読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

佐々木譲「警官の血」

2008-02-14 00:10:27 | 本の感想
 佐々木譲「警官の血」読了。
 先日、もしもおもしろくなかったら損だからと最初に上巻だけ買ってきて読み始めたのだけど、ご飯も食べずに夜中までかかって一気読みしてしまった。そしてさっそく次の日下巻を買いに走ったら、平積みしてあるはずのこの本がもう一組しか残っていなかった。うちの近所でこれだけ売れてるっていうことはすごく売れてるってことだ。直木賞取れなくても全然かまわないと思うな。

 久しぶりにすらすら読める本を読んだ気がする。ダブルミーニングとか、深まる謎とか、そういう不健康なものも全然なくって、まるで「取ってこい」と言って棒切れを投げたらワンワンいいながら一直線に走って行って、戻ってくる犬みたいな素直さだ。あー、やっぱり犬はいいなあ。わかりやすい。猫みたいに無関心を装いながら通り抜けざまに足踏んで行ったり、背中を向けて外を見ているふりをしながら寝っ転がって本を読んでいる私の肩にしっぽをかけてきたり、そういうわかりにくい表現はまったくしないからなあ。(なんのこっちゃ!)ともかく、犬のようにわかりやすくて誠実でちょっとハートウォーミングな本だった。

 感想は省略。ろくな感想は書けないから。

 うちの近所にも駐在所があるのだけど、最近はどうも駐在所勤務が敬遠されている気がする。大変そうだから無理もないと思うが、若い駐在さんが来ても子供が生まれて手狭になってくるとすぐに転勤してしまって、最近では名前を覚える暇がないくらいだ。この前の駐在の奥さんは犬好きで、とても気さくなよい人だったが、町内会が違うのでお礼を言う機会もなく引っ越して行かれて残念に思った。もっと官舎を広くきれいに改築すればいいのに。あんな狭くて古くて、トイレだって汲み取りじゃ、子ども三人もいて気の毒だったと思う。現在の駐在さんは単身赴任らしい。それも気の毒だ。
 うちの夫が子どもの頃の思い出話をしていて、「小学校5年の夏休み、駐在さんの実家のある島に一か月くらい泊まりに行って、毎日泳いで魚釣りばかりしていた。」と言ったので耳を疑ったことがある。親戚でもなんでもないのだが、学校から帰ると毎日駐在所に遊びに行っておやつをもらって食っていたそうだ。夏休みも、駐在さん本人は仕事があるからこっちにいて、主人だけがおじいさんおばあさんのいる家に一か月も泊って遊び呆けていたそうで、とんでもない奴だと私は思った。その駐在さんがよそに転勤して行ったときには、送別会を開いて三日三晩「飲めや歌えやのドンチャン騒ぎ」で、地域の人みんな集まって名残を惜しんだとか。古きよき時代っていうよりとんでもない所だ。駐在さんって大変だなあ。今でも駐在所って「よろず相談所」みたいなところがある。

 この本でも、地域の頼れる「おまわりさん」であることに命を賭けた誠実な警察官の姿が描かれていて、そのこまごまとした対応ぶりを読むのが楽しかった。結末もスカッとしていて、これは「大当たり」の本ですよ。


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