うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
のんびり更新しますので、どうぞ気長にお付き合い下さい。

もはや世界5位の座を維持するのが精一杯のシンクロ日本

2011年07月28日 | 水泳
水泳の世界選手権で、シンクロナイズドスイミングの日本は、出場した6種目全てで5位に終わり、2009年ローマ大会に続いてメダルを獲得できなかった。ロンドン五輪出場権は中国が獲得。上位との差は開いたままだ。
 チームテクニカルルーティンは今年から曲を変更した。ロシア人のガーナ・マキシモワコーチの振り付けで、今までは少なかった曲線的な動きを採り入れ、芸術性を高めることに挑戦。花牟礼チームリーダーは「今までより難しいものを乗り越えないと世界には通用しない」と説明したが、アピールし切れなかった。
 中国の井村雅代ヘッドコーチは、「曲線の演じ合いでロシアに勝てるのかどうか」と話し、日本の本来の持ち味である技術を前面に出すべきだと指摘する。主将の小林は「飛び抜けたものが欲しい」ともがくが、現状ではそれが見えない。
 今後、チームフリールーティンの曲を変更する予定の日本。上海での結果を踏まえ、方向性を明確に打ち出す必要がある。

〔時事通信 2011年7月23日の記事より〕


                           *  *  *  *  *


世界水泳のシンクロは全7種目あります。五輪だと、デュエット、チームの2種目が実施され、各種目ともテクニカルルーティン(TR)とフリールーティン(FR)の合計点で順位を争います。フィギュアスケートで例えるなら、前半のショートプログラムと後半のフリーの合計点で順位を争う方式と同じです。しかし、世界水泳は五輪と全く異なり、フリールーティンコンビネーション以外のソロ、デュエット、チームは、それぞれTRとFRが独立した種目となっております(ちなみに、ソロとフリールーティンコンビネーションは非五輪種目)。なので、種目数が多くなってます。

「マーメイドジャパン」こと日本は、今大会にはソロ、デュエット、チームにそれぞれTRとFRにエントリー。なんと、出場した6種目とも全て5位に終わり、前回2009年ローマ大会に続いてメダルを逃しました。日本のシンクロは五輪の金メダルこそ無いものの、北京五輪までは表彰台が常連だっただけに、この結果は寂しい限りです。ただ、一部のメディアが今回の結果を“惨敗”と評してますが、この表現は当てはまらないです。というのも、今大会の日本は目立ったミスこそなく、現在の実力は全て出し切りましたから。ただ、強豪国と比較すると選手のプロポーションはもちろんのこと、演技内容でも明らかに見劣りしてました。要するに、格下が何も抵抗することなく実力通りに格上に敗れたので、楽敗と表現した方が正しいでしょう。なにせ、過去の大会では熱心に中継してたテレビ朝日は、中国開催の今大会は時差が殆ど無いにも関わらず、地上波が翌日の早朝、BSが丸一日遅れの録画中継と酷い扱いでした。要するに、最初からメダル争いすら全く期待されてない事がよく分かります。

全7種目を完全制覇したロシアは明らかに別格の存在でした。ロシアの選手はただでさえプロポーションが良く、更には同国伝統のバレエの影響もありますが、高さ・速さ・同調性・演技構成の難易度など、シンクロに必要な全ての要素でライバルを完全に凌駕してます。しかも、驚くことにミスが殆ど無かったです。この絶対女王のロシアに着実に迫りつつあるのが、今大会の開催国であるアジア女王の中国です。中国は細かいミスこそ若干あったものの、6種目で2位に入賞。ついに中国はスペインを引き摺り下ろして、ロシアに次ぐ序列を確保。更にデュエットでは、FRで2位入賞した蒋文文と蒋婷婷の双子の姉妹ペアだけでなく、今年初めて組んだ別のペアでもTRで銀メダルを獲得するなど、選手層の厚さまで証明。ただ、中国の井村雅代コーチが「銀メダルは狙うものではなく金を狙った残念賞ですよ」(サンケイスポーツ2011年7月21日の記事より)と発言しているように、中国は既に世界の頂点を見据えてます。殆どの種目で3位に終わったスペインは、今年から藤木麻祐子コーチが米国のコーチに就任して離脱した影響があったのかもしれませんね。

採点競技なので審判員の先入観が大きくものを言うこともあり、強豪国との実力差は簡単には埋めようが無く、むしろ引き離されるばかりです。なお、今大会は、デュエットとチームのアジア最上位国にロンドン五輪の出場権を与えられましたが、2種目とも中国が当然の如く獲得(なお、各種目ともTRとFRの合計点で決定)。チームに至っては、なんと7.1点もの大差がつきました。なにせ、各種目とも4位入賞を目標にしていた日本は、端から中国に負けることは織り込み済みだったので、今大会での五輪出場権獲得は全く目標にしておりませんでした。むしろ、同等の国との争いに執心する有様でした。一応、来年4月の世界最終予選にまだ可能性は残されてます。本大会の出場枠が24(このうち世界最終予選で争われる枠は19)のデュエットは大丈夫ですが、チームは8ヶ国しか出場枠がなく、最終予選の枠も3つしかないので全く楽観出来ません。というのも、五輪開催国の英国が欧州代表となるので、この予選にはロシアやスペインが回って来るからです。実質的にたった1枚の切符を巡って、日本は同等のウクライナやイタリアらと激しく争うのが大方の見方です。

「核澤」のあだ名で御馴染みの、テレビ朝日の角澤照治アナウンサーがチームFRの競技終了後に、「日本は世界の5位を勝ち取りました!!」と無理やり喜んでましたが、残念ながら中堅国にまで転落した日本の現状を的確に表しているので、まさに言い得て妙です。ちなみに、今大会のチームとデュエットは、TRとFRともに1~7位までが全て同じ順位なので、世界各国の序列がほぼ固定化されたような気がします。おそらく、ロンドン五輪では、日本は史上初めてメダル獲得を逃す可能性が極めて濃厚です。それどころか、かつての体操のように長期低迷を強いられる危険性すらあります。もはや五輪には参加するのが精一杯の日本は、五輪の経験を途絶えさせない為にも、石にかじりついてでもロンドンの切符を獲得しなくてはなりません。


今回の世界選手権のシンクロ日本代表
今回の世界選手権のシンクロの詳細の成績(wikiより)
前回北京五輪から変更されたシンクロの五輪予選システム


・関連記事
日本人が指導する国と五輪切符を争う展開になりそうなシンクロ日本
ますます世界の表彰台が遠のいたシンクロ日本
シンクロの井村雅代氏が再び中国のコーチに就任
シンクロ日本、ついに世界水泳でメダルゼロ

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
正直言って (こーじ)
2011-08-02 23:31:32
 正直言ってシンクロの首脳陣が何を目標にしているのか分かりませんし、具体的な指針が見えないのが実情ですね。

 井村さんが言う‘銀メダルは金を狙って失敗した証’という分析こそ正しいわけで、そういうメンタリティを持ったコーチでなければ再建は難しいでしょう。

 なでしこジャパンが‘北京ではメダルと言っていたらベスト4で終わったので、今回は優勝を目標にした’という事で優勝できたのだと思いますし、民主党の某女性大臣のような‘2位ではダメなのですか’などというメンタリティのコーチでは国際試合で勝つのに不適格だと思います。

 とはいえ‘優勝を狙う’というメンタリティのコーチが日本にいるかどうかが問題ですけどね。

 シンクロは正直言ってメダルが取れなくなったら重量挙げのようにTV中継もなくなりそうですね。
返信する
コメントありがとうございます (猫なべ)
2011-08-03 00:17:47
こんばんは、こーじさん

同じ採点競技の女子体操も現在世界5位ですが、体操は希望が持てるのに対し、シンクロは絶望しか感じませんね。

女子体操は、ある意味W杯前のなでしこジャパンと同じような立ち位置です。
長年低迷してましたが、ここ数年は新しい戦力が出現するなど著しく復興を遂げ、国際大会でも実績を残してます。
ただ、上位4強との壁は依然として厚く、5~12位ぐらいの中位争いも熾烈なので、五輪出場が決して安泰ではありません。
それでも「22ヶ月合宿」を実施するなど、少しでも4強との差を縮める為に、かなりの努力をしてます。

それに比べると、シンクロは極端な世代交代をしたり、指導者をコロコロ変えたり、挙句の果てには水連内の派閥争いなど、一体何をやりたいのか全く意味不明ですね。
ハッキリ言って、今のシンクロは「参加することに意義がある」のレベルにまで没落してます。
本当にチームの五輪出場はヤバイ状況ですし、仮に行けたとしても、ロシア・中国・スペイン・カナダに次いで5位が関の山ですね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。