日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

物語が終わる、北海道新幹線

2015-12-28 23:10:26 | 旅日記
北海道新幹線の開業に先立ち、列車を止めての切り替え工事が年末年始に迫る中、あらぬ所で列車が止まってしまいました。函館本線で起きたトンネル火災のためです。
列車の通過時ではなかった以上、「事故」ではなく単なる「事象」と捉えているのでしょうか。道内一の大幹線が、年末年始の繁忙期に二日も寸断されるという異常事態にもかかわらず、公式発表は「設備点検」の一点張りでした。今日の晩になってようやく「トンネル内出火」の表記に変わり、明日午後以降の復旧との見通しも出されたものの、詫びの言葉の一つさえ見当たりません。もはや不信感を通り越し、北海道の鉄道がここまで疲弊しきった現状に対して、ただ愕然としています。
車両火災、脱線事故に続くこの始末。車両も線路も構造物も満身創痍の事業者に、新幹線を走らせる能力が果たしてあるのでしょうか。このような現実が蔑ろにされたまま、来春の開業がなし崩し的に進められる現状に、「新幹線至上主義」の歪みを見せつけられたような気がしています。

北陸新幹線の開業を控えた最後の冬、金沢駅の懸垂幕は「新幹線が春を連れて、やってくる」と高らかに謳いました。その新幹線が開業したとき、かつての北陸本線には草木も生えない沈黙の春が訪れました。それから一年の時を経て、北海道新幹線開業の公式サイトは「物語がはじまる、北海道新幹線」と謳いますが、今回はさしずめ「終わりの始まり」といったところでしょうか。
青森までの料金に数百円追加すれば渡れた函館まで、新幹線の開業後は四千円もの料金を徴収されるようになります。それでいながら実質的な短縮効果がほとんどない現状では、北海道に列車で渡る機会が激減するのは当然というものです。過去三度にわたり決行し、酷寒期の恒例行事となりつつあった北海道への汽車旅も、来季以降はどうなるか分からなくなってきます。料金が高額化するという問題以前に、そもそも北海道の鉄道がいつまで存続するかが覚束なくなってきたからです。虎の子の新幹線だけ残し、在来線は大半を廃止の上切り離すといった無思慮な政綱も、この調子なら近い将来現実味を帯びてくる可能性は少なからずあるでしょう。
新幹線の開業前に、あと二回北海道に渡るつもりでいます。現地の列車たちがそれまで無事走り続けてくれることを願う次第です。
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