うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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来年のU-20女子W杯を日本で代替開催するかも?

2011年12月23日 | サッカー(女子)
国際サッカー連盟(FIFA)は18日、政府保証が得られることを条件に、日本が来年のU―20(20歳以下)女子ワールドカップ(W杯)をウズベキスタンに代わって開催すると発表した。日本がFIFA主催の女子大会を開催するのは初。

 U―20女子W杯は、年齢制限のない女子W杯の一つ下の世界大会。2002年から隔年で開催され、来年は第6回となる。FIFAは16、17両日に開いた理事会で、施設、運営両面からウズベキスタンの開催が困難と判断した。

 当初予定では8~9月開催の来年大会には、既に日本などが予選を突破。日本と国交のない北朝鮮も出場権を獲得している。

〔共同通信 2011年12月18日の記事より〕

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「ヤングなでしこ」の勇姿を来年夏に日本で見たい!!

なでしこジャパンが女子W杯を初優勝した2011年は、日本女子サッカー界にとってエポックメーキングとなる年でした。しかし、来年の2012年は、今年以上に重要な年となります。なでしこジャパンが7月22日~8月9日に行われるロンドン五輪、ヤングなでしこ(現在のU-19代表)が8月18日~9月8日に行われるU-20女子W杯、リトルなでしこ(現在のU-16代表)が9月22日~10月13日にアゼルバイジャンで開催されるU-17女子W杯に出場し、それぞれ世界の頂点を目指します。また、来年夏に新潟県を中心に開催される高校総体では、女子サッカーが初めて正式種目となるので、更なる競技の発展が期待されます。

なお、U-20女子W杯に関しては、当初は中央アジアのウズベキスタンで開催される予定でした。ところが、ウズベキスタンが国際サッカー連盟(FIFA)の開催条件を満たしてないと判断され、FIFAは12月18日に大会開催の取り消しを発表。その代わりに、FIFAは日本に代替開催を打診しました。FIFAが日本に白羽の矢を立てた背景には、W杯を優勝して女子サッカー熱が高まっていることと、東日本大震災の復興支援もあります(4つの試合会場のうち1つを被災地での実施を検討しているそうです)。最近のFIFAは、2018年W杯をロシア、2022年W杯をカタールを開催させているように、新規の市場開拓を目論んで主催大会の開催権を新興国に優先させている傾向があります。ただ、今回の件は、FIFAがよく調べもせずに開催能力が疑わしい国に大会を招致させたことが、無用な混乱をもたらしました。しかし、準備期間がかなり短いとはいえ、これは日本の女子サッカー界にとって大きなチャンスでもあります。

日本はクラブW杯を除いて、FIFA主催大会は、1979年ワールドユース選手権(現・U-20W杯)、1993年U-17世界選手権(現・U-17W杯)、2001年コンフェデレーションズ杯、2002年日韓W杯の合計4回を開催した実績があります(なお、五輪は1964年東京大会を開催)。しかし、これらの大会は全て男子の大会であり、女子のFIFA主催大会を日本で開催したことは今までに1度もありません。それどころか、日本が過去にセントラル方式で行われた女子のアジアの公式大会を国内で開催したのは、なんとたった4回だけです。1991年5~6月に福岡で開催されたアジア選手権(現・アジア杯)、1994年10月に広島で開催されたアジア競技大会、2004年4月に東京と広島で開催されたアテネ五輪アジア予選、2010年2月に東京で開催された東アジア選手権です。なお、H&A方式だと、メキシコと対戦した2003年&2007年のW杯大陸間プレーオフ、北京五輪アジア最終予選の3回(いずれも国立競技場で開催)なので、合計7回だけです。

女子の年代別の国際大会は、世界とアジアのいずれの大会も21世紀以降に創設されたので、他の競技に比べても歴史が新しい事情はあるが、国内でFIFA並びにアジアサッカー連盟(AFC)主催大会を開催したことは皆無です。しかも、女子は親善試合も国内で開催すること自体が少ないです。競技を取り巻く状況が異なるとはいえ、五輪とFIFA並びにAFC主催大会を全て開催した実績のある男子と比べると、女子は国際大会の開催実績があまりにも少な過ぎです。対照的に隣国の中国は、9月に行われたロンドン五輪アジア最終予選をはじめ、五輪1回、W杯とアジア競技大会とアジア杯が各2回、東アジア選手権が1回、AFC U-19女子選手権が3回、AFC U-16女子選手権が1回と国際大会をたくさん開催してます(ただし、成績が伴ってないけど・・・)。ましてや、毎年のように国内で世界規模の国際大会を開催するバレーボールと比べると、違いが一目瞭然です。というか、バレーボールは異常なまでに自国開催が多すぎですけどね。

女子のホームゲームが少ないのは、もちろん強化の意味合いでアウェーを重視しているとはいえ、掛かる経費のわりに収益が見合わないこと(=赤字の発生)が最大の理由です。しかも、男子の前座が多く、単独興行をしても地方の小さな会場を使用することが珍しくないです。ただ、ホームでの試合数が余りにも少な過ぎるので、国民の目に触れる機会が非常に少なく、結果的に競技発展の妨げになってます。しかし、今回FIFAからのU-20女子W杯の代替開催の打診は、強化だけでなく、女子サッカーの普及や育成という観点からも意義深いです。日本の女子サッカーは世界の強豪国と比較して競技人口が遥かに少なく、他の競技に比べても決して多くないです。しかも、中学生年代になると受け皿が極端に不足しているので、住んでいる地域によっては中学進学と同時に競技を続けることを断念せざるを得ず、裾野が狭くて脆弱な構造となってます。今回は年代別の大会だとはいえ、世界大会を自国で開催することは、競技環境を改善するきっかけにも繋がります。

また、現行の男子のW杯招致に関する規定だと、次にアジアでW杯を開催できるのは早くて2034年大会です。しかし、2034年大会をアジアで開催する場合は、おそらく経済成長著しい中国が最有力候補だと思われます。なので、FIFAの規定が変わらない限り、日本がW杯を現実的に開催できるのは2046年大会でしょう。たぶん、男子のW杯を日本で開催するのは当分の間は無いです。ただ、もし日本が将来本気で男子のW杯開催を考えているのなら、男女問わず、あらゆるレベルのFIFA主催大会を積極的に開催して、実績を作る必要があります。現在は年代別の大会であっても、多くの国が開催に名乗り出るので、FIFA主催大会の招致は容易ではないです。しかも、今の日本はFIFAの理事が不在です。なので、今回のFIFAからの打診は、FIFAや各国要人との人脈を構築する上でもまたとないチャンスです。それに、日本は女子W杯の開催も近い将来検討しているので、テストとしても意味があります。

現在の日本のU-19世代は、昨年9月にトリニダード・トバゴで開催されたU-17女子W杯で準優勝を経験した選手が中核となってます。10月にベトナムで開催されたAFC U-19女子選手権(兼・U-20女子W杯アジア最終予選)では、アジアのライバルを相手に4勝1分で無敗で優勝を飾って本大会の出場権を獲得し、来年のU-20女子W杯でも日本は優勝候補の一角に挙げられてます。それに、京川舞、田中陽子、仲田歩夢、猶本光、横山久美らタレントが多く揃っており、将来が期待されてます(なお、なでしこジャパンの岩渕真奈もこの世代)。日程上、ロンドン五輪との掛け持ちは難しいが、間違いなく数年後のなでしこジャパンを背負って立つ中心世代となります。つまり、来年のU-20女子W杯は、次回の2016年リオデジャネイロ五輪を占う大会となるはずです。将来注目の世界のスター候補が一同に集う大会なので、日本で開催する意義は大きいです。

最終的には政府保証を取り付けることが開催条件だが、観客動員、北朝鮮代表チームの入国問題、真夏での開催、会場の確保、電力不足など難題が山積してます。女子のユース年代の大会なので、おそらく赤字の発生は見込まれるが、日本協会が負担出来る範囲内であれば、将来の投資の為にも、今回の代替開催の話を引き受けたいところです。



▼過去のU-20女子W杯の歴代成績
(参加資格は、第1~2回大会は19歳以下、第3回大会以降から20歳以下)

第1回(2002年)カナダ大会
優勝・米国、2位・カナダ、3位・ドイツ、4位・ブラジル (日本の成績:ベスト8)
〔この大会に出場したW杯優勝メンバー:福元美穂、丸山桂里奈、大野忍、近賀ゆかり〕

第2回(2004年)タイ大会
優勝・ドイツ、2位・中国、3位・米国、4位・ブラジル (日本の成績:アジア予選敗退)
〔アジア予選に出場したW杯優勝メンバー:岩清水梓、宮間あや、阪口夢穂、宇津木瑠美、川澄奈穂美、永里優季〕

第3回(2006年)ロシア大会
優勝・北朝鮮、2位・中国、3位・ブラジル、4位・米国 (日本の成績:アジア予選敗退)
〔アジア予選に出場したW杯優勝メンバー:岩清水梓、鮫島彩、阪口夢穂、田中明日菜、宇津木瑠美、永里優季〕

第4回(2008年)チリ大会
優勝・米国、2位・北朝鮮、3位・ドイツ、4位・フランス (日本の成績:ベスト8)
〔この大会に出場したW杯優勝メンバー:熊谷紗希、田中明日菜、宇津木瑠美〕

第5回(2010年)ドイツ大会
優勝・ドイツ、2位・ナイジェリア、3位・韓国、4位・コロンビア (日本の成績:1次リーグ敗退)
〔この大会に出場したW杯優勝メンバー:熊谷紗希、高瀬愛実、岩渕真奈〕

※第1~3回大会までは、本大会とアジア予選が同一年開催。
  第4回大会以降から、アジア予選が奇数年、本大会が偶数年に開催。


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