日本を代表するバイオリニストの一人、千住真理子さんが所有しているバイオリンは、あのストラディバリウスの中でも「デュランティ」と呼ばれる、名器中の名器だそうです。
アントニオ・ストラディバリの手により1716年に製作されて、「249代ローマ教皇クレメンス14世に捧げられ、教皇逝去後は、その側近~フランス貴族~スイスの大富豪のもとを渡り歩き、約300年間、誰にも弾かれることなく、眠り続けていた」というこのバイオリン。所有者であったスイスの富豪の名をとって「デュランティ」と呼ばれる。
数年前にそのスイスの富豪が亡くなって、その遺言により、新たな所有者探しが始まった。その「幻の名器」が千住真理子の手に渡るまでの、運命的経緯を、千住真理子の母が綴った本が「千住家にストラディヴァリウスが来た日」
だ。
千住真理子の母は、大学教授の妻であり、日本画家の長男と、作曲家の次男、そしてバイオリニストの末娘をもつ女性である。夫はすでに亡くなったが、それでも何不自由なく、つつましやかに、子供たちのそれぞれの活躍を楽しみに、暮らしている。
そんなある日、博物館級の名器で、オークションにかければ恐らく天文学的な値段が付くことは疑いないストラディバリウスの一件が、伝えられる。娘から初めてその話を聞いたとき、母は思う。
「一瞬、胸が騒いだが・・・しかし、富豪でもなんでもない我が家は、昔から大金にはまったく縁がない。私ごときがしゃしゃり出る資格はない。だめだめ、冷静に頭を冷やしてかからなければ、と自分にいい聞かせる。やはり、この話自体が、幻なのだ」
その後、運命的な、しかし必然的でもあっただろう経緯を経て、実際にこの一本のバイオリンが千住真理子の手に渡るのだが、母が本書のタイトルにそう書いたように、これは「千住家」の、つまり母、兄妹そして今は亡き父、さらには祖父母・・・まさに千住家のDNAが総動員されて、そのようにしからしめた結果としか思えない。
ストラディバリウスのバイオリンは、楽器自身がその所有者を選ぶという。そしてその所有者の運命に大きな影響を及ぼして、次なる所有者を求め、その手を離れて行くと。
300年間の時空を超えて、このバイオリンは、はるか極東の島国に伝わる千住家のDNAに共鳴し、自ら千住真理子の腕に抱かれることを望んだかのようだ。そして、それに応えるように、千住家のDNAは、この名器を奏で続ける運命を真理子に背負わせる道(それは決して生易しいものではない)を選んだのである。
アントニオ・ストラディバリの手により1716年に製作されて、「249代ローマ教皇クレメンス14世に捧げられ、教皇逝去後は、その側近~フランス貴族~スイスの大富豪のもとを渡り歩き、約300年間、誰にも弾かれることなく、眠り続けていた」というこのバイオリン。所有者であったスイスの富豪の名をとって「デュランティ」と呼ばれる。
数年前にそのスイスの富豪が亡くなって、その遺言により、新たな所有者探しが始まった。その「幻の名器」が千住真理子の手に渡るまでの、運命的経緯を、千住真理子の母が綴った本が「千住家にストラディヴァリウスが来た日」
千住真理子の母は、大学教授の妻であり、日本画家の長男と、作曲家の次男、そしてバイオリニストの末娘をもつ女性である。夫はすでに亡くなったが、それでも何不自由なく、つつましやかに、子供たちのそれぞれの活躍を楽しみに、暮らしている。
そんなある日、博物館級の名器で、オークションにかければ恐らく天文学的な値段が付くことは疑いないストラディバリウスの一件が、伝えられる。娘から初めてその話を聞いたとき、母は思う。
「一瞬、胸が騒いだが・・・しかし、富豪でもなんでもない我が家は、昔から大金にはまったく縁がない。私ごときがしゃしゃり出る資格はない。だめだめ、冷静に頭を冷やしてかからなければ、と自分にいい聞かせる。やはり、この話自体が、幻なのだ」
その後、運命的な、しかし必然的でもあっただろう経緯を経て、実際にこの一本のバイオリンが千住真理子の手に渡るのだが、母が本書のタイトルにそう書いたように、これは「千住家」の、つまり母、兄妹そして今は亡き父、さらには祖父母・・・まさに千住家のDNAが総動員されて、そのようにしからしめた結果としか思えない。
ストラディバリウスのバイオリンは、楽器自身がその所有者を選ぶという。そしてその所有者の運命に大きな影響を及ぼして、次なる所有者を求め、その手を離れて行くと。
300年間の時空を超えて、このバイオリンは、はるか極東の島国に伝わる千住家のDNAに共鳴し、自ら千住真理子の腕に抱かれることを望んだかのようだ。そして、それに応えるように、千住家のDNAは、この名器を奏で続ける運命を真理子に背負わせる道(それは決して生易しいものではない)を選んだのである。