パーキンソン病克服大作戦
Sさん(78歳)は10年ほど前からパーキンソン病に罹り、歯科治療には奥様がタクシーに乗せて抱えるようにしてご来院なさっておられました。以前お元気でいらっしゃる時は、とてもよくお話をされ楽しい方でした。しかし、病気はそんな素敵なSさんの笑顔をも奪い年々体を動かす事もままならなくなりました。
2004年に入って、Sさんの病状はますます悪化しついに寝たきりとなってしまいました。歯科治療が中断したまま2、3ヶ月が過ぎましたので口腔内の点検のため往診を致しました。口腔内の問題もさることながら、やはり病状の悪化には目を伏せたくなるものがありました。何よりも、高齢となった奥様の介護姿は気の毒としか言いようがありません。身の回りのお世話から食事まで全介助です。よく見ると奥様の手は細かく振るえが起きており、ご主人のSさんの後を追っかけているようでした。
当院で自律神経免疫療法を導入し始めたのは2003年でした。Sさんのパーキンソン病も自律神経の乱れを整えれば改善が見られるのではと考えた私たちは、外部スタッフの鍼灸マッサージ師の大田先生と薬剤師で漢方にも詳しい大西先生とチームを組み、免疫療法の実施と服用中の薬の見直しを実施致しました。
自律神経免疫療法を週2回、往診にて行い始めると目に見えてお元気になって行くSさんの姿がありました。薬も漢方に置き換えられるところは漢方に、減らして行けるところは減らし、薬の量もうんと少なくする事ができました。うつろだった目に力がつき、全く無表情で無言だったのが少しの会話が出来るようになったのです。しかも驚く事にひと月経った頃には、もう一度来院できるまでに回復したのです。
玄米ご飯は数年前から実施されておりましたが、骨粗鬆症予防に牛乳は欠かさず、肉や魚もたんぱく質が必要と頑として菜食に反対の姿勢をとられていた奥様も、Sさんの病状の変化にやっと私たちの言っていることにウソがないと判断されたようで、少しづつ食事の改善も始まりました。奥様の貧血と冷え性は、梅醤番茶と豆味噌の味噌汁を実行する事でひと月かからずに改善され、ますます食の大切さを実感されたようでした。
現在、毎週木曜日にSさんご夫婦はご来院なさります。Sさんが診療台の上で背中を伸ばすストレッチをしている間、奥様は丹田呼吸法をされ、Sさんの呼吸法やパタカラ(口の周りの筋肉を鍛える装置)、手足の運動が済むとお二人とも自律神経免疫療法を受けタクシーで帰られます。Sさんはソックスが自分ではけるようになったりコートに手を通す事がができるようになったり、調子のいいときはおしゃべりもたくさんできるようになりました。このことは、木曜日に参加されているほかの皆さん(皆さん元気で明るいのですが本当は重病を抱えている方ばかりです)に大きな励みとなっています。
最後の最後まで諦めない、それが私たちの信条。心食道息の医療現場では様々な不思議が起き始めています。