この記事は神奈川県の地域猫調査への回答として当会が提出した文書をベースにした連載です。
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情① 地域猫活動の状況
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情② TNRは徹底するのが難しい
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情③ TNRの徹底を阻んでいるのは無責任な餌やり
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情④ 今のままでは地域猫活動は普及しない
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情⑤ 現行法での対応の限界
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情⑥ 殺処分ゼロはゴールではない
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情⑦ 路上死が示す悲惨な実態
⑧ 野良猫問題の解決は優先課題
犬の場合は「飼い主のいない犬」という存在は法的に認められていません(注:狂犬病予防法)。
従って犬の問題は基本的には飼い主の問題(遺棄・飼育放棄・多頭飼育崩壊など)やブリーダー・販売店などの事業者の問題(不適正管理など)です。
猫にも同様に飼い主問題と事業者問題はあるのですが、犬と決定的に違うのは
「飼い主のいない猫」という存在が(望ましくはないけれど・・・やむなく)認められている点です。
ここから生じる問題がいわゆる野良猫問題ということになります。
野良猫だってもとは飼い猫だったのが捨てられたりその子孫が野良となっているのだから、飼い主問題だ!というご意見も散見されますが、
理由はどうあれ一旦野良となった以降は、不妊・去勢手術をしない無責任な餌やリがそれらを繁殖させるという問題に変わっているのです。
問題解決のためにはここを正確に理解する必要があります。
代々野良だったか元々は飼い猫だったかは問題ではなく、現在飼い主のいない猫に不妊去勢手術をしないで餌だけやる行為が爆発的な繁殖を引き起こし、
周囲の人も猫も両方苦しめる野良猫問題として表面化するのです。
不妊去勢手術をせずに野良猫に餌をあたえるのは優しい行為などでは到底なく、行き場のない猫を無数に作り出してしまう不幸の拡大再生産です。
火に油を注ぐのではなく、手術をして餌をやる、可能ならば保護・譲渡も考えるのが良識ある優しい行動なのです。
このように野良猫問題は飼い主・事業者の問題とは別に、無責任な餌やリの問題として別に検討する必要があります。
そしてこれが犬猫問題の中で圧倒的に大きな問題なのです。
私たちが抱いているイメージを図にしてみました。
H27の殺処分は犬約1.6万頭、猫約6.7万頭です。野良猫はほとんど引き取ることはありませんが、
それでもこの猫の6.7万頭のかなりの割合を野良猫の子が占めています。
こうした状況を念頭に野良猫関連の数字を見ていくと、上の図のようなイメージが描けます。
間接的に野良猫問題の大きさを示唆する情報として、猫の路上死体が自治体回収分だけで毎年(推定)数十万頭にのぼることを前回の記事に記しました。
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情⑦ 路上死が示す悲惨な実態
野良猫の数自体やその推移も把握できればいいのですが、これはなかなか難しい。
ですが面白い調査を行った自治体もありますので、紹介したいと思います。
例えば、千葉県(人口約615万人)では H20-21年の調査に基づいて飼い主のいない猫は県内全域に17万頭程度と推計しました。
(詳細は下記のサイトの「調査結果」に記載されています)
http://www.pref.chiba.lg.jp/eishi/toukeidata/koyou/inuneko.html
下関市(人口約28万人)ではH25年に実態調査を行い、屋外にいる猫の数を約7400頭と推計しました(下関市:ねこの適正飼養に関するガイドライン)。
http://www.city.shimonoseki.lg.jp/www/contents/1477880038550/files/nekogaidorain.pdf
どちらの推計も住民およそ36~38人に対して1頭の野良猫がいるという水準で、これは鎌倉・逗子・葉山での私たちの現場感覚とも合致します。
(千葉県の分析では外飼いの猫を推計して屋外の猫から「飼い主のいない猫」だけを抽出しようとしており、
詳しく見ると数値のベースは異なりますが、ここでは大まかにとらえています。)
もちろん野良猫の数の推計は相当な誤差を想定しなければならないこと、個体数の変動が大きいこと、
そして検証が難しくさらに推計のための調査の方法によっては定期的に実施するのは現実的でないなどの理由から、
行政の施策を決定・評価するための指標としては最適でないかもしれません。
しかしこうした推計値からも、地域社会には膨大な数(おそらく大方の人の想像を超える数)の野良猫がいて、
それに関連する問題が日々発生しているということは想像できます。
保健所や愛護団体に苦情や相談が絶えないわけですね。
試しに日本の人口(約12800万人)に対して「36人に野良猫1頭」という係数を使って計算すると・・・
かなり思い切った推計ですが・・・355万頭という結果になります。
野良猫問題の対策としては、繁殖力の強い動物が対象なので、一定の地域全域について一気に徹底的にTNRを実施することが必要で、
そうしなければTNRの成果は繁殖の勢いにかき消されてしまいます。
要するに「やりたい人だけがやる」地域猫活動ではどうやっても解決しないのです。
活動の基盤として、すべての餌やリに不妊去勢手術を義務付ける法整備を行って繁殖を止めることが不可欠で、
これがなければ問題が終わらないだけでなく、せっかく部分的に問題を収束させても再発を防止することもできません。
人の生活環境に与える影響の観点からも動物愛護の観点からも、野良猫問題はきわめて大きな問題で、その解決は優先すべき課題です。
・・・つづく
(注)狂犬病予防法
第六条「予防員は、第四条に規定する登録を受けず、若しくは鑑札を着けず、又は第五条に規定する予防注射を受けず、
若しくは注射済票を着けていない犬があると認めたときは、これを抑留しなければならない。」
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情① 地域猫活動の状況
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情② TNRは徹底するのが難しい
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情③ TNRの徹底を阻んでいるのは無責任な餌やり
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情④ 今のままでは地域猫活動は普及しない
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情⑤ 現行法での対応の限界
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情⑥ 殺処分ゼロはゴールではない
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情⑦ 路上死が示す悲惨な実態
⑧ 野良猫問題の解決は優先課題
犬の場合は「飼い主のいない犬」という存在は法的に認められていません(注:狂犬病予防法)。
従って犬の問題は基本的には飼い主の問題(遺棄・飼育放棄・多頭飼育崩壊など)やブリーダー・販売店などの事業者の問題(不適正管理など)です。
猫にも同様に飼い主問題と事業者問題はあるのですが、犬と決定的に違うのは
「飼い主のいない猫」という存在が(望ましくはないけれど・・・やむなく)認められている点です。
ここから生じる問題がいわゆる野良猫問題ということになります。
野良猫だってもとは飼い猫だったのが捨てられたりその子孫が野良となっているのだから、飼い主問題だ!というご意見も散見されますが、
理由はどうあれ一旦野良となった以降は、不妊・去勢手術をしない無責任な餌やリがそれらを繁殖させるという問題に変わっているのです。
問題解決のためにはここを正確に理解する必要があります。
代々野良だったか元々は飼い猫だったかは問題ではなく、現在飼い主のいない猫に不妊去勢手術をしないで餌だけやる行為が爆発的な繁殖を引き起こし、
周囲の人も猫も両方苦しめる野良猫問題として表面化するのです。
不妊去勢手術をせずに野良猫に餌をあたえるのは優しい行為などでは到底なく、行き場のない猫を無数に作り出してしまう不幸の拡大再生産です。
火に油を注ぐのではなく、手術をして餌をやる、可能ならば保護・譲渡も考えるのが良識ある優しい行動なのです。
このように野良猫問題は飼い主・事業者の問題とは別に、無責任な餌やリの問題として別に検討する必要があります。
そしてこれが犬猫問題の中で圧倒的に大きな問題なのです。
私たちが抱いているイメージを図にしてみました。
H27の殺処分は犬約1.6万頭、猫約6.7万頭です。野良猫はほとんど引き取ることはありませんが、
それでもこの猫の6.7万頭のかなりの割合を野良猫の子が占めています。
こうした状況を念頭に野良猫関連の数字を見ていくと、上の図のようなイメージが描けます。
間接的に野良猫問題の大きさを示唆する情報として、猫の路上死体が自治体回収分だけで毎年(推定)数十万頭にのぼることを前回の記事に記しました。
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情⑦ 路上死が示す悲惨な実態
野良猫の数自体やその推移も把握できればいいのですが、これはなかなか難しい。
ですが面白い調査を行った自治体もありますので、紹介したいと思います。
例えば、千葉県(人口約615万人)では H20-21年の調査に基づいて飼い主のいない猫は県内全域に17万頭程度と推計しました。
(詳細は下記のサイトの「調査結果」に記載されています)
http://www.pref.chiba.lg.jp/eishi/toukeidata/koyou/inuneko.html
下関市(人口約28万人)ではH25年に実態調査を行い、屋外にいる猫の数を約7400頭と推計しました(下関市:ねこの適正飼養に関するガイドライン)。
http://www.city.shimonoseki.lg.jp/www/contents/1477880038550/files/nekogaidorain.pdf
どちらの推計も住民およそ36~38人に対して1頭の野良猫がいるという水準で、これは鎌倉・逗子・葉山での私たちの現場感覚とも合致します。
(千葉県の分析では外飼いの猫を推計して屋外の猫から「飼い主のいない猫」だけを抽出しようとしており、
詳しく見ると数値のベースは異なりますが、ここでは大まかにとらえています。)
もちろん野良猫の数の推計は相当な誤差を想定しなければならないこと、個体数の変動が大きいこと、
そして検証が難しくさらに推計のための調査の方法によっては定期的に実施するのは現実的でないなどの理由から、
行政の施策を決定・評価するための指標としては最適でないかもしれません。
しかしこうした推計値からも、地域社会には膨大な数(おそらく大方の人の想像を超える数)の野良猫がいて、
それに関連する問題が日々発生しているということは想像できます。
保健所や愛護団体に苦情や相談が絶えないわけですね。
試しに日本の人口(約12800万人)に対して「36人に野良猫1頭」という係数を使って計算すると・・・
かなり思い切った推計ですが・・・355万頭という結果になります。
野良猫問題の対策としては、繁殖力の強い動物が対象なので、一定の地域全域について一気に徹底的にTNRを実施することが必要で、
そうしなければTNRの成果は繁殖の勢いにかき消されてしまいます。
要するに「やりたい人だけがやる」地域猫活動ではどうやっても解決しないのです。
活動の基盤として、すべての餌やリに不妊去勢手術を義務付ける法整備を行って繁殖を止めることが不可欠で、
これがなければ問題が終わらないだけでなく、せっかく部分的に問題を収束させても再発を防止することもできません。
人の生活環境に与える影響の観点からも動物愛護の観点からも、野良猫問題はきわめて大きな問題で、その解決は優先すべき課題です。
・・・つづく
(注)狂犬病予防法
第六条「予防員は、第四条に規定する登録を受けず、若しくは鑑札を着けず、又は第五条に規定する予防注射を受けず、
若しくは注射済票を着けていない犬があると認めたときは、これを抑留しなければならない。」