うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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なでしこジャパン、多くの収穫を手にしてアルガルベカップを2位で終える

2012年03月09日 | サッカー(女子)
◆女子サッカー・アルガルベカップ2012(2012年3月7日 @ポルトガル・ファロ/エスタディオ・アルガルベ)

・決勝
ドイツ 4(2-1)3 日本
得点者:ドイツ)20分 ジェニファー・マロジャン、22分&88分&90分+1 セリア・オコイノダムバビ
      日本)35分 川澄奈穂美、55分 田中明日菜、90分 永里優季

※ドイツは6年ぶり2度目の優勝

・最終順位 (☆はロンドン五輪出場国)
優勝・ドイツ、2位・☆日本、3位・☆米国、4位・☆スウェーデン、5位・デンマーク、6位・アイスランド、7位・ノルウェー、8位・ウェールズ、9位・中国、10位・ポルトガル、11位・アイルランド、12位・ハンガリー


日本サッカー協会の今大会の関連ページ
今大会の日本女子代表21名(日本サッカー協会HPより)
今大会の各国の出場選手(wikiより)

〔写真はロイターより〕


                           *  *  *  *  *


大事の前の小事

昨年7月9日にW杯準々決勝で対戦して以来となった今回の日独対決。W杯では、日本が押し込まれながらも、延長戦の末に敵地でドイツを1-0で下して準決勝進出を果たし、通算9試合目にして記念すべき対ドイツ戦初勝利を飾りました。同時に、この日本戦に敗れたドイツは、男女を通じて史上初のW杯3連覇が消滅しただけでなく、W杯で欧州勢上位2位以内に入れなかったので、今回のロンドン五輪の出場を逃した経緯があります。ただ、現在のドイツは、大会6連覇が懸かった来年7月の欧州選手権に向けて強化に勤しんでいるので、決してモチベーションは低くなく、むしろ日本にリベンジする為に意気込みがかなり強かったはずです。なにせ、日本のユニフォームの右胸に燦然と輝く現役世界女王の証である「チャンピオンバッジ」は、実は昨年のW杯まではドイツがつけていたので、心中ひそかに期するところがあったでしょう。日本が五輪で悲願のメダル獲得に向けた強化としては、ドイツはこの上なく最高の相手でした。

「新旧女王対決」となった今大会の決勝戦は、FIFAランキング2位(ドイツ)と3位(日本)の強豪国同士の対決でもありました。この日も、MF澤穂希が体調不良で欠場でした。日本は攻撃的な位置に、FW永里優季、FW安藤梢、MF川澄奈穂美、MF大野忍の4選手を同時起用。更には、本来なら左サイドでボールを受けてさばく役目を担うMF宮間あやをボランチで起用し、低い位置からゲームを作ることを試みました。しかし、日本の思惑は完全に裏目に出ます。ドイツは、日本の攻撃の起点となる宮間とMF阪口夢穂のダブルボランチにボールが渡ると素早いチェックで潰し、ボールを奪うと一気に前線のMFセリア・オコイノダムバビに縦パスを預けます。単純な攻撃だが、体格と身体能力で勝るドイツが主導権を掴み、日本は序盤から自陣にくぎ付けにされて、苦戦を強いられます。

そして、前半20分、ドイツは日本の左サイドに大きく展開。DF鮫島彩が対応を誤って簡単にクロスを上げられてしまい、MFジェニファー・マロジャンがDF宇津木瑠美の前に上手く体を入れて右足で合わせて、ドイツが先制。2人とも相手へのケアが甘過ぎでした。畳み掛けるように、その2分後には、左CKからオコイノダムバビがDF岩清水梓に空中戦に競り勝ち、頭越しにヘディングを決めてリードを広げます。劣勢に立たされた日本だが、35分に中央からドリブルを仕掛けた安藤が川澄に絶妙なラストパス。フリーでボールを受けた川澄は右に切り返して相手DFをかわし、右45度の角度から鮮やかに右足で決めて、ようやく反撃を開始。しかし、同点に追いつくことはできず、日本は1点のビハインドを背負って前半を終えました。

後半の日本は、DF熊谷紗希、DF近賀ゆかり、MF田中明日菜の主力3人を投入。宮間が本来の左サイドのポジションに戻り、代わってボランチに田中が入りました。日本はテンポよくボールを離したことが功を奏し、更にはドイツに疲労が見え始めたこともあり、前半に比べてパスが回るようになって、試合の主導権を日本が奪い返します。そして、後半10分、左のショートコーナーから川澄がドリブルで切り込んで永里に繋ぎ、最後は田中が押し込んで2-2の同点に追いつきます。その後は、互いに譲らず、一進一退の攻防が続いて膠着状態となります。

だが、後半43分、ドイツは右サイドのパス交換から、DFビアンカ・シュミットが日本のペナルティーエリア内に侵入。後半から左サイドバックに回ったDF有吉佐織が後ろから手をかけてシュミットを倒してしまい、ドイツがPKを獲得。オコイノダムバビが冷静にPKを決めて勝ち越しに成功。しかし、その直後、日本はペナルティーエリア内で近賀、川澄と繋いでFW高瀬愛実がゴール前に放り込み、GKアルムス・シュルトがファンブルしたところを永里が豪快に右足で蹴り込んで、再び同点に追いつきます。このままPK戦かと思われたロスタイム、長い縦パスからオコイノダムバビがGK海堀あゆみを冷静にかわしてハットトリックを決め、土壇場でドイツにリードを許します。結局、日本は3-4で惜しくも敗れて準優勝に終わりました。

日本が4失点を喰らうのは、2008年8月18日の北京五輪準決勝で米国に2-4で敗れて以来です。今回の日本は、前半の立ち上がりに、相手のプレッシャーをまともに受けてパスとボールコントロールのミスが多発。相手に主導権を奪われてしまい、それがすべて失点に繋がりました。また、一本の長い縦パスで簡単に崩されるなど、守備面での連係ミスやGKの判断ミスが課題でした。ただ、日本は最後に力尽きたとはいえ、先行される苦しい展開から追いつく粘りを見せたのは、評価すべきです。更には、大黒柱の澤が不在にも関らず、強豪ドイツと堂々と渡り合えたのは、今後に向けて自信に繋がったはずです。五輪本番でも、不測の事態が起きる可能性はあるので、万が一に備えた良いシミュレーションになったでしょう(もちろん、澤の復帰は心から願います)。更には、控え選手に複数のポジションを起用して経験を積ませ、選手同士の組み合わせを数多くテストしたのだから、優勝を逃した以上に、得られたものは大きかったです。

たしかに、日本は現役の世界女王である以上、W杯で倒したドイツに敗れるのは、もちろん悔しい気持ちはあります。しかし、この時期に行われる国際親善大会で、米国だけでなく、ドイツにまで勝つと、かえって慢心が芽生える危険性があり、問題点も霞んでしまいます。なので、課題を洗いざらい見つけて、気を引き締め直す意味でも、惜敗だった今回はそれほどダメージは少ないと思います。それに、昨年のW杯と五輪アジア最終予選では、日本は主力と控え選手との力量差を再三指摘されました。五輪本大会の登録人数はたった18人だけですし、大会期間もW杯より5日間も短いのだから、同じ選手だけで最大6試合も戦い続けるのは非常に困難です(なお、バックアップメンバーは4名まで帯同が可能)。なので、いざという時に代わりの選手が戦力として計算できる目処が立ったことが、今大会の最大の収穫だったのではと思います。

ちなみに、今の時期に行われる女子サッカーの国際親善大会には、アルガルベカップ以外にも、キプロスカップという大会があります。この大会もアルガルベカップと同じく12ヶ国が参加し、4チーム×3組の予選リーグを実施した後に、変則形式の順位決定戦を行います。今年の大会には、ロンドン五輪出場国のうち、五輪開催国のイングランド(=実質的な英国代表)、W杯4位のフランス、カナダ、南アフリカの4ヶ国が参加(ちなみに、五輪出場が濃厚のニュージーランドも参加)。今大会は、フランスが決勝でカナダを2-0で下して初優勝を飾り、イングランドが4位、NZが7位、南アが10位となりました(→詳細はこちら)。優勝したフランスは4戦全勝し、W杯の準々決勝でPK戦にまで縺れ込んだイングランドには、今大会では3-0で快勝してます。日本と同じく、パスサッカーを志向するフランスとは、W杯では対戦しなかったので、メダル獲得の為にも警戒すべき存在です。もし、フランスと五輪本大会の抽選で同組に入らなかった場合、6月の欧州遠征では親善試合を組んで腕を試しておきたいです。


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☆日本vsドイツのダイジェスト



☆3位決定戦の米国vsスウェーデンのダイジェスト(米国が4-0で勝利)



☆キプロスカップ1次リーグのフランスvsイングランドのダイジェスト(2012年3月4日)



☆キプロスカップ決勝のフランスvsカナダのダイジェスト(2012年3月6日)




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