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福井「焚書坑儒」事件のその後 ・寺町みどり/『む・しの音通信』No.58

2006年11月27日 | 『む・しの音通信』
11月25日に、「む・しの音通信」58号を発行しました。、

通信に書いた「福井『焚書坑儒』事件のその後」を転載します。
現時点の『ジェンダー図書』問題の最新情報です。


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       福井「焚書坑儒」事件のその後
                                  寺町みどり

 11月2日午前、わたしたち「福井『ジェンダー図書排除』究明原告団および有志」(以下、「原告団」という)80人が、8月29日に「福井県男女共同参画条例」第21条2項に基づいて提出した「男女共同参画にかかる県施策への申し出」を諮問する「福井県男女共同参画審議会」が開催された。
 前半は「男女共同参画基本計画の改訂について」。後半は、わたしたち「原告団」と図書の排除を求めた近藤氏側がそれぞれ提出した「苦情申出」が議題となった。
 審議会では、まず委員長が県に対してきびしい意見を述べ、他の委員からも図書撤去への批判や疑問が続出した。杉本総務部長は一時撤去は「適切ではなかった」と認め、「反省している」と何度も繰り返したそうだ。
 その後、「審議会」の諮問を受けて、「苦情申出書」に対する西川一誠福井県知事からの回答書が、今大地さんの元に届いた。回答には、「一括して図書を移動し作業を行ったことについては誤解を与える結果となり、十分な配慮に欠けていたものと反省しているところです」とある。
 11月21日、「福井県知事の回答」と、「原告団」代表として上野千鶴子さんが書いた「『ジェンダー図書排除』苦情申出への福井県知事回答に対する声明」を公表した。

 ●審議会記録「非公開」に対する異議申立
 11月21日の午前中に「声明文と知事回答」を県政記者クラブに送って、ホッとしたのもつかの間、お昼になって福井県知事から「公文書非公開決定通知書」が届いた。
 この情報公開請求は、11月2日に開催された「男女共同参画審議会の会議の記録(電磁的データ・テープなど)」について、11月6日に、「原告団」13人で情報公開請求していたもの。
 わたしは、請求時の11月6日と処分時の11月20日に、電磁的データ・テープが審議会の記録として担当課に存在していることを確認しているが、この情報は「公文書ではない」との判断で、非公開(不存在)とされた。つまり、担当職員がそれらの情報を持っているが、情報公開条例の対象ではないから、存在するにもかかわらず「(情報公開条例上は)不存在」というわけだ。
 非公開処分が決定したと20日の電話での男女参画・県民活動課の石原氏の言い分は、「紙になって決済を取ったものが公文書。紙になる前のものは、担当者個人が公文書を作成する過程のもので、テープ、データは単なる覚えというか、記録・・・」とか。「電話を記録してますけどいいんですね」と念押しすると、「できあがったものをHPに議事録としてあげる。それが公文書。過程のものは推敲を重ねるので公文書ではない」。
 審議会の議事録は、HPにアップされるので電磁的データではないのかと指摘すると、「議事録としてできあがった時点で公文書。たとえ同じ文章のデータでもアップする前は公文書ではない」んだって! もうお話にならん、という感じで・・・あきれた。
 福井県は、情報公開条例で「電磁的データ・テープ」を「公文書」と定義しており、このような違法な条例解釈はとうてい納得できない。このケースは、前に図書リストを「非公開」にした「個別問題」とちがって、きわめて悪質だ。非公開処分は、福井県が各種会議の記録に関して、このような扱いをしているということを意味する。審議会の電磁的データが公開されなければ、県が「会議の記録」を恣意的に文章化しても検証すらできない。
 担当の石原氏は当初、「テープは私物である」と主張し、処分決定時には「審議会議事録ができあがったらテープはすぐ廃棄処分する。議事録は今日明日にもアップする」ということだった。請求文書の廃棄は、重大な権利侵害となる。
 わたしたちは、電磁的データ・テープの「廃棄」を阻止するため、緊急に福井県知事に「異議申立」をすることにした。知正さんが2時間で「異議申立書」を作成し、21日付「配達証明付の速達」で知事に郵送した。「異議申立書」PDF
 翌22日午前、「異議申立書」が福井県に届いていることの確認の電話を入れ、情報公開担当の行政情報センターに「もし処分時に存在した請求文書を廃棄してたら大変なこと。情報公開訴訟だけですみませんよ。同時に損害賠償請求もすることになります」とプレッシャーをかけた。ほどなく、行政情報センターから「異議申立書を受理」「テープは破棄されていないと確認」との返事があった。

 ●北海道に飛び火したジェンダー図書問題
 ところで、全国の女性センターの図書選定基準を福井の関連で調べていたら、6月と9月の北海道議会・予算特別委員会でも「道立女性プラザ」のジェンダー関連図書と図書選定基準をめぐって、自民党の小野寺秀議員からバックラッシュ発言があったことを知った。
 北海道の場合は、県直轄の福井と違い「道立女性プラザ」は指定管理者(出資法人)。6月と9月の議会発言と関連文書を情報公開請求したら、発言の電磁的データ(フロッピー)、全国の女性センターの調査結果などが公開されたが、かんじんの現場で図書の選定をする「女性プラザ運営協議会」関連の文書はすべて「非公開(不存在)」。
 こちらは、もともと道と争うつもりはなく、「情報公開条例」「女性プラザ条例例」「指定管理者の指定の手続等に関する条例」など女性プラザ関連のルールを読みこみ、これならまちがいなく公開されるという文書を特定したので非公開は納得できない。強く抗議すると指定管理者の情報公開手続きを知らなかったと非を認めたので、仕方なく日付をさかのぼって再請求しているところである。
 委員会質疑で策定を迫られた「図書選定基準」については、北海道の人たちに呼びかけて、なんとか「要望書」提出にこぎつけた。

 ●指定管理者制度の問題点が浮きぼりに!
 「指定管理者制度」とは、ほんらい自治体が直営する「公(おおやけ)の施設」の管理運営を委託するものなので、支出や意思決定という、行政直轄なら出てくる重要な情報が出てこないのは制度上の欠陥である。
 北海道のケースでは、指定管理者「(財)北海道女性協会」の内部組織である「女性プラザ運営協議会」で実質的に女性プラザの図書を選定し支出も決めるのに、委員の選任にも道の権限はおよばない。ということは、図書選定の直接の現場がブラックボックスになるということ。指定管理者と情報公開の問題は、情報公開請求する前から予想していたが「やっぱり」という思いだ。
 「公の施設」の指定管理者の公正性・透明性を確保し法的な網をかけるために、「情報公開条例」を適用している自治体は多く、北海道は出資法人等を指定管理者と「読み替え」準用している。
 また、出資法人等の情報公開の手続きの「定め」はあるにはあったが、今回、担当課は「道は文書を保有していない」というだけで、「出資法人(指定管理者)に当該文書があるかの確認もしていない」から、要請義務も果たしていない。「道が保有していないから不存在」と単純に条例解釈されては、そもそも条文を規定している意味がない。他の自治体では不備な条文が多いうえに、条文があるから万全かといえば、解釈と運用をまちがえば、今回のような「非公開(不存在)」という処分もありうる。
 指定管理者と情報公開の問題は、次のように整理できるだろう。
①女性センターの管理運営が自治体直轄の場合-選定基準の図書の策定も、図書の選定・管理・運営も自治体がおこなうので、とうぜん自治体の「情報公開条例」が適用される。
②女性センターの管理運営が指定管理者の場合-指定管理者制度は、地方自治法第242条の2「公の施設の設置、管理および廃止」3項~11項が根拠法で、その管理運営の詳細は自治体の条例で定めることになっている。「公の施設」だからこそ、公正・透明な管理運営の確保が不可欠だが、情報公開については考えてもいないという自治体が多いのが実情ではないかと思う。
 今回のことで、今年9月を期限としてスタートした「指定管理者制度」は「欠陥だらけで見切り発車」ということが浮きぼりになった。現場の自治体は、問題があることすら気づいていない。今後、法務行政にうとい自治体の実態が表面化してくるだろう。
 基本的に、指定管理者の情報の問題は、指定管理者に関する条例や個別の協定や契約ではなく、自治体として「情報公開条例」「個人情報保護条例」で規定して担保しないと解決しない。この問題は女性センターだけでなく、全国のすべての指定管理者に関係する、大きな問題である。

 ●女性センター共通の課題 
 女性センターの図書に圧力や介入が加わらないようにするには、「表現の自由を制限する内外からのいかなる干渉も排除する」ことが必要である。そのためには、「収集の基本的態度」を盛りこんだ収集規定(選定基準)が不可欠だが、もうひとつ重要なのは、「現場での適正な運用の確保」と、「図書の選定に問題がないか市民の監視(住民統制)が届くのか」ということ。
 指定管理者の女性センターの問題は、図書選定基準だけの問題ではなく、選定委員会、個別の図書の取り扱い・貸し出し、特に個人情報保護との関係などでも、解決しなければならない多くの問題を抱えている。
 「図書選定基準」については、福井県も北海道も、いちおう「基本的態度」を盛りこんだ規定ができた。とはいえ、どちらの規定にも問題はあるので、今後は、それぞれの地域の女性たちと連携しながら、よりよいものに変えていくことが必要だ。
 この春から、女性センターの図書の問題にふかくかかわって、この図書選定基準と指定管理者の問題は、全国の女性センターの共通の問題だと思った。それだけでなく「思想・表現・言論の自由」と「知る権利」をめぐる、図書館の抱える問題とも共通であり、大きく出資法人等の問題だということもわかった。
 福井や北海道で起きたことは、全国どこでも起こり得ることだ。問題は起きてからでは解決するのがめんどうになる。全国の女性センターの問題にかかわる人たちが、先手必勝で、よりよい図書選定基準をつくり、公正で透明な運営をはたらきかけることができれば、かくじつに、女性センターに対するバッシングや介入はしにくくなるだろう。まだまだ先が長くなりそうだけど、頼もしい仲間も多い。福井や北海道の経験を生かし、楽しみながら、しつこく取り組んでいきたい。
(「む・しの音通信」No.58より転載)
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