坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ゴヤ展「魔女たちの飛翔」

2011年06月24日 | 展覧会
この秋開催される「ゴヤ」展は、光と影をテーマに18世紀から19世紀へと時代の変革期に生きたゴヤ自身の内部に抱えた光と影を交錯させて作品を浮かび上がらせます。
前半生のロココ風の宮廷画の華やかな作品群から後半生にいたると人間の暗部と真実を暴く作品へと変貌していきます。時代はスペイン王国へのナポレオン侵攻による独立戦争の勃発、そして46歳のとき思い病を患い、聴覚を失うという過酷な運命を背負います。
・掲載作品「魔女たちの飛翔」1798年。優雅なイタリア風な雅宴画とは対照的な、暗黒や不条理を描いたもう一つのゴヤの世界です。尖がり帽子をかぶった3人の魔女が若者を抱え、闇の中を上昇していきます。地上では、一人の男が地面に伏せ、もう一人は白い布を頭から被って、拒絶のポーズをとっています。ゴヤは主観的な情熱を作品に託した点でロマン主義美術の先駆者であり、己の人生の課題を制作に直接に反映させた点で、芸術の近代化を進めた最初の芸術家と言えるでしょう。

◆プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影/10月22日~12年1月29日/国立西洋美術館(上野公園)

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