サブカルチャーマシンガン

自分だけの「好き」を貫く為のブログ。

【アルバムレビュー】タオルケットは穏やかな/カネコアヤノ

2023-03-06 | アルバム感想














1.わたしたちへ
2.やさしいギター
3.季節の果物
4.眠れない
5.予感
6.気分
7.月明り
8.こんな日に限って
9.タオルケットは穏やかな
10.もしも







優しくいたい
海にはなりたくない
全てへ捧ぐ愛はない (季節の果物)











今年1月に出たカネコアヤノのニューアルバム。
ちなみに前作「よすが」の感想も書いてたりする
https://blog.goo.ne.jp/neverendingcult/e/9a90b74a524c74974f90d256de39853d
前作と比べると、
正直ロック色が強くなってるのを感じます
オルタナティブ・ロック及びシューゲイザーの要素もあったりして、
でも、
昭和歌謡に通じる雰囲気やメロディラインも健在で・・・と
なんでしょう、すごく良い方向にマイナーチェンジしたな。という印象があって、
元々カネコアヤノさんのアクが強く伸びやかな歌声がロックサウンドに似合うのもあり、
終始聴いていて気持ちが良いアルバムに仕上がってる様に感じました。
 それと、
やっぱり一曲一曲が良いし、凄く丁寧に思えて、それが何よりも良かったですね
自分自身こういう誠実な感じの音楽及び表現が元々大好きという事もあり、
じっくりと聴き込める良さに満ち溢れた名盤に感じましたね
メロディラインもいちいち凝ってるし、
歌もしっかりしてるし、
言葉一つ取っても印象に残るフレーズが多くて、尚且つ、要所要所でリアルでもあって。
その一曲一曲を魂込めて逐一丁寧に奏でてる辺りが物凄く素敵なアルバムだな、と。

もっと書くと、
すごく「素」の人間性が出てる様にも感じたんですね
時には怠けたい気持ちだったり(気分)、
他人に対して「いーよな。」って思う気持ち(わたしたちへ)、
それと、
自分が最も可哀想。みたいなフレーズもあったり(月明り)、
俗に言う「空気を読む」「取り繕う」事を半分くらいは放棄している
生っぽい呟きや自問自答が多い作品にも思えて、
そういう部分も大好きでしたね
シリアスだけど、
希望が見えるうたもあったりして、
バランス感覚的にも優れた一作に仕上がっていて、
個人的にはこれまでのアルバムと比べても随一に大好きなアルバムになっています。
 ま、
ぶっちゃけそれは自分が元々ロック・サウンドが好き。というのも加味されてるのも大きいとは思いますが、
それでもやっぱりより心に響くフレーズや歌、サウンドが多かった、、、というイメージですね。












堕落は悪くない
こころを守るんだ (気分)




推しの3曲は、
迷いました
具体的に書くと3曲目を「わたしたちへ」か「月明り」にするかで悩みました
「月明り」って曲は今作でも最もシリアスでネガティブな感情を歌っている精神の深淵のような楽曲で・・・
あの、、、
正直な話、
他人の大勢がスーパースターor完璧な人間に映って、
自分だけが何も無い人間。みたいに感じる瞬間ってめちゃくちゃ多い
んですよ
結局、
自分の持って無い部分を無意識にコンプレックスに感じてしまって、
自分自身がとんでもなくみすぼらしくて可哀想に思える瞬間は日常茶飯事なんです
そういう瞬間に聴くと救われる歌・・・って書くと分かりやすいでしょうか
この曲も本当神妙で静謐で聴き手に寄り添っていて大好きなんですけど、
隠れた名曲ポジションでもいいかな。とか

「わたしたちへ」は、
シューゲイザーのようなアレンジから、
歌詞に関しては他人に対する羨望・・・からの、
それでも、
❝自分❞やってくしかないでしょ。みたいな.....決意表明にも想える楽曲で、
そのしんどそうに、でも、何かしらの希望を持って歩んで行く感じがやっぱり大好きなので選びました
一曲目としてもいきなりノイズにも似た轟音から始まるので世代的にテンション上がりますね。


で、
メロディラインが最も好きな楽曲「眠れない」。
この曲は本当昭和歌謡みたいな人懐っこいメロディと、
「ギリギリのハート」みたいなこれまた人懐っこいフレーズで、
今作でも随一にポップで聴きやすい楽曲だと思う。し、
何より・・・・・
「眠れない
 無理に寝ない」
ってフレーズを聴いて個人的に目から鱗だったんですよ
確かに、
眠れないのに無理に眠る必要とかないし、
だったら、
その分苦しまずにゆったりしたりボーっとしてみたり、好きなものに触れたり・・・
リアルに日常のヒントになってしまったのも含めて自分の中では衝撃的な楽曲でした
自分もう30代後半になりますけど、未だに新曲に衝撃を受け続けてる~っていうのも嬉しかったりね。
この間ライブにも行ったんですが「明日の愛を想像する」という生の歌唱にも勇気を貰ったりもしてました。

最後、
本作で最も好きな曲である「タオルケットは穏やかな」。
この曲は、
一番最初にNHK-FMから流れて来たのを聴いたんですが、
壮大かつ爽快なあのイントロの時点で心奪われ、
また、
歌詞の内容に更に心奪われました
端的に書くと、
元々持っていた純粋な想いを抱えて生き続けるのは難しい。という内容の歌で、
それは自分もすごく日々感じていた事柄だったので。
でも、
何もかも明瞭にならなくてもいい、
迷ったままでも進んで良いんだ。
みたいな結末の歌詞になっていて、
そのどうにもならないけど、でも、不思議と気持ちが楽になるような・・・そういう、粋で、
絶妙な詞のクオリティが絶品で2023年の楽曲の中では特に聴き込んでいる一曲です
「それ」がどうにかなる、したい、しなくちゃではなく、
ただそこにある。みたいな.....
うん、
言葉にするならそういう感じですけど、
言葉にならない類の感動が内包されている楽曲だとも感じますね
大げさな表現をするならこの楽曲を聴く為に自分は生まれて来たのかもしれない。だとか、
そんな調子の良い事を思わず感じちゃったりもする位は既に大切な曲になっていて、
きっとこれから先の人生でも絶対に聴き続けるんだろうな、と。
そんな風に思える名曲だと想っていますね。














今の形になるほどに
アイスキャンディー熊のぬいぐるみ
大事にするのが大変になるのはなぜだろう (タオルケットは穏やかな)



他の楽曲群も勿論良く、
ギターアレンジが面白い「やさしいギター」、
八方美人的振る舞いから逸脱せんとする「季節の果物」はその誠実な歌詞に加え、
ポップでナチュラルなサビメロもまた聴きどころだと思います
最もロックに振り切ってる「予感」も格好良いしその上で歌詞は切実さが光ってて胸に来るし、
メロウな雰囲気も素敵な裏声で歌う「気分」、
そして、
「悲しみを消すための傷が癒えない」という歌詞が耳に残る「こんな日に限って」も大好きな一曲
最後の「もしも」は最小限の音数に絞ってカネコさんの歌にフォーカスしている楽曲で、
物静かな曲ですけど意外とこの曲がトップクラスにライブ映えもしてました
音源だと、
終わり方も印象的なので、
是非通して聴いて欲しい一枚ですね

っていうか、通して聴いてこそ、「もしも」の終わり方がより印象に残るとも思うので。
出来ればフィジカルで最初は部屋で独りきりで聴くのをおススメしたいですね。









という訳で、
2023年最初のアルバムレビューでした。
総括すると、非常に丁寧に、かつ、豊かなセンスで作られた堂々たる大傑作でした。
曲数も10曲ですし時間もそこまで長くはないので意外と繰り返し聴くのにも適している名盤。
リリースツアーは既に一回だけ観ましたが、春からのホールツアーでも観る予定です!
リリースツアーって基本的にその年ぐらいしかないから貴重なんですよね。
なので、また本作の楽曲をめいっぱい浴びに行こうと思う。



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