちゃんまで、みんながパットン戦車団のごとく目標に向かって突進していく。「戦い」に勝利した幸運な買い物客は、周囲に「今日の買い物はグッド・ディールだった」と勝利宣言をしたくてウズウズしている。

そんなアメリカ人の戦闘的購買欲が事故を招いたようだ。バージニア州リッチモンド近郊のヘンリコ郡で16日、郡教育委員会が中古ノートパソコン1000台を(新品で買えば、1000ドル以上はするマックのiBook)1台50ドルで地元住民に販売した。この中古ノートパソコン販売会は以前から地元住民に通知されていたため、教育委員会側は2000人程度の住民がやってくるのではと考え、混乱を避けるために警備員も配置していた。しかし、1000台のパソコンを求めて6000人近い住民が販売会場に殺到し、入り口付近では将棋倒しまで発生している。この将棋倒しでベビーカーがペシャンコになったが、中にいた赤ちゃんは間一髪で難を逃れている。結局、17人が病院で手当てを受けたものの、大惨事にならなかったのが不幸中の幸い。ニュース映像では、どう見てもマック愛好家とは思えない4歳くらいの子供まで、販売会場に向かって全速力で走っていたけれど、本当にパソコンを使うのかな?

*写真はリッチモンド・タイムズ・ディスパッチ紙から