NHKの100分で名著のテキストです。
原作は難しくて
多分読めそうにないので
入門書として読んでみました。
以前、ホロコースト関連の本を立て続けに読んで、その恐ろしさを実感したわけですが、
そもそも、何でこんな事になってしまうのでしょうか。
ドイツのナチズムにしても
ロシアのスターリニズムにしても、
戦時中の日本にしても
後になれば「おかしい」と思うような
この全体主義というものは
いかにして起こり、
なぜ誰も止められなかったのでしょうか?
そのおおもとには
大衆が深く関わっており、
大衆の危機意識や不安が
わかりやすい強力なリーダーシップを求めてしまうとありました。
現代にも当てはまります。
ユダヤ人を絶滅収容所へ移送したナチス親衛隊中佐のアイヒマンは、
どれだけ残虐な悪人かと思いきや
組織内での自分の昇進に熱心なだけの凡人だったと書いてあります。
思考を停止して、自分の仕事を淡々とこなした陳腐で凡庸な人。
裁判では、「法に従っただけで、自分は悪くない」と淡々と語ったとのこと。
アイヒマン裁判の翌年
ミルグラム実験という心理実験が行われ
ごく普通の人が、誰でもが、アイヒマンになりうるという事がわかったそうです。
一方で
アンネフランク一家を命がけで匿ったミープヒースのような人も、
決して少なくなかったと、
別の本に書いてありました。
自分は特別な事をしたのではなく
人間として当然の事をしただけと。
あの暗黒の時代を考える上で
光明のさす思いがします。
この生き方の違いは何なんでしょうか?
ちょっとこの冊子からは、
話が逸れてしまいました。
この全体主義というものは、
まず、仲間はずれをつくり、
それに気づいた無関心だった人が
自分が仲間はずれにされないように
なるべく中核に近いところへ寄る事で
安心する。
という「いじめ」と同じ心理状態ならしい。
私たちが生きる今の時代がそうならないように、
また、そうなってしまって究極の選択を迫られた時にどう行動するのかなど、
考えさせられます。
「考えることをやめるとき、凡庸な『悪』に囚われる」
ぜひご一読を!