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【書評など】ドナルド・キーン『果てしなく美しい日本』/難波先生より

2014-09-22 12:55:24 | 難波紘二先生
【書評など】
 エフロブの「買いたい新書」書評にNo.235: ドナルド・キーン『果てしなく美しい日本』(講談社学術文庫)を取り上げました。
 http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1411312898
 原題は「生きている日本(Living Japan)」で,1973年に朝日出版から出された同名書の内容を第1部とし,第Ⅱ部「世界のなかの日本文化」(1972/7講演),第Ⅲ部「東洋と西洋」(1999/10講演)が併収されている。太平洋戦争が始まった時,1922年生まれのキーンは19歳の学生でコロンビア大学にいた。東洋に関心があり日本語を習い始めていた彼は,海軍の語学学校に志願し通訳・翻訳担当兵として,アッツ島,沖縄の戦場に参加した。戦後,コロンビア大学東洋学部で日本と日本文学について研究し,日本文化を世界に紹介するのに貢献した。2012年3月日本に帰化した。
 外国人による日本論には、恥の文化を強調したルース・ベネディクト『菊と刀』、ラフカディオ・ハーンの遺作『神国日本:解明への一試論』、W.E.グリフィス『ミカド:日本の内なる力』、戦後に書かれた李御寧『縮み思考の日本人』、K.V.ウォルフレン『人間を幸福にしない日本というシステム』などがあるが、キーンのこの書はそれらに比肩する一書だ。
 著者の日本語は読むのも書くのも達者である。しかし著作の多くは英語でなされ,後に日本語に訳されたものが多い。本書も同様で,原本は1958年にニューヨークで出版されている。文庫化までに44年を要したわけだが,歳月はこの本に宝石のように貴重な価値を与えている。たとえば第Ⅰ部第4章「日本人の一生」では,1950年頃の平均的日本人の幼年時代,青年時代,就職,結婚,家庭生活,日常の楽しみ,老年と死について述べてある。書かれている日本人の生活様式がすっかり変わってしまったのに驚くだろう。
 「日本では子供は生まれて最初の何年間をほとんど母親の一部として暮らす」。「子供が空腹になれば,場所がらも気にかけず,ただちに乳房を吸わせる」。「多くの子供たちにとって,教室ははじめて経験する西洋式の建物である。彼らは慣れ親しんできた畳ではなく,テーブルと椅子に適応しなければならない」。「男にとって,最初の職業はもっとも重要であるばかりか,恐らく生涯の唯一の職業となる。多くの場合,彼は老いて働けなくまで同じ会社にとどまる」。「青年がよい職を見つけて無事に落ち着くと,両親は彼のために適当な妻を見つけて欲しいと人々に頼み始める。…仲人が青年にふさわしい配偶者を見つけると,双方の家族は書類を交換し,この結合がお互いにどのような利益となるかを念入りに量り合う」。こういった光景は1960年代以後の高度経済成長と90年代の「バブル経済破裂」後の企業再編の過程で,すっかり消失してしまった。
 「今日でも,大部分の日本人にとって,他人は存在しないに等しい」。「西洋では,ふつう家族や友人よりも他人を気にする」。「日本の習慣は正反対である。他人の前ならば,何をしてもかまわない」。満員電車の中で,優先席を占拠して友人たちとケータイのゲームに興じている中学生の一団を見かけた人は「変わらない日本人」に気づくだろう。
 この本は日本人の規範意識の根底にまで切り込んでいる。
=献本お礼=
 「医薬経済」9/15号の恵送を受けた。厚くお礼申し上げます。藤田編集長の「時感:新しい金型という雑誌末尾のコラムに、ある経済誌編集者の話として「もはや20歳代以下だけでなく、30歳代もそうかもしれないが、新聞も雑誌も読まない。月給が20万円台でスマホ代で月1万円程度かかる状況では、読者になりようがない。」とあって、驚いた。これに今回の「朝日スキャンダル」が重なると、新聞読者はますます減るのではないか。
 雑誌メディアの「朝日叩き」を「BEHOLDER」という医薬経済社の企画コラムが取り上げていて参考になった。
 http://www.risfax.co.jp/beholder/beholder_list.php
 三山喬氏がいうように、週刊誌2冊で900円、月刊誌3冊で2,700円とずいぶん高くなったから、雑誌で「朝日問題」をフォローするのも大変だ。
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1 コメント

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Unknown (Mr.S)
2014-09-22 13:11:13
西洋は西洋、東洋は東洋である。
であるから日本は日本で良いのである。
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