曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

小説・立ち食いそば紀行  高価なメニュー(2)

2012年10月03日 | 立ちそば連載小説
 
 
高価なメニュー(2)
 
 
その差し出した食券を、受け取ったおばちゃんはボードの「武蔵野うどん」の場所に置く。なるほど、これなら通常のうどんと間違えることはないだろう。
 
立ちそばのスタンダードメニューではない武蔵野うどんだが、さすが立ち食いそば屋、ほとんど待ち時間なく出てくる。さすがの一言だ。しかし残念ながら、いなりはパック入り。どうも気分的なものだが、小皿で出された方が美味しく感じるのだ。
 
うどんの皿につけ汁の椀、そしていなりに水。しかしトレーが妙に小さい。不安定なので、わたしは慎重に運ぶ。
 
テーブルには七味の他にすり胡麻が置いてある。これはうれしい。わたしはその容器を手に取り、容器に付いている小さな突起をくるくるまわす。しかし手応えがなく胡麻もすり下ろされてこないので、反対にまわす。今度は手応えがあり、胡麻もすり下ろされて椀の中に落ちる。
この作業は立ちそばには効果的だ。まるで石臼でそばの実を挽いている気分になり、チープなそばを一段格調高くしてくれる。小諸そばでは胡麻だれそばに付くこのすり胡麻の瓶、ここではテーブル据え置きなのでどのメニューにも使用できる。
 
うどんを汁に浸けるが、具が多いので沈まない。肉、長ねぎ、揚げの3つの具がたっぷり入っているのだ。
この具の多さであれば580円も納得だなぁと、わたしはうどんをしっかり浸しながら味わっていったのだった。
 
 
(高価なメニュー おわり)