「奇跡だ」「神様が守ってくれた」乳児の救出に歓声 熊本地震
西日本新聞 4月15日(金)14時4分配信
がれきの中から赤ちゃんが奇跡的に救出されると、住民は歓声を上げた。九州で初めて震度7を記録した地震から一夜明けた15日、被害が集中した熊本県益城町では救出作業が本格化した。激震の傷痕は生々しく、自宅が倒壊し、家族を失った住民は、ぼうぜんと立ち尽くした。余震が続く中、避難所で眠れぬ夜を過ごしたお年寄りは「生きた心地がしない」と疲れをにじませた。
「奇跡だ」「神様が守ってくれた」。14日夜に震度7の激震が直撃した熊本県益城町。地震発生から約6時間後、近隣住民が祈るように見守る中、同町安永の崩れ落ちた民家から生後8カ月の女児がほぼ無傷で救出された。
女児は発生時、木造2階建て民家の1階寝室にいた。地震で2階が崩れ落ち、1階は押しつぶされた。「娘が取り残されている」。通報を受けた消防隊員や警察官が現場に駆けつけた。
女児の祖母によると、あっという間に家が崩れ落ち、女児が取り残された。大声で名前を呼ぶと泣き声が聞こえたが、がれきに阻まれた。母親ががれきの隙間から手を伸ばすと、女児の手に触れることができた。
やがて到着した消防隊員が声が漏れ聞こえるポイントに穴を開け、中に入ろうと試みたが、強い余震が続き断念した。時間がたつにつれ、泣き声が聞こえなくなり、母親は取り乱した。
消防隊員と警察官が手作業でがれきをかき分け、自衛隊がチェーンソーを使ってがれきを除去。15日午前3時半ごろ、捜索隊が崩れた柱と柱の隙間にいた女児を救出すると、「ワーッ」という歓声が上がり、しばらくの間拍手が鳴りやまなかった。
女児は元気で、母親が抱き締め、「家族みんなで泣いた」と祖母。「(救出中は)生きた心地がしなかった。助かって良かった。それだけです」。祖父は喜びをかみしめるように語った。
同町木山の倒壊した住宅兼教会では同日午前2時15分ごろ、崩れた2階の窓から毛布に包まれ、担架で運ばれる女性の姿があった。
牧師の豊世武士さん(70)の長女、美文さん(32)。シャワー中に地震に遭い、浴室に約5時間閉じ込められた。武士さんは「ずっと祈っていた。よく頑張ったと言ってあげたい、本当に良かった」。
同町寺迫のアパートでは、暗闇の中で「助けて、助けて」という女性の大声が響いた。2階に住む岩下喬子さん(70)は地震発生時、自宅でテレビを見ながらうとうととしていると、いきなり突き上げるような衝撃を受け、気付くと1階に落ちていた。
隣に住む60代の男性が「大丈夫か」と声をかけ、バールで窓をこじ開けてくれたため、はい出るように外に出た。岩下さんは「命が助かってほっとした」と興奮した様子で語った。