IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

やるな、チェコ映画

2005-08-07 13:19:58 | イラク関連
今朝うちのアパートの駐車場で発生した車の爆発・炎上の件、僕の予想通り放火だったようだ。アパートの1階ロビーの受付は常に誰かが常駐していて、今日も車が燃えているのを建物外の監視カメラの映像で確認したあとで消防署に連絡し、消防隊は10分ほどで来てくれたそうだ。僕も眠い目をこすりながら駐車場まで出て行ったんだけど、そこで隣の部屋に住んでいる老夫婦と遭遇し、車が2人の物だと聞いて驚きを隠せなかった。旦那さんはショックが大きかったようで、消火作業の続く車の前で、体を振るわせたまま呆然としていた。僕やアパートのほかの住民は、奥さんに「できる事があったら、気にせず何でも言ってくださいね」と声をかけ、それぞれ自分の部屋に戻る事にした。

昼過ぎ、先程の旦那さんとエレベーターで一緒になった。表情を見る限り、落ち着きを取り戻していたようなので、僕は声をかけてみた。僕らはエレベーターを降りてからも少しばかり立ち話をしたんだけど、彼が車の調査を行った消防士から聞いた話では、誰かが車体に揮発性の高い油をまき、さらに車のガラスも割って車内にも油をまいたらしい。車が駐車している車列の右端にあったことから、彼の車がランダムに標的になった可能性が高いようだけど、今のところ真相は全く分からない。サウスボストンに住んでいた頃、犯罪に使われた車や盗難車なんかが近所の空き地で燃やされていた事が何度かあったけど、今回は比較的治安のいいアーリントンで、しかもアパートの敷地内で発生した事件という事で僕も驚いている。僕は酔っ払った(もしくはハイになった)近所の悪ガキが何も考えずにやらかしたタチの悪いイタズラかなと思っているけど、カメラの映像などから、犯人が捕まるのも時間の問題かなと見ている。

2004年にイラクで戦死した米兵の母親が土曜日、ブッシュ大統領所有の牧場があるテキサス州クロフォードで抗議集会を行った。50人ほどの支援者とクロフォード入りしたシンディ・シーハンさんは、ブッシュ大統領の牧場近くまで進み、彼女の支援者らはそこで「W(大統領の愛称)が彼女の息子を殺した」と繰り返し叫んだ。今回の抗議集会には全米メディアも記者を同行させており、シーハンさんはAP通信の記者に対して、「大統領に聞きたいことが2つあります。なぜ私の息子を殺したのですか?なぜ私の息子は死ななければならなかったのでしょうか?」と思いを語っている。CBSのマーク・クノラー記者は、今回の抗議行動がイラク戦争に対する国民の意識が反映したものだと語り、ブッシュ政権内でイラク戦争の位置づけをめぐって意見が分裂している原因ですらあるかもしれないと指摘している。

シーハンさんはブッシュ大統領との面会を実現できなかったが、そのかわりにスティーブ・ハードリー国家安全保障担当顧問やジョー・ハギン首席補佐官らと45分間の対談を行っている。シーハンさんはこれからもクロフォードでの抗議集会を継続していきたいと語り、最終的にブッシュ大統領と面会する事を希望している。彼女の息子ケーシーさんは軍用車両のメカニックを担当する陸軍特技兵としてイラクで任務についていたが、昨年4月にイラク国内のサドル・シティで対戦車ロケット弾による攻撃を受け戦死している。「イラクがアメリカにとって何の脅威でもないと誰もが知っている今、現地では米兵が何の理由も無いまま戦死していってるんです」、ホワイトハウス関係者との対談を終えたシーハンさんはAP通信の電話取材にそう答え、ハギン首席補佐官は増え続ける戦死者をブッシュ大統領が気にしているともシーハンに伝えている。「それなら、牧場から出てきて話を聞いてくれてもいいのに」、シーハンさんはそう付け加えた。

20台以上の車でテキサス州の田舎町にやってきたシーハンさん一行だが、今回の抗議集会はわずか数日前に計画されたとの事。先週、ブッシュ大統領は増え続けるイラクでの米兵戦死者について言及し、「米兵は高貴な目的のために命を落としており、イラクでの作戦は最後までやり遂げなければならない」と語っている。シーハンさんはブッシュ大統領の語った「高貴な目的」という部分が気になり、多くの米兵が命を落とさなければならないその「高貴な目的」とは何なのかを大統領に直接聞いてみたい構えだ。シーハンさんらはクロフォード市内に車をとめ、そこからブッシュ大統領の牧場まで行進をはじめた。牧場の入り口から数キロはなれたところで、デモ隊は保安官に止められている。保安官事務所はデモ隊を牧場まで行かせなかった理由として、デモ参加者の一部が「道路わきを歩かなければならない」という規則を破って道の真ん中を歩いていたからだと、苦しい弁明を行っている。

昨日の夜は文字通り肌を突き刺すような暑さが日没まで続いた事もあって、サッカーの練習をキャンセルして、みんなで映画を見ることに。友人がレンタルビデオ店から借りてきた映画というのがチェコの作品で、英語のタイトルが「Up and Down」というプラハを舞台にした作品。アメリカ人の友人は「見たあとに悲しくなるような良質のコメディ」って言ってたけど、僕はむしろシリアスなテーマの中で笑いを取れるオーソドックスなヨーロッパ映画の秀作じゃないかと思う。脳腫瘍の発見された大学教授や彼の愛人、彼の息子、東アフリカの移民の赤ちゃんを質屋で買った夫婦、コソ泥…。こういった人達が微妙にリンクする映画の進め方、決して新しいスタイルじゃないけど、面白かった。僕も帰りに楽しみにしていたドイツ映画の「Der Untergang(日本語で言うと、転落みたいな意味かな)」を借りた。ベルリン陥落前のヒトラーや彼の取り巻き連中にスポットをあてた映画で、ドイツ人の友人からは何度も「いい映画だった」との連絡をもらっていた。名優ブルーノ・ガンツの迫真の演技もすごいけれど、まだ半分しか見ていなくて、これから続きを見ることにします。