うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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フェアープレーとマリーシアを併せ持った今大会のなでしこジャパン

2011年07月26日 | サッカー(女子)
日テレのDF岩清水は22日、勤務先の「日テレワーク24」に出社後、チームの練習に合流。「(フィーバーを)一過性のものにしないために、リーグ戦を何回も見に来てもらえるような面白い試合をしたい」と意気込みを語った。

 岩手県滝沢村出身の岩清水は「早くおじいちゃんやおばあちゃん、応援してくれた人に金メダルを見せたい」と東北訪問を熱望した。

 また、W杯決勝の退場処分による出場停止は9月1日の五輪最終予選初戦タイ戦のみと判明した。

〔日刊スポーツ 2011年7月23日の記事より、写真はロイターより〕


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今回の女子W杯ドイツ大会のなでしこジャパンは優勝の他に、澤穂希が大会最優秀選手賞(MVP)と得点王を獲得しましたが、もう一つ賞を貰ってます。それは「フェアープレー賞」です。基本的にフェアープレー賞のシステムは、警告数や退場者数やファウル数をポイント化して、決勝トーナメントに進出したチームの中から最もポイントが少ないチームが受賞するのが主流です。ただ、サッカーの場合、フェアープレー賞は負けたチームが貰うことがわりと多いような気がします。やはり、負けたチームは必然的に試合数とファウル数が少なくなるので、受賞する確率が当然高くなるからです。ちなみに、日本はメキシコで開催された先のU-17W杯では準々決勝で敗退するも受賞するなど、実はあらゆる国際大会でフェアープレー賞の常連国です。それだけ、日本はファウルが少なく、綺麗なサッカーを志向している表れなのでしょう。ただ、今までの日本は負けて受賞したのが殆どだったので、良き敗者に贈られる「慰めの賞」のような感じなので、少し複雑でした。ある意味、公平を重んずる国民性である日本人に相応しい賞なのかもしれませんね。

しかし、今回のなでしこジャパンは優勝と同時にフェアープレー賞を受賞したのだから、大いに胸を張りたいです。というのも、今大会の日本が受けた警告数5枚は、決勝トーナメントに進出した8チームの中では、フランス・豪州・イングランドと並んで少ないからです。ただ、日本はフランスとともに今大会は6試合を戦いましたが、日本は延長戦を2試合も戦ったので、試合時間で考えれば実質的に日本が今大会最少の警告数となります。また、ファウル数を試合時間で割った数字だと、日本0.09(55/600分)、米国0.12(72/600分)、スウェーデン0.15(82/540分)、フランス0.12(69/570分)、ドイツ0.12(46/390分)、ブラジル0.12(46/390分)、豪州0.07(28/360分)、イングランド0.10(40/390分)となり、日本は豪州に次いで2番目となります。数字的に見ても、今大会のなでしこジャパンは反則に頼らず、持ち味の高い技術を活かした綺麗なサッカーを実践して世界的に高く評価されたので、フェアープレー賞を受賞するに値する国だと思います。

ちなみに、今大会の退場者を出した国は4ヶ国あり、米国・フランス・スウェーデン、そして日本です(4ヶ国とも退場者数は1人)。準決勝までのデータだったら、間違いなく日本がフェアープレー賞の最有力候補でした。しかし、日本は決勝戦で退場者を1人出してしまった為、代わりに豪州が貰うだろうと思われました。やはり、警告数とファウル数の少なさが決め手となったのでしょうか。ただ、仮にフェアープレー賞の受賞を逃したとしても、決勝戦の延長後半終了間際に退場処分を受けたDF岩清水梓を非難する人は殆どいないでしょう。むしろ、岩清水のあの反則は賞賛ものですし、やらない方が非難されました。なぜなら、米国の1点目を決めた快速FWアレックス・モーガンが味方のスルーパスに反応して抜け出されたので、決定的なピンチの場面だったからです。モーガンに完全に抜け出されたらかなりの高い確率で決められていたし、残り僅かな時間を考えても日本が追い付くのは困難でした。また、反則を犯した地点がペナルティエリアの外だったことも幸いでした。もし、ペナルティエリア内だったら米国にPKを与えてました。岩清水が素早い反応でFKにとどめたので、失点する確率を下げさせました。

試合の早い時間帯に退場処分を受けたら大いに批判されるけど、あのFKの場面は残り時間が僅か1分だったので、岩清水の退場は殆ど影響はなかったです。ましてや、PK戦は人数が減っても試合には関係は無いです。岩清水のプレーは、まさにプロフェッショナルファウルの見本でした。ただ、この退場劇は一つだけ不安がありました。それは、岩清水の出場停止数です。サッカーは退場処分を受けた場合、自動的に次の公式戦が1試合以上出場停止となります。悪質な反則の場合は出場停止数が更に増える可能性があります。日本が次に戦う公式戦とは、9月1日から中国の済南で行われるロンドン五輪アジア最終予選です。2枚の切符を掛けて争うこの予選は豪州・中国・南北朝鮮の4ヶ国がライバルとなり、格下のタイは草刈場です。幸運にも、岩清水の出場停止数は1試合だけにとどまりました。しかも、出場停止となる五輪予選の試合は初戦のタイなのも幸いです。力関係を考慮しても、おそらく日本が攻めている時間が長いことが予想されるので、守備の要である岩清水の不在の影響は低いからです。それに、短期決戦のこの予選は必然的に「ターンオーバー制」を求められるので、主力を休ませるにはもってこいの試合です。

クレバーな岩清水もさすがに五輪予選のことまで考えていたとは思わないけど、あのプレーは昨年の南アフリカW杯でルイス・スアレス(ウルグアイ)が延長後半ロスタイムにガーナの決定的な得点機会をハンドで阻止したシーンを彷彿しました。手と足の違いはあるとはいえ、本質的には同じです。なぜなら、たとえ絶体絶命の状況下であっても、最善の結果を得る為に、何を犠牲にして、何を実行するのかを瞬時に判断した賢いプレーだからです。自分が第三者の立場であれば、こうした狡猾なプレーには眉を顰めていたのかもしれません。世間的にも侃侃諤諤の議論を呼ぶでしょう。しかし、いざ立場が変わって、自分が当事者になれば全く気持ちが異なるものです。やはり、人間とは現金なものですね(苦笑)。余談ですが、1次リーグで警告がゼロだった日本は、最初の大一番となったドイツ戦では4枚の警告を受けてます。しかし、今大会の警告は準々決勝で消滅するルールだったので、警告の貰い方も上手でした。つまり、今回のなでしこジャパンは、ただ美しく戦っただけでなく、賢さもしっかりと身に付けた上で結果を出したのだから、あらゆる面で人間的な成長を感じます。だからこそ、今回のフェアープレー賞の受賞は最高に価値があるのです。


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(ちなみに、岩清水と同宿だった川澄奈穂美は神奈川県立弥栄西高校の先輩です)




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