猫のやぶにらみ

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菅総理退陣

2011-08-30 | 経済・社会
菅さんがついに退陣し、野田さんにバトンが引き継がれた。菅総理に期待した一人として、若干のコメントを書く。

①振り返って見れば、3・11以前の菅総理は影が薄かった。仙石官房長官の剛腕ぶりが目立つばかりで、菅さんの姿があまり想い出せない。それにしても尖閣列島問題の対応はひどかった。仙石さんのせいにばかりは出来まい。最高責任者は総理だから。

②3・11以降の菅さんはそれなりに頑張ったと思う。未曾有の国難に直面して、全力を挙げて課題に取り組んだものと思う。そしてそのことにより、彼のもつ良い面も悪い面も一気に増幅されて白日の下に晒された。その結果が四面楚歌だったのだから、当人としても誰を恨む訳にもいかないだろう。

③復興対策については、副総理兼復興担当相に小沢一郎を抜擢するくらいの荒業をみせて欲しかった。そうすればずい分と復興のスピードも違っていただろう。彼の度量の狭さが仇になった。

④原発対応については本人としては一番力を注いだものと思われる。福島第一原発の吉田所長とは事故直後現地にヘリで訪問して以来、直接ひんぱんにやりとりする仲になったという。吉田所長は東京工大の後輩でもある。

⑤脱原発路線を明確にしたのは高く評価したい。運転中の浜岡を停め、休止中の原発の再稼働のハードルを上げた。これにより玄海原発の再稼働はとん挫した。

⑥ただし、絶対に許せないことが一つある。それは、SPEEDI(スピーディ)のシミュレーション結果を事故直後、公表しなかったことだ。これは法的に罰せられるべき行為だと思う。綿密な検証を行って責任の所在を明らかにして欲しい。首相の責任はもちろん逃れられないものと考える。

⑦財界や「原子力ムラ」と本気で戦おうとした姿勢は、これぞ菅さんの本領発揮だ。こういう敵に対する時の菅さんはかなり手ごわい。今回、一敗地にまみれたようでもあるが、果たしてどうか。この数ヶ月、菅さんは、レームダック状態とはいえ、政権トップにいて、「原子力ムラ」の奥の奥、裏の裏まで、その実態を「見た」はずだ。総理の椅子は降りたものの、後継総理に野田さんを担ぐことに成功し、一定の影響力は今後も維持するとみるべきであろう。さて、新政権の下、エネルギー政策の大転換、すなわち、「原子力ムラ」の解体が進むかどうか、注視したい。

⑧それにしてもヒドイと思ったのは、菅政権を追い落とすための政局カードに「震災復興」がもてあそばれたことである。野党はもちろん、小沢一派にしても、菅降ろしのために震災復興を人質にしたのである。「菅総理の下では震災復興が進まない」と言って菅降ろしに精力を注ぐ国会議員の姿には本当にウンザリした。

⑨一日も早く震災復興を進めることは与野党関係なく、誰が総理であろうと関係なく、全員賛成のはずだ。菅降ろしの本当の原因は、原発対応や小沢外し、そして左翼性に対する反発であろう。菅降ろしをするなら、そうした論点を堂々と表に出して批判して欲しかった。

⑩新政権の下では、与野党ともに、震災復興だけは一致協力して進めて欲しい。そして、それとは切り離して、喧々諤々、大いに議論した上で、菅さんの言う「原発に依存しない社会」を目指して、一歩一歩着実に進んで行ってもらいたい。