うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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あっけなくロンドンへの道が閉ざされた男女水球日本代表

2012年01月29日 | 水泳
◆2012水球アジア選手権(2012年1月24~27日 @千葉県習志野市/千葉県国際総合水泳場)

・男子の日本の成績
1月25日 vsクウェート ○22-2 
1月26日 vsカザフスタン ●4-6
1月27日 vs中国 ●6-7

最終順位
優勝・カザフスタン(3勝)、2位・中国(2勝1敗)、3位・日本(1勝2敗)、4位・クウェート(3敗)

※カザフスタンがロンドン五輪の出場権を獲得


・女子の日本の成績
1月25日 vsカザフスタン ●8-12
1月26日 vs中国 ●6-18

最終順位
優勝・中国(2勝)、2位・カザフスタン(1勝1敗)、3位・日本(2敗)

※中国がロンドン五輪の出場権を獲得

注)男女とも今大会の2~3位のチームには、4月に行われる世界最終予選に進出できますが、日本水泳連盟は世界最終予選に代表チームを派遣しない方針なので、日本のロンドン五輪出場は男女とも消滅しました。


今大会の詳細の成績(wikiより)
日本水泳連盟の今大会の関連ページ
今大会の男女の日本代表選手(各13名)
水球日本代表公式応援サイト


                           *  *  *  *  *


先立つものが無ければ桧舞台にすら立てない

1月24~27日まで千葉県習志野市の千葉県国際総合水泳場で開催されていた水球のアジア選手権。この大会はロンドン五輪アジア予選を兼ねており、男女とも優勝国のみに本大会の出場権を与えられ、2~3位には4月に行われる世界最終予選に進出できます(なお、世界最終予選は男女とも12ヶ国が参加し、4位までが出場権を獲得)。参加国は、男子が4ヶ国(日本・中国・カザフスタン・クウェート)、女子が3ヶ国(日本・中国・カザフスタン)です。「ポセイドンジャパン」の愛称を持つ水球日本代表は、男子が東側諸国のボイコットで繰り上げ出場した1984年ロサンゼルス五輪以来28年ぶり、女子が初の本大会出場を賭けて、今大会に挑みました(ちなみに、女子は2000年シドニー五輪から正式種目)。

結果は、ご存知のとおりに、男女とも3位に終わり、今大会での五輪出場権の獲得は失敗。更に、日本水泳連盟は、世界最終予選に代表チームを派遣しない方針なので、日本のロンドン五輪出場は男女とも消滅となりました。五輪未出場の女子は、世界大会どころか、一昨年の広州アジア大会にすら出場してません。実力や予算の関係で国際大会に代表チームを派遣出来ず、国際経験が著しく不足してます。おそらく、水球の女子代表チームは、日本の全ての団体球技において、最低レベルの実力だと断言出来ます。しかも、アジア最強の中国は、昨年7月に地元上海で開催された世界選手権では2位入賞していたので、客観的に見ても、日本の五輪出場の望みは殆ど無かったです。なので、予選で2試合とも完敗を喫したのは極めて順当な成績です。

むしろ、本当に残念だったのは男子の方です。男子は、世界選手権では初となる決勝トーナメントに進出。過去最高順位となる11位となり、ライバルのカザフスタン(13位)と中国(15位)を上回って、アジア最上位の成績を収めました。しかも、今大会は地元開催だったので、ロンドン行きのチャンスはありました。それだけに、最大の大一番だったカザフスタン戦で、序盤戦を優位に進めながら4-6で逆転負けを喰らい、中国との最終戦を残して事実上の終戦となったのは本当に無念の一言に尽きます。特に、勝負所だった最終の第4ピリオドで、1点のビハインドを背負った日本は監督が退席処分を受けたカザフを押し込んで再三チャンスを作るも、肝心の得点を奪えず、逆に日本が退水処分を受けている間に失点を喰らったのは極めて痛恨でした。まるで、引き分けでも五輪切符を得られる優位な状況でありながら、先制点を奪うも5-7で逆転負けして五輪出場を逃した、2003年9月に敵地アルマトイで行われたアテネ五輪アジア予選のカザフスタン戦を彷彿とさせる試合展開でした。

ただ、関係者やメディアは、世界選手権の結果を過大評価しすぎでした。というのも、世界選手権のアジア枠は通常なら2つだけだが、予選を兼ねた広州アジア大会では、日本は優勝したカザフスタンに8-10、2位中国に3-9とそれぞれ敗れて3位に終わり、本来なら出場できないはずでした。だが、世界選手権は中国が開催国なので、日本が繰り上がって出場した経緯があります。また、本大会の組み合わせでも、予選リーグでは強豪の欧州勢がクロアチアのみとなり、同等のブラジルと同組になったのも幸いでした。更には、世界選手権では、カザフスタンと中国とは対戦してません。たしかに、日本は世界選手権で試合を重ねるごとに著しくレベルアップをしたとはいえ、多くの幸運を味方に付けたに過ぎませんでした。

日本の水球界は、競技人口だけでなく、社会人チームも非常に少なく、他の競技のような全国規模の国内リーグすらありません。なので、必然的に代表チームは学生主体です。いくらトップクラスに上り詰めて大学まで競技を続けても、卒業後は受け入れ先が少ないので現役を続けること自体が本当に困難です。しかも、予算が非常に乏しく、代表選手でも海外遠征では「自己負担金」まで求められるほどです。ただ、近年は製菓メーカーのブルボンが地元の新潟県柏崎市のクラブを支援したり、水連が少ない予算をやり繰りして海外のプロチームに選手を派遣するなど、それなりに強化してきましたが、今回も悲願達成はなりませんでした。体格や身体能力の差だけでなく、競技環境の劣悪さも成績不振に追い討ちを掛けており、まさに袋小路に迷い込んでます。おそらく、ライバルとの体制の差が、肝心の勝負所の場面で如実に反映されるのでしょう。

先ほど述べたとおりに、強豪の欧州勢が参加する世界最終予選は勝算が極めて薄いので、水連は代表チームを派遣しません。それに、水連は、競泳・飛び込み・シンクロなど統括する種目の範囲が多岐に渡るので、国際競争力が弱い水球の為に予算を十分に割けないのが実情です。なので、勝算が見込めない大会の為に、貴重な資金を使うだけでなく、選手(もしくは家族)に経済的な負担をさせてまで参加させることは、きっと難しいのでしょう。それに、日本が世界最終予選を辞退するのは今回が初めてではなく、2004年アテネ五輪でも権利がありながら見送ってます。1996年アトランタ五輪と前回2008年北京五輪では、実力を考慮して予選そのものへの参加を見送ったことがあります(北京五輪はアジア枠が無かったのが最大の理由)。とはいえ、継続的に国際経験を積ませることが強化に繫がるはずなので、たとえ可能性がゼロに等しくても、将来の為にも参加した方が個人的には良いのではと思うのですが・・・。

マイナー扱いされている競技は、プロ化するにしても、選手個人なら実力や知名度次第で可能だけど、国内のマーケットが小さすぎる場合は、リーグ全体はもちろんのこと、チーム自体のプロ化も非現実的です。また、東京が2020年五輪の招致に成功したとしても、後先考えない強化一辺倒の体制である「集中強化方式」を採るので、好成績を残せるのはその大会だけです。本番に成果を挙げる事のみに囚われるので、次世代の育成に手が回らずに世代交代に失敗し、目標である地元開催の五輪が終わった後は予算も減少するから、かえって衰退する恐れがあります。資金力や競技人口など、基盤が弱い競技団体が一過性に過ぎないイベントの為に無理なことをすれば、将来におのずと歪が出るのは自明の理です。1998年長野五輪後の冬季競技(パラリンピックも含めて)の惨状を見れば、一目瞭然でしょう。結局のところ、低迷を打開する特効薬など無く、「強化・育成・普及」を地道に邁進するしか他ないです。


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