終戦記念日だからというわけではないが、岩波ホールへ『ヒロシマナガサキ』(原題は white light / black rain: The Destrustion of Hiroshima and Nagasaki )を観にいく。広島と長崎の被爆者たちのモノローグを中心に、原爆投下に直接関わったパイロットや技師らアメリカの当事者たちへのインタビュー、戦争当時の日米のニュース画像、戦後のアメリカ当局が記録したカラーフィルムやTV番組などを織り交ぜつつ構成されたドキュメンタリー映画である。
被爆者たちの怒りや悲しみは、そのまま原爆を落としたアメリカへの、あるいはもっと早く戦争を終結させなかった日本の戦争指導者への敵意や憎悪として表れるというわかりやすい図式に当てはめてしまいがちなのだが、ことはそう単純ではない。例えば、ある被爆者の女性が、原爆投下機に搭乗していた兵士について「あの方もとても苦しんでこられたということがわかったから(彼を恨んでいるというわけではない)」とコメントするシーンがある。
一方で、被爆当時十歳だった別の女性(妹も生き残ったが後に自殺)は、終戦後の広島に来ていたアメリカ兵たちに「なぜ、私たちの母を、姉を、兄を、兄弟を、何も悪いことしていないのに何で殺したんですか、と言いました。でも、日本語ですから相手に通じなかったと。ただニコニコ笑ってらっしゃたんですけど、返してくださいと叫びました」と回想している。
どちらのことばにも嘘はない。
お盆中にもかかわらず(であるがゆえに、と言うべきか)大入りで、開場時間の二十分ほど前には入場制限されていた。意外だったのは、観ていて辛くなる場面が多い映画なのに、明らかに二十代前半くらいの若い女性の姿が多かったこと。ざっと見て観客の三分の一くらい、それもごく普通の今どきのお洒落な女の子たちだった。女性誌か何かで紹介していたのだろうか、理由はよく分からないが、何となく明るい気分になった(もちろん市民運動家が観たっていいんだが、それだけじゃあまり発展性がないからね)。
映画のパンフレットによれば、監督のスティーヴン・オカザキ氏は、一九五二年ロサンゼルス生まれの日系三世。Days of Waiting(1991)でアカデミー賞短編ドキュメンタリー部門を獲得しているほか、受賞歴多数。ヘロイン中毒患者からアメリカの酪農産業主催のミスコンなど多岐にわたる題材を扱ってきた。原爆を題材にしたドキュメンタリーもSurvivors(1982)、The Mushroom Club(2005)など何本か制作しているとのこと。