Blue Blanket

留学、永住、看護学博士取得、そして今は医学系翻訳者。暑さと虫嫌いの酒飲み女が、熱帯のケアンズでどう生きる!?

どうしたオーストラリア

2012-12-09 | ケアンズ生活
オーストラリアのラジオ局がイギリス王室に仕掛けたいたずらのせいで、自殺者が出てしまったことが世界中で大きく報道されていますね。

今回はシリアス&ちょっと長いお話になります。


簡単に概要を説明しますと・・・

イギリス王妃キャサリンがつわりのため入院していた病院に、オーストラリアのラジオ局のDJふたりがいたずら電話をかけ、女王と皇太子になり済ましてキャサリンの病状を聞き出しました。結果、その内容はラジオで流され、YuuTubeなどを通じて世界中に広まりました。
ラジオ局は史上最大の王室へのいたずらに成功した!と誇ってさえいました。
そのいたずら電話を取り次いだ看護師と、病状を話した看護師がいるのですが、取り次いだほうの看護師が職員寮で自殺していたのが発見されました。


ということなんですが。



まず、偽の電話で患者の病状を聞き出そうとすること、これは違法ではないの?
これについては今のところ大きく問題視されていないのが逆に不思議です。


自殺した看護師は40代で子供がふたりいる女性とのこと。名前から察するにインド系の移民でしょうか。
病院側はこのいたずら事件で彼女を責めたりせず、むしろサポートしていた、と話していますが・・・
本当のところはどうなんでしょうね?


ラジオの様子はちらっとしか聴けていませんが、ふたりのDJは完全に調子に乗っていたというか、
「こんなひどいアクセントで気づかれないわけがないよね~」みたいなことをおもしろおかしく話していました。
実際、ふたりの演技(?)を聴くとそれはひどいものです。


でも、王室から電話がかかってきて、それを最初から「本当に女王様ですか?」と疑えるでしょうか。
本当に女王様だったら、失礼があっては大変だ、と舞い上がってしまうのが人間ではないでしょうか。
ラジオで流されたのは、電話を引き継がれた看護師のほうの説明でしたが、彼女も声が震えている様子からものすごく緊張して話しているのがわかりました。


ましてや、その看護師がもし移民であれば、電話での会話でアクセントに気づかなくても仕方がないと思います。
電話で直接女王様と話したことがある人なんでめったにいないでしょうしね。


それを、ふたりのDJはバカにして大笑いしていました。
これは個人的な感想ですが、この看護師はもしかしたら責任を感じて、というだけではなく"humiliated"、「屈辱を受けた」とも感じたのではないでしょうか。


オーストラリアに移住して10年以上経つ私も、面と向かってはあまりありませんが、「あ、バカにされてるな」と思う瞬間は数えきれないほどあります。
多くの人は差別意識はないでしょう。基本的にオーストラリア人はおおらかでいい人が多いです。でも、おそらく思っている以上の人が差別意識は持っているけどうまく隠しているのかもしれない、と感じます。


それは肌の色だったり目の色だったり、言語の違いだったり。

日常会話には不自由しなくなった今、逆に相手の反応や言葉遣いから感じることも多くなった気がします。



話がちょっとズレましたが、実はここオーストラリアではこの事件に関してふたりのDJを擁護するかのような世論も出てきています。
確かにふたりは非常にショックを受けているようで、専門家によるカウンセリングがすすめられているそうです。


でも、子供じゃないんだからちょっと考えればわかりますよね。
本当にそれが「ささいないたずら」なのか。
王室を持たないオーストラリアの人間が、関係の深いイギリス王室(オーストラリアではイギリス女王の誕生日は祝日です)のプライバシーを侵害するような悪ふざけをして、問題にならないとでも思っていたのでしょうか。


言葉は悪いですが、「バカ」としか思えない・・・
ショックでもなんでも、自分たちがいかに浅はかだったか反省して、やってしまったことの大きさを受け止めるべきだと思います。




ここで話を「人種差別」に戻します・・・


少し前に大きな話題になったニュースがあるのですが、メルボルンの公共バスの中で歌を歌い始めたフランス人女性旅行者に対して、複数のオーストラリア人が暴言を吐いて威嚇していた様子が、録画されていてYoutubeで流されたのです。


子供をふたり連れた白人カップルと、同じ社内にいた男性。
画像を見ましたが、かれらは憎悪をむき出しにした顔で「英語を話せ!話せないなら死ね!」「この社内の全員がお前らを殺したいと思っているぞ!」などなど他にも聞くに耐えないような暴言を怒鳴り散らします。


バスを降りた後も外からバスをたたいたりして、他の乗客を恐怖に陥れていました。


脅されたフランス人旅行者は、「本当に殴られると思った」と話していますが、「この一件だけでオーストラリア人を判断しようとは思わない。親切な人もたくさんいた」とも言っているそうです。



このニュースが流れてしばらくは、テレビでもみんな一様に「オーストラリアの恥だ」「なんというひどい差別だ」などと批判の嵐でした。
彼らの憎悪に満ちた顔もしっかり放映され、新聞にも載り、彼らに心当たりがある人はご一報を、なんてやっていました。
脅しかなにかの疑いで警察も動き出したと報道がありました。


でも、その後大きな動きはないままこの件は早くも忘れられてしまったようです。


彼らはどうみてもその辺にいる一般市民ですし、酔っぱらってもいたようです。
おそらく社会的制裁は受けただろうからもういいか、という感覚なのでしょうかね。


それにしても、私はそのカップルが連れていた子供(3~4歳の男の子)の表情が忘れられません。
怯えたような、固まったような。


あんなひどい暴言を、公共の場で、しかも子供の前で吐くような人間ですから、ろくな親ではないのだろうな。
そんな人間に育てられる子供もまた人種差別者になっていくのでしょうね。



というわけで、最近続けて起きたショッキングな事件。
多民族国家であるオーストラリアは、国際意識も強い国です。
そんな国が、大きさは違えど国際的な問題を立て続けに起こしたのだから、もっと深刻に、真剣にとらえるべきだと思うのです。


こういう問題に関してだけは、持ち前の「まあ、いっか」というお気楽さは封印して欲しいものです。