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もじもじ猫日記

好きなこといっぱいと、ありふれない日常

巡礼~橋本治

2015-08-26 23:07:55 | BOOK
男はなぜ、ゴミ屋敷の主になったのか?
~戦後日本を、生真面目に、ただ黙々と生きてきた男が
最後にすがったのは、「ゴミ」という名のなにものかだった。~
(帯文)

図書館本。
文庫にならないかな~、と思っていた一冊。
2009年の作品だが
最近TVで取り上げられていることの先取り。


近隣に迷惑がられながら
敷地いっぱいにゴミを積み上げる老人。
戦時下に少年時代を過ごし
敗戦後は
商店の長男として見習い奉公にいくという
当たり前のレールだった生き方が
豊かになって変容してゆく社会の形に沿えずに
しかし、疑問をもたず古いレールを進んでいった
愚直に生きていった男。

商いが世間から必要とされなくなり
家族が欠けていき
世間とのつながりが切れ
喪失を抱えていることを自分では感じられないまま
ゴミを拾ってくる行為で
なんだかわからない暗い深い闇を埋めていたのだった。


新興住宅地の住人の心の寸断。
何かは役所や誰かが解決してくれるはずではないか、という傲慢。
何も解決してくれないマスコミ、
何を見たいのか見物にやって来るヒマな人々
心を病む隣人。

ゴミ屋敷の住人の内面を探ろうとする人は皆無だ。
現実もそうだろう。
しかして、彼にも心はあるのである。

忘れられたワルツ~絲山秋子

2015-07-19 20:40:38 | BOOK
短編集。

絲山秋子の作品は8割がた読んでいる。
日常から少しずつずれてゆく不条理な話が多いかな。
決して読みやすくはないけれど、
文体が好きなんだと思う。


「恋愛雑用論」
~恋愛とはすなわち雑用である。不要でなく雑用である。
 雑用は雑用を呼ぶ。仕事でも家のことでもなんでもそうだと思う~
この書き出し
うひゃ~『それを言っちゃあおしまいよ』
恋愛至上主義のヒトを見ていて
思考回路が違うのだな、と思ってはいたが
~不要でなく雑用~
こっちにピンときちゃうのだな、ワタシ。


「NR」
直帰のことをノーリターンでNRと書く人はいたな。
会社の仕組みや慣習に違和感をもったことのある人には
無茶苦茶怖い話。
空間がゆがんだのか竹の花が呼んだ悪夢なのか
営業に出たはずがわけのわからない町についてしまった二人の男。
『NRー戻らない』と会社の予定表に書いてきたことの
恐ろしさに気が付く。


7編すべて面白かった。

衣にちにち~群よう子

2015-06-10 23:37:25 | BOOK
そうそう!
読みながら膝を打ちそうになった。

好きだった色のシャツが顔映り悪くなったり
パンツやスカートのサイズは合っているのに
シルエットが
『こりゃいかん!』だったり
本体が年代ものなので古着がぴみょ~になる。

だから、
最近流行ってるシャツの裾を結ぶとか~
大きめサイズをベルトでブラウジングとか~
20代が着てるのが可愛くても
『昔着てた着てた』なんて間違えちゃうと
かなりヤバいオバさんになるのね。
友人で一人キケンさんがいるよ。

年齢的に洋服屋選びが難しいのはここ何年か感じてるが
『着るものなんかどーでもいいわ。あはは』
というおばあさんにはなれる気がしないしな。


洋服の生地に季節感が無くなったことに対する違和感や
靴はサイズが合ってないと値段に関係なくカッコ悪い
そういう感じは群さんに年代が近いからでしょうが
オシャレのキモだと思うところだ。

20代の頃にえらく年上の友人に
「懐かしい雰囲気の服だねぇ」と言われたときに着ていたのは古着で
「××子さん着ませんか?古着」と答えたら
「だってそういうの流行ってる時に着ていたもの」
そう言われた意味が、今痛いほどわかるのでした。

まひるの散歩 ~ 角田光代

2015-04-30 20:43:32 | BOOK
お出かけ時に
『うわ、本がない、読むものがない!』
本屋で値段と相談買い。
なにせ活字中毒なので、ついこないだは
シャロやんが表紙の週刊サンデーを買っちまいましたよ、
ほんの30分の時間つぶしに。


角田光代は、小説がなかなか肌に合わないのだが
エッセイは好き。
友達になりたい、一緒に酒飲みたい
エッセイを読むとそう思い
小説を読むと
この人の書く人の悪意は本当過ぎて嫌だ。
仲良くなれないと思う。
さすが作家である。

オレンジページの連載をまとめたものですが、
~自分が猫を飼うまで、猫はみんなおんなじ顔をしていると思っていた~
ああ、そうかも~。
でもね、
丸顔、平べったい顔、情けない顔、きりっとした顔、おまぬけさん、べっぴんさんなどなど
みんな顔が違うのよ。
そして、大概は
『うちのコ(猫)が一番かわいい』と猫飼いは思っているのさ。

この本じゃないけれど、
対談の仕事を忘れてジムに行ってしまい
ハンドドライヤーに頭を突っ込んで乾かした!!
というエピソードを電車の中で読んでしまい
笑い出してしまったことがある。

結構おまぬけさん、角田さんちの光代ちゃん。

世界で牛豚が肉になる手順 

2011-03-10 23:30:32 | BOOK
要約するとそういう内容のルポルタージュ本を読みました。
タイトルを書くと面倒な人が来そうなのだな。
イラスト入りで面白く、興味深かった。

何年か前に少し話題になっていた本で
作者の新作レビューで思い出し
図書館に行ったらあったんだよね。

モンゴルでお客さんに羊を振舞う手順は
元・椎名誠ファンとしてはすでに知っていることでしたが
それ以外の国(もちろん日本も)の
牛豚が肉になるまでは知らなかったなぁ。
無知なまま、おいしく食べていたけれど、
知ったらますますおいしく食べようと思えた。
国によって職業に対する差別があったりなかったり、
自宅でお肉に出来る人が尊敬されたり、
文化だもんね、何をどう食べるかというのは。

人の口に入る食べ物を作るという職業は農業もそうだけど
プライドを持ってやれる大切な仕事のはずなのに
なんでか、今ってそうじゃないよね。
農業が工業化していくのは本来の意味からずれると思うんだけどな。

肉も魚も三つ葉ももずくも
おいしく食べて栄養にしまくって生きていくぜ。


差別や人を罵ることに情熱を傾ける人は
一生そういう心根で生きてゆかないとならないんだろう。
そして、他人の心の白い部分を妬んで「お前もどす黒くなれ」と呪う。
自分の中に白い部分を作ることにエネルギーは使えないんだね。
いるなぁ、身近にも。
そういうヤツを『かわいそう』と思うほど善人ではないので、
『てめぇだけどす黒く生きてきゃいいじゃん』と思う。
今まで絶大なる被害をこうむっているので。


う~、隔靴掻痒な文章になってますが
本に興味があるかたは、
ネットより頭の中で連想ゲームしてたどり着いて、
図書館で借りてね。

骸骨ビルの庭 ~ 宮本輝

2011-03-06 22:36:47 | BOOK
1日で上下巻読破。

宮本輝は相性があまり良くないのだけれど
図書館に行ったらたまたま上下巻揃っていたので先週借りてきたもの。

読み物としての面白さを全く損なわずに
人が生きていく上の大切なこと
生命の本質について
人間の業
それらをダイナミックにかつ繊細に書き上げている。

宮本輝は小説の娯楽性を否定せず
観念のみにて書き上げられるたぐいの私小説が上である
などという輩は相手にしない。
そういうことをエッセイや対談集で読んでいたが
「錦繍」「流転の海」以外はいまひとつなじめなかった。
ただ
唯一持っている中上健次との対談は傍線を引くぐらい熟読。

その、傍線を引いた箇所と同じことを
この作品で
物語に入りやすく、平易に
そして本質はひとつも曲げずに
ぐいぐいと読み進められる読み物として書き上げたのだろう。

だってすごく面白いもの。
止まらなかったもの。

『なにが本当なのかを言葉で説明しろ』
そういう人にも解り易いはずだけれど
心底解ろうとしていない人には
ただ設定をドラマティックにしただけにしか思えないでしょう。


そういう意味ではばなりんと同じ味わいで
文庫になったら手元に置いて傍線引きまくりたい。
久々に『本を読んだなぁ』と思った作品。

さもあらばあれ

2010-07-18 23:19:36 | BOOK
大森南朋さんの本のタイトル。

ニナガワミカ撮影の写真がやばすぎ!
本屋で立ち読みしていると
不審人物ばりのうっとり感をかもし出して危険なので即買い。
南朋さん、斉藤和義もいいけど、
蘭ちゃんと対談企画とかないのか?
クドカンは自分の本でしてたよ。
(超マニアな話)

あとテレビ見る場所には
「ユングのサウンドトラック」菊池成孔
文章がかっこ良過ぎて笑いながら読んだりしている。
沢山の章に分かれているので読みかけ。

ベッドには3冊読みかけ。

「夏から夏へ」佐藤多佳子
日本男子陸上の4×100リレーのチームを
大阪の世界陸上から丹念に取材したノンフィクション。
小説家が書いているということで
スポーツライターの文章より読みこなしやすく
アスリートという人たちの特別と普通がわかる。
でも、やはり尋常じゃない人たちが高みへと上るのですね。
これももう少し。

「僕の妻はエイリアン」泉流星。
高機能自閉症の妻を持ったダンナさんが書いた本。
というにはちょっとした仕掛けがあるのですが、
発達障害の人たちは、本当に生きづらいだろうな。
友達の子供に自閉ちゃんがいて、
親もですが、本人が一番大変そう。
身近にそういう人がいなくてそもそもどなんかわからない人にはお勧め。
面白く(というのも抵抗がありますが)
意図せず引き起こしてしまう障害の特性が書いてあるので。

「勝美洋一の美食講座」
図書館本。
ちょっとdantyuっぽいエッセイ。
お酒を移動させると味が変わる、というのは聞き覚えがありますが
生まれた土地に戻して飲むと元の味に戻るんだって。
ごく一部のお酒の話みたいですけど。
そりゃ昔は近くの人だけが飲むものだったんでしょうし、
さもありなん。
読みかけ。

読み終わっていない本があるとわくわくします。
幸せ。
しかし、今日は暑すぎて読書はかどらず。

並べてみる

2010-04-27 21:30:03 | BOOK
うちのパソ太郎は文机にのっかってる。
プリンターも木のラックにのっていて、その横に文庫本用本棚。

干刈あがた・ワンルーム/なつのひかり・江國香織/新井素子2冊/
吉本由美・雑貨に夢中/大島弓子・グーグーだって猫である大型本/
筑紫哲也・若者達の神々Ⅰ/楽しい話でやめられない/橋本治/
干刈あがた/栗本薫/渡辺淳一・阿寒に立つ/森茉莉・贅沢貧乏/
伊藤比呂美・コドモより親が大事/森茉莉3冊/向田邦子・父の詫び状/森茉莉/ハービー山口・女王陛下のロンドン/新井素子3冊/
中上健次/中山千夏・からだノート/入江相政・味のぐるり/栗本薫/
サルでも出来る家事いっさいがっさい/干刈あがた/椎名誠・男達の真剣おもしろ話/新井素子2冊/福田章二・喪失/池波正太郎・新 私の歳月/向田邦子/橋本治/夢野久作・空を飛ぶパラソル/江國香織/新井素子/倉橋由美子・聖少女/向田邦子/山口瞳・木槿の花/狂気の左サイドバック

以上1段目。。。。

疲れるのでぎっちり詰まった棚の前に積んである分を下からでおしまい。

車イスとハイヒール/森茉莉・私の美の世界(2冊ある)/よしもとばなな3冊/西原理恵子・ぼくんち/山田詠美・内面のノンフィクション/
よしもとばなな2冊/青木富貴子・ライカでグッドバイ/新田次郎・雪のチングルマ/幸田文2冊/よしもとばなな/やまだ紫・性悪猫 文庫/
山本夏彦・恋に似たもの/青木玉・幸田文の箪笥の引き出し/
よしもとばなな4冊/恋愛小説 新潮社編/美術手帳3冊/映画芸術・相米慎二/内田善美・草迷宮 草空間/槇村さとる・イマジンノート/
茨木のり子・詩のこころを読む/沢村貞子・貝のうた/よしもとばなな4冊/森雅之・散歩手帳/小泉今日子の半径100m/江國香織/絲山秋子・袋小路の男/小川洋子・博士の愛した数式

この倍以上PC周りに本があってそれで全体数の1/5くらい。

そりゃあ引越し屋さんに「何のお仕事ですか?」って聞かれますね。

ムック 筑紫哲也

2010-03-22 20:29:51 | BOOK
ずっと探していたけど見かけなかった本。
昨日別の本を探しに行った本屋にあって購入。

朝日ジャーナルが好きで
”若者達の神々”は毎週立ち読みしていた。
しかし再録されている数人分を読んで
自分が筑紫さんの言葉をすっとばして読んでいたことに気がつく。
ひっかかりを作らずに対談相手の言葉を引き出しているから。

久米宏はニュースステーションで、わざと相手を挑発したりして
言葉や態度を引き出していた。
そしてニュース報道自体
”主観の入らない報道なんてない”ことを体現していた。
『偏った報道をするな』という意見は
『俺の気に食わない報道をするな』ということでしかない。

対して筑紫哲也はニュース23で
”主観は入るけれど出来るだけ少なく”していたように思う。
『あとは自分達で考えてください』というために。
大きな声で自信有り気に語られるものしか咀嚼する能力のないものには
『ぬるい報道』といわれただろう。
しかし、オキナワ・ヒロシマ
こだわっていることは粘り強く伝え続けた。

両方を見比べるでもなく見ていた私は
「今回の出来事についてはこっちの意見が私に近いなぁ」
などと思っていて
ニュースショーとしては久米宏で
文化と平和と人柄は筑紫哲也。
なんて勝手に分けていた。

生きて報道を続けている限りは
世に出ることの無かったであろう筑紫哲也の人柄は
強風に折れることのないしなやかな樹木のような強さを持った人でありました。


連休に唯一読んだ本。
あとは体調ともどもぐだぐだでした。
底なしに眠れるのはコワイ。

ひとりの時は本を読む Ⅰ

2010-01-24 21:17:47 | BOOK
お正月休みから何気に読書中。
ガシガシまではいかないが、
ただいま10冊目。

今回初めて田口ランディを納得して読んだのは
「キュア」
今までは、
すごく近い村に住むけれど、慣習が違っている。
そういう感じで、
ある部分までは共感するのに
突然まったく理解できない領域に入って行って
わからなくなっていた。

現代の医療問題・社会と人間のゆがみ・精神世界・救い
それらが濃密に描かれている。
スピリチュアル的なものは好みじゃないのだけれど
”腑に落ちる”言葉や表現がとても多かった。

続けて
新潮を買ってよしもとばななの
「アナザー・ワールド 王国その4」
を読んだら
頭の中の結界が壊れてそうになってしまった。

沢山の情報がマトリックスの画面のように
流れ落ちて、
”腑に落ちる”ことだけがピックアップされてゆき
何が?何が?状態で
テンションは上がりっぱなし。

半日くらいで落ち着いて
シンクロしてしまったわけじゃないんだけれど
あれは結構、恐くて面白かった。
深層心理というからには
常人は覗いちゃいけないんだろうから、自然と結界戻ってたもん。

どう考えても、2冊続けて読んだせいだなぁ。


明日は燃やせるゴミ。