うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
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ますます世界の表彰台が遠のいたシンクロ日本

2010年11月21日 | アジア競技大会
チームは北京五輪銅メダルの中国が楽々と連覇を果たした。水面から出る足の長さ、空中に飛び出すリフトの高さは日本を含めた他チームを圧倒。蒋文文は「誇りに思う。地元開催のアジア大会で優勝できたから」と笑った。
 中国チームは北京五輪まで指導を受けた元日本代表の井村雅代コーチを、9月のワールドカップ前から再びコーチとして迎え入れた。プールサイドで見守った井村コーチは「勝つのは当然やからね。まだまだ上はあるから」と視線を世界に向けていた。

〔時事通信 2010年11月20日の記事より〕


                           *  *  *  *  *


今大会のシンクロナイズド・スイミングは、五輪でも御馴染みのデュエットとチームの他に、非五輪種目のコンビネーションも行われました。結果はご存知の通り、3種目とも開催国の中国が他を全く寄せ付けずに圧勝。一方、日本はいずれの種目も中国の後塵を拝し、全て2位に終わりました。まあ、極めて順当すぎる結果なので、日本が2大会ぶりにアジア王座の返り咲きに失敗したことに対して、ショックも失望も全く無いですね。前回の2006年ドーハ大会の日本は低レベルな審判によるイカサマ判定で負けましたが、4年経った今はそんな出来事を忘れさせるほど大きく水を開けられました。むしろ、今大会を観て、日本が世界の表彰台から更に遠ざかったことを、あらためて実感させられました。

中国の選手はただでさえプロポーションが優れており、更に身体能力も高いです。あの高いリフトだけでも、他国を完全に凌駕してます。更に、蒋文文と蒋婷婷は双子の姉妹なので、同調性は抜群です。おそらく、シンクロに必要な全ての要素で、現在の中国は日本より上回っているのかもしれません。ただ、中国は終盤に細かいミスが出たのが、今後ロシアやスペインと世界の頂点を争う上での課題でなのしょうか。一方、日本は、9月に同じ中国で開催されたW杯と今大会の中国との成績を比較すると、デュエットでは若干は縮めましたが、チームでは少し広げられました。昨年7月の世界水泳と比べると、むしろ中国との差は全ての種目で大きく広げられてます。

なお、このW杯で日本は、デュエットで3位、チームで4位に入りました。しかし、デュエットはロシアとスペインが、チームはスペインが、それぞれ不参加でした。世界の2強を形成するこの両国が不参加だった大会なので、現在の日本はカナダや米国やウクライナやイタリアあたりと4~8番目を争う位置にいるのでしょう。つまり、現在の日本は世界の中堅国なのです。今回のアジア大会は、世界のトップ3に位置する中国にどれだけ迫れるのか注目されましたが、残念ながら一向に縮まる気配はなく、むしろ中国との差が固定化されたような気がします。やはり、採点競技は審判の先入観がものを言うので、一旦序列が固定化されるとそれを覆すのは至難の技です。もし、この序列のままなら、現在の日本は来年の世界水泳とロンドン五輪でメダル獲得は極めて困難だと言わざるを得ないです。

それにしても、アテネ五輪以降の日本は万年2位の座から脱却する為に、長年代表チームを指導した井村雅代コーチを交代させたにも関わらず、成果が出ないどころかむしろ低迷してます。「若いコーチに経験を積ませる」という理由で経験不足のコーチを立て、結果が出ないとまた別の人物に交代の繰り返し。指導者がコロコロ変わりすぎでは、選手も力を発揮できないでしょう。逆に、井村コーチを再び迎えた中国との差を更に広げられたのでは面目が丸潰れですね。来年の世界水泳でアジア最上位チームがロンドン五輪の出場権を得られるので、こんな有様ではほぼ不可能でしょう。一応、世界最終予選の道は残されてますが、出場枠の多いデュエットはともかく、予選方式次第ではチームが五輪出場を逃す危険性があります。今回の結果は予想されたとはいえ、将来を考慮すると極めて痛恨だと思います。


今大会のデュエットの成績
今大会のチームの成績
昨年7月にローマで開催された世界水泳の成績
(世界水泳のソロ、デュエット、チームは、テクニカルルーティンとフリールーティンがそれぞれ独立した種目です)
今年9月に中国で開催されたW杯の成績
(なお、このW杯の採点を2倍にしたスコアが、アジア大会と同じ採点法になります)


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2 コメント

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まったくです (こーじ)
2010-11-22 11:08:09
 五輪で必ずメダルを獲得していたシンクロですが、もはや厳しくなってきてますね。
 
‘金を取るには井村コーチではダメ’と交代させたものの、反対に井村コーチだから金を目指せるレベルだったという事がハッキリしましたよね。

 やはり協会に確たるビジョンがないというのが、すべての元凶でしょう。
 指導者のコーチがいるようでは、話になりませんよね。
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コメントありがとうございます (猫なべ)
2010-11-22 19:26:41
こんばんは、こーじさん

今大会は日本が負けた悔しさよりも、井村氏が率いる中国の素晴らしい演技を観られたことの方が
よっぽど嬉しかったです。
なにせ、戦う前から結果が分かるぐらい、中国とはレベルが違いすぎましたから。

「代表チームは強化の場であって、育てる場ではない」
とよく言われますが、これは選手だけでなく指導者にも当てはまるはずです。
近年の低迷は、水連の本末転倒な指導者選びや、継続性の無い強化のツケだと思います。

世代交代に失敗した今の日本は、メダル獲得はもちろんのこと、五輪に出場するのが
やっとのレベルにまで下降してます。
下手をすると、一昔前の男子体操みたいに、長期低迷を強いられる可能性がありますね。
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