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堺市立図書館「特定図書排除」事件の特集2/福井「焚書坑儒」事件、その後の経過

2008年12月11日 | 『む・しの音通信』
『む・しの音通信』68号の堺「特定図書排除」事件の特集のつづきです。

堺市民の加藤伊都子さんと「む・しネット」会員の呉羽まゆみさんの記事と、
「福井「焚書坑儒」事件、その後の経過」ということで、
先月の「東大ジェンダーコロキアム」集会報告の菅井純子さんの記事です。

あわせてお読みください。
堺市立図書館「特定図書」排除事件
「やめとき」ではなく「やめとかない」精神で
                 フェミニストカウンセリング堺・加藤伊都子


 職住ともに堺市民の加藤です。9月21日、「堺市図書館の書架から5499冊の図書が消えた!」という寺町みどりさんのML投稿で今回のできごとを知りました。その投稿には「わたしたちといっしょに行動したいという堺市在住の方は、ご連絡ください。」とありました。とりあえず、「本の名前だけでも教えてもらおう」とみどりさんに連絡を取り電話で話をしました。それが9月27日。そのときの話で、まずは監査請求をする堺市在住の市民が必要だということで、結局は自分がなるのですが、監査請求人として名前を出してくれる人を探し始めました。
 なぜ、名前を出してくれる人を探したかと言うと、この件について相談した中の数人から「やめとき」と言われたからです。「監査請求人になってもいいけど、名前を出すのはやめとき」と。理由は、仕事にさわる、仕事仲間に迷惑がかかると。(仕事はバックラッシュの人々が大嫌いなフェミニストカウンセラー。彼らの言によると、国家転覆、家族破壊を企んでいるということになるのですが、DV被害者、セクハラ被害者の支援もしています。) 
 忠告を受け、「誰かいないかな」と探し始めたのですが、誰も引き受けてくれない。今にして思えば「私はしないけど、あなたがやって」ということなど誰も引き受けないのは当然のことでした。そのうちに、説明をしたり、頼んだりするのが面倒くさくなってきました。まず図書館への攻撃の意味が言葉を尽くさなくてもわかり、できれば福井や松山で起こったことを知っていて、BL(ボーイスラブ)、少なくとも「やおい」くらいはわかる人、となると、そうはいない上に、同じ堺市民になぜ私が頼まなければならず、しかも断られなければならないのか、自分がやったほうがよっぽど簡単だと思い始めたのです。
 そこで改めて、「やめとき」という言葉について考えました。最初に思いついたのは、私たちが大事にしたい人は図書館攻撃をしている人々と意見を同じくする人たちではないということでした(何て当たり前のことを、と書きながら思います)。私たちを支えてくれているのも、仕事をくれているのも、その人たちではない。そして私たちとつながっている人は、図書館への攻撃を放置してもいいとは思わないだろうということでした。でも自分がやるとなると話はまた別で、「誰かがやるならお手伝いはします」と。この辺が正直なところなのだろうと思います。実際に、私たちが「やります」となってからは、短い期間、仕事をしながらにもかかわらず、賛同人等はそれほど苦労せずに集められました。
 そしてもう一つ考えたのが「仕事にさわる」というほどに彼らは厄介な存在なのか、ということです。確かに図書館にとっては厄介な存在になっていますが、さきほども書いたように、彼らは私たちの顧客ではない。「フェミニストの陰謀」などという言葉には「ンな大げさな」と思いますし、ネット上での執拗さには辟易しますが、それと力があるということは別です。「やめとき」という忠告を受け入れて、彼らの主張を放置すれば、あたかも彼らに力があるかのように見えてしまいます。たとえばネット上には「抗議のビラを図書館前で手分けしてまいた」とありますが、実際にはビラはまかれていません。声をあげ、話し合い、情報交換をしなければ、ネット上に書かれたビラまきは事実になってしまいます。そしてそんなに人数がいるのか、そんなに行動力があるのかと、ますます「やめとき」と言う人がふえることになります。この「やめとき」につながる心性、トラブルを避ける心性が今回の事態を招いたひとつの要因ではなかったかと思います。
 こういうやり方に対抗できるのは、「やめとき」ではなく、みどりさんたちのやり方、「やめとかない」(変な日本語ですが)精神と「すべてを明るみに」精神で行くしかないと、改めて思います。現在、私たちは「『ジェンダー図書排除』究明原告団」の方々のもと、「やめとかない」精神と「すべてを明るみに」精神とを学習中です。
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特定図書排除問題に対し、私が行動する理由
                木津川市・呉羽まゆみ


 「『ジェンダー図書排除』究明原告団」の1人である私が、堺市の出来事を最初に聞いたのは、9月5日だった。その内容は、「BL(ボーイズラブ)関連書籍が開架を中止し書架に移され、処分される予定」というもので、「冊数5499冊、購入金額366万8883円」(市のホームページ「市民の声」)ということであった。一報を聞いて、最初に私が感じたことは、「福井県、北海道に続いて今度は堺か、今回は女性センターではなく図書館が狙われたか、しかも青少年にとって悪影響を与えるのでともっともらしい理由がつけやすい本を指定しているのはなんとも巧妙な」、そんなところだった。私は、今回話題になっているBL本の存在を知らなかったし、今も読んでいない。それゆえ、今回の事件(あえて事件と呼びたい)の本質がかえって鮮明にわかるように思う。
 そもそも図書館とは、国民の知る自由を守り、広げていくことを責務として、あらゆる資料の要求に答えるべく、みずからの責任において作成した収集方針に基づいて資料を収集し、提供する自由を有する。その際、個人・組織・団体からの圧力や干渉に屈してはならないと「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会・1954採択)にうたわれている。堺市図書館に対して私が直感的に感じた疑問は、「BL本がなぜそんなに多くあったのか」ではなく「なぜそんなに急に処分が決まったのか」であり、個人もしくは団体の圧力に屈し、混乱したと思われる図書館の姿勢に対するものであった。
 後日、バックラッシュ側の掲示板で知ったのであるが、匿名市民本人が書き込んだと思われる書き込みに、「市議会議員さんに、このBLの一件を伝えた」「その議員さんが動いてくれ」「市会議員さんからも、結果について連絡があり~BLを書庫へ収納するとのこと」などの記述を見るにつけ、私の中での疑問はゆるぎないものとなった。つまり、議員の圧力・介入の存在を確信したと同時に、Webを通して煽動するこのような手法を私の感覚は受け入れられないと、自分の疑問点の整理ができたのである。
 議員が、執行機関である行政に議会以外で意見を言ったり質問したりすることはある。その際、受け取る側が「堺市立図書館資料収集方針」に基づき対応したなら、問題は拡大しなかったはずである。しかしながら、今回は、最初は匿名市民(市民かどうかは不明)からの電話で始まったものの、議員への働きかけ、議員の行動に対して、堺市の対応が個人や議員の圧力に混乱したといえる。その後、Web上でこれらの経過や報告が一種煽動的に扱われ、組織的な図書排除運動が展開されていることが明らかとなるにつれ、図書館本来のあり方が問われる問題に発展しているにもかかわらず、堺市の意識は希薄とさえ感じた。もし、我がまちで起こったらと考えると、これはほってはおけないとの思い、他市のことであっても問題が明らかになった以上、議員という立場でできることをしたいとの思いでいた。
 この件に関して、不当な公金の処分の差し止めを求めた「住民監査請求」の提起とは別に、何かできることをということで、「原告団」事務局のみどりさんたちと相談をして、堺市長・教育長に「堺市立図書館における特定図書排除に関する申し入れ」をすることになった。第1次申し入れ人は、41人の議員(元・前職含む)と2団体。自分の自治体でもいつ起こるかわからない問題について、図書館の責務を整理し、考えた人たちによる一致した行動であった。議員による、個人や議員の外圧にうろたえ今まさに市民の知る権利が押しやられようとしていることに対する抗議、福井事件も今回の事件も、相手側の目的はジェンダーバッシングであると感じるから、反動勢力の好き放題にはさせない、そんな思いでの行動であった。
その後第2次を追加し、第1次と合わせた申し入れ人の合計は、市民97名・議員46名・7団体に。代表の上野千鶴子さん(東京大学大学院教授)に届いた堺市教育長の回答は、「廃棄が前提の処置ではない」と明記されており、ひとまず安心?かな。

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福井「焚書坑儒」事件、その後の経過 
                   原告・菅井純子

◆「控訴審」敗訴~上告へ

 「音声記録情報非公開処分取消訴訟」の控訴審判決が、9月22日、名古屋高裁金沢支部で申し渡された。結果は一審に続く敗訴。  
判決理由は「会議録作成のため職員が備忘として録音、所持していたもので公文書ではない」というものだった。原告団は記者会見を行い、代理人の清水勉弁護士が判決についての解説と問題点を指摘。事務局の寺町みどりさんが、原告代表の上野千鶴子さんのコメント「…市民の知る権利という核心を避けた判決は、まことに遺憾である。よって、最高裁に上告して、争うほかない」を読み上げた。

 ◆10月7日【東大ジェンダーコロキアム】
 次は最高裁ということで、上野さんの呼びかけにより、支援者の多い東京で「バックラッシュとジェンダー~福井『焚書坑儒』事件と情報公開訴訟」をテーマに集会が開かれた。
まず清水弁護士が今回の裁判の性格や判決の問題点を、非常にわかりやすく解説してくださった。この裁判は「公文書とは何か」が争点なのに、一、二審ともに裁判所は「管理のしかたによって公文書かどうかを判断する」という立場をとってしまった、と分析した。清水さんによると福井県の文書管理規程は全国的に見ても出来の悪いものらしい。その出来の悪い規程さえ守られていない、いい加減な管理の実態を追認する形で「公文書にあたらない」という判断を裁判所が下した。福井県民としては寂しい気分になってきたが、清水さんの「裁判官は時代の流れが読めない。また最高裁判例に盲従し行政の言うことを受け入れがちだが、最高裁は政治的判断をする。寺町知正さんが提起する問題は最高裁の琴線に触れるものがある」との言葉に元気が出る。話題は裁判官の人事異動にまで及び、ギョーカイの事情がちょっとだけ見えたような興味深いお話だった。最後は「裁判員制度が始まろうとしているが、こうした行政訴訟から市民参加が進められるべきだ」とかっこよく締めくくった。
次に寺町みどりさんが福井「焚書坑儒」事件の概要と裁判に至る経過を説明した。北海道やつくばみらい市の事件、堺市のBL本排除問題にも触れ、「行政に対する圧力という点で手法は似通っている。市民的手法を使ってどう対抗していくかノウハウを共有していきたい」と述べた。
上野さんが補足された後、寺町知正さんが「市民として直接民主主義の公的制度を使う」という観点から、情報公開請求や住民監査請求の持つ効力について具体的に解説した。岐阜県で監査請求によって公共事業の費用が大幅に下がった例が紹介され、制度を使うことで「ひとりから」でも出来ることがあると実感させられた。知正さんから「最高裁で勝てる」との言葉が出ると、すかさず上野さんが「シナリオ通りだったのね」。
続いて上野さんは、国分寺事件に始まる一連のジェンダーバッシングとその背後にあるものについて明快に語り、現在の政治状況に触れて「私たちが“モグラたたき”をするということにおいてすら、政権がどう変わるかということに一喜一憂しなければいけない。直接に末端に影響するようなところで闘っている」と話した。
その後、「原告からのメッセージ」。まず今大地晴美さんが「福井県職員が情報公開について無知なことに驚きあきれた。裁判の結果を聞いて『司法の情報公開制度に対するバックラッシュだ』と思った。なんとしても最高裁で勝ちたい」とピタリ1分で述べられると会場から思わず拍手。次に私が一県民として裁判に関わっての感想を述べた。編集者の立場から、星野智恵子さんが「福井の事件が起きた時、私が編集した上野さんの本が入っていなかったらどうしようかと思った(笑)」、藤本由香里さんは「一番最初に止めなければ次々と波及してしまうと危機感を持った。堺市の事件も波及が懸念される」と、それぞれ思いを語った。
会場からの質問は、情報公開請求などの手法をいかに使うかという点に関するものが多かった。初めて聴いた人には、超特急かつ盛り沢山の内容だったと思うが、50名以上の参加者が熱心に耳を傾け、カンパもたくさん集まって、大変心強く感じた。最高裁からの御招待が来たら、ぜひ皆さんもご一緒に!
(『む・しの音通信』68号)



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