NPO法人 湘南鎌倉猫ほっとさぽーと 活動ブログ

鎌倉・逗子・葉山で飼主のいない猫の不妊去勢手術をサポートしています。

鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情⑦ 路上死が示す悲惨な実態

2016年11月17日 | 鎌倉市・逗子市・葉山...
この記事は神奈川県の地域猫調査への回答として当会が提出した文書をベースにした連載です。

鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情① 地域猫活動の状況
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情② TNRは徹底するのが難しい
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情③ TNRの徹底を阻んでいるのは無責任な餌やり
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情④ 今のままでは地域猫活動は普及しない
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情⑤ 現行法での対応の限界
鎌倉市・逗子市・葉山町の猫事情⑥ 殺処分ゼロはゴールではない

⑦ 路上死が示す悲惨な実態

猫の路上死(路上死体の回収数)は概ね野良猫の数に連動すると考えられることから、間接的にではありますが野良猫の数や猫問題の大きさを示す指標となり、
さらに時系列で検討することにより行政の施策の効果を評価する有効な指標として活用できます。

また野良猫の事故死は殺処分よりもはるかに多く、そして即死ではない深刻な怪我も多いことからはるかに残酷です。
そうした実態を数字で示すことで様々な立場や考えの方からも繁殖防止に向けた施策や法整備に理解を得ることができると思います。

例として、大分市(人口:約47万人)の「猫の適正飼養・管理ガイドライン」に掲載されている図を紹介します。

(飼い猫も車に轢かれますが、回収される死体のほとんどは飼い主のいない猫です・・・当会の見解)

この図では猫の路上死体回収数は横ばいであることから、路上猫(飼い主のいない猫)の数はあまり変わっていないと推定できます。
市は不妊去勢手術の助成制度を開始したそうですが、このように路上死数も見ていけば助成制度の効果をきちんと評価できます。
他の自治体でも是非こうした情報開示をしていただきたいと思います。

屋内猫の飼育崩壊の状況をテレビなどで見てショックを受けた方は多いと思いますが、猫は繁殖力が強く2頭(♂1♀1)いれば3年程度で出産数は簡単に100頭を超えます。
これが屋外で行われるとカラスなどの野生動物に襲われたり車に轢かれたりして多産多死の状態になります。
生きていける頭数には限りがあるので、飽和した後は生まれた数だけ死んでいると考えられます。

自治体が回収する路上死体は全体の一部です。
また私たちは活動の中で深刻な怪我を負った猫を多数保護し治療しています。
実際には大変な悲劇が数限りなく起こっているのです。


葉山町で保護した猫:あごを骨折し左前脚が潰れた状態で見つかりました。脚は切断しかありませんでしたが、現在はフォスターファミリーの家で元気に暮らしています。

以前の記事でご紹介した路上死体回収数は以下の通りです。
参考:当ブログ8/12「猫の路上死」(青字部分が引用)
藤沢市(人口約41万人):847匹(啓発パンフレット、H26年情報)
静岡市(人口約72万人):約1800匹(動物指導センターHP)
大分市(人口約47万人):2631匹(大分市猫の適正飼養・管理ガイドランH25年情報)
沖縄本島(人口約139万人)2684件(沖縄タイムズ、2015年度、本島の国道・県道のみ。離島や市町村道を加えるともっと多いとのこと)

「藤沢市の人口:路上死数」の比率で神奈川県(人口907万人)の路上死数を推計すると約18,700頭/年になり、一日あたり50頭以上が車に轢かれて死んでいる計算になります。


その後も以下の報道(猫の路上死体回収数)がありました。
福岡市(人口約146万人):約7000頭(西日本新聞2016年09月29日)
盛岡市(人口約30万人):480頭(毎日新聞2016年10月24日、2015年度)
下関市(人口約28万人):674頭(毎日新聞2016年10月30日、2014年度)

このような水準で路上死が確認されているということは、人口比で計算すると日本全体では少なくとも数十万頭の猫が毎年交通事故で死んでいるはずです。

H27年の猫の殺処分数は約6万7千頭まで減少しています。(環境省:犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況
しかしながら、年間数十万頭の猫が殺処分よりもはるかに残酷な状況で死亡しているということはあまり知られていないのではないでしょうか。
これはもちろん猫にとって不幸なことですが、人の住環境としても動物が無残な死に方をしている地域社会は決してよい環境とは言えません。

人間が作り出したペット種である「イエネコ」を野良猫として外で繁殖させ、行き場のない猫を周囲に大量に供給し、
それを路上でひき殺したり殺処分にしたりしている状況はなんと残酷なことでしょう。

野良猫問題は一般に認識されているよりもはるかに残酷で深刻な問題です。
動物愛護の観点からも人の生活環境の観点からも、早急に解決を要する問題です。


そのためには不妊・去勢手術をしない無責任な餌やリを抑止する法整備が不可欠です。


・・・つづく