読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

映画「大統領暗殺」

2008-09-18 22:40:01 | 映画
 ウイルスとの格闘
 息子が「フリーのゲームソフトを落としたらウイルスの警告が出るようになってしまった。」と言う。警告が出ても、ブロックしたということだからと心配していなかったのだが、昨日見るとタスクに見慣れないアイコンがいて、やたらと警告を発する。消しても消しても立ちあがってくるので、やっとおかしいと気づいた。このセキュリティー警告を発するソフトそのものがウイルスなのだ。
 警告の一文を検索すると、シマンテックのサイトがヒットした。複数の偽の警告を出してセキュリティーソフトのバージョンアップ版を買うよう誘導する。もちろんそんなものはインチキで、お金をだまし取ろうとしているのだ。

 パソコンのセキュリティーソフトとスパイウェア駆除ソフトでスキャンして、書き換えられたレジストリも削除したが、「システムの復元」機能を切ってなかったため、敵はゾンビのように再び蘇り、けたたましい警報を発し続ける。
 ヨレヨレになりながら再度検索すると、よく似た症状で困っている人を発見。「教えて!goo」 回答にあった駆除ツールをダウンロードしてセーフモードで起動してやっと解決した。ほぼ半日がかりの格闘であった。

新聞の見出し
 一昨日の記事を書きながら、朴正煕大統領の暗殺事件も思い出していた。と言っても、あの頃はまだ子供で政治や世情にはまったく興味はなかったのだが、あの日ふと新聞を見ると、「朴正煕韓国大統領暗殺」という禍々しい真黒な見出しが第一面トップに載っていたのでとても驚いた。「見出し」にだ。そんなものはそれまで見たこともなかったのだ。「これ、何?この見出し。変じゃない?」と父に聞いたところ、「これは、天皇の崩御や国家元首の死去の際に使われる見出しだ」と言ったのでその新聞は記念に取っておいた。次の「崩御」見出しはいつだろうかと思っていたら、一年もたたないうちに大平総理がぽっくりと亡くなり、再び見ることができた。その新聞も保存しておいたので、今も実家のどこかにあるはずだ。
 ウィキペディアにも書いてあるけど、大平総理が亡くなった際には自民党に同情票が集まり総選挙で大勝したんで、「こんなことで同情票を入れるなんて、日本人はバカだ!」と父が怒っていたのを覚えている。だから最近思うんだけど、自民党は麻生さんか誰かが、脳溢血かなにかでぽっくり死ぬようなことがあったらきっと選挙で持ち直すんじゃないかな?これがほんとの起死回生、って・・・。あー、でも福田さんじゃだめだろうな。

 「大統領の暗殺」
 ウィキペディアを読みながら、朴大統領は金銭的には潔癖な人であったらしいし、朝鮮戦争、南北の分断、冷戦、ベトナム戦争という厳しい世界情勢の中で疲弊した国を立て直すには強権的な手腕も必要であったかもしれないとも思ったが、それにしたって独裁的手法、言論弾圧や人権侵害、権力への固執はやっぱり典型的な独裁者で、決して許されるものではない。「光州5・18」を見ている時も、自分がもしあの時代に韓国に生きていたら、ほぼ100%民主化運動に参加しただろうと思った。正しい情報が入ってこないからきっと「軍事独裁より、共産主義体制の方がなんぼかましだ」と、もしかしたら北に亡命して、そして餓死していたかもしれない。

 それにしても、独裁者を暗殺してもすぐさま揺り戻しがきて、まるでそっくりな軍事独裁政権がゾンビのように蘇ってくるというのはなぜだろう。やっぱり、社会が成熟していないってことなのだろうか。そして「暗殺」という政権転覆の手法は役に立たないってことなんだろうか。
 ということを考えさせてくれたのが、ブッシュ大統領暗殺をシミュレーションした「大統領暗殺」というDVDだ。「光州5・18」の後に借りて見た。

 テレビの「ケネディー大統領暗殺」の検証番組さながらに、周辺の人物の証言で構成されていて、ものすごくリアリティーがあった。セキュリティーのSPとか演説の原稿を書く女性とかが、あの時ああだった、こうだった、大統領は私にこう言ってくれたみたいなことを事細かに証言するのだ。まるでブッシュ大統領が歴代大統領の中でも断トツのすばらしい人物みたいじゃないか。そしてイラク戦争に反対する過激な市民団体のリーダーとデモ隊の映像も出てくる。悪役みたいに憎たらしい。悲劇的暗殺シーンがニュース映像のように流れ、広報担当の女性が涙をこらえながら「大統領夫人と一緒にお祈りしました」なんて言う。
 やがて何人かの容疑者がつかまり、狙撃犯がいたとされるビルで働いているアラブ系の技術者がもっとも怪しいと決めつけられる。その男の妻の証言から、それは間違いであると私たちにはわかるのだが、男がテロリストグループの軍事訓練に参加したことがあるという経歴が明らかになって、もう何をどう弁解しても「イスラム原理主義テロリスト」というレッテルが貼り付けられて容疑は深まるばかり。要するに世論にわかりやすい「テロ」という図式にぴったりはまるので、この人物を犯人に仕立てあげたいのだ。
 実際は、現場近くにいた別の人物が事件直後に自殺し、暗殺をほのめかす遺書を書いていたのだが、その事実は誰も注目しない。その人物は退役軍人で、息子の一人をイラクでなくし、「ブッシュがアメリカをだめにした」と恨んでいたそうだ。これはマズいだろうな。
 悲壮感に満ちた荘厳な国葬が執り行われ、ブッシュは英雄に祭り上げられる。テロリストにされてしまった容疑者の妻は最後に言うのだ。「犯人は考えなかったのでしょうか。自分の行為がどういう結果を引き起こすか。自分の息子や妻のことを、ちらっとでも考えなかったのでしょうか。私はそれを聞きたい。」

 おお、これはなんと教育的な映画だろうか。国をボロボロにするダメ指導者がいたとして、政権を変えたいと暗殺なんかしてしまったら、かえって逆効果だってことがよくわかるではないか。きっとさ、ブッシュが暗殺された後も同情票が集まってまたおんなじような共和党の大統領が出てくるに違いない。「だから、どんなに憎たらしくても、絶対に暗殺はしちゃダメよ。きっちり最後まで生かして責任を取らせましょ。」と言っているのだ。すごいブラックユーモア。楽しいね。商業的なアメリカ映画はだめだけど、こういうのが作れるってところはすばらしいと思う。(某圧力で公開劇場数が予定の5分の1以下に減ってしまったそうだけども)

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