曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

小説・文庫の棚を通り抜け (7)

2012年09月22日 | 連載小説
《毎日のように書店に通う本之介が、文庫、新書以外の本を探すというお話》
 
 

また酒の本を買った。酒に関する本は写真や紹介店の地図などが付く関係上、文庫でないケースが多い。反文庫を掲げる人間にはピッタリのジャンルなのだ。
 
本之介が今回買った『本と酒と俺』は表紙に二〇一〇年一号とあって雑誌なのだが、一号だけの発行なので単行本と言ってもよい。
内容はすべて酒。酒好きであればポンと膝を叩いたりニヤついたりする文章があちらこちらにちりばめられていて、月刊で出ていたとしても、いやいや、週刊で出ていたとしても毎回買いたくなる内容なのだが、一号しか出ていないので仕方がない。英国ロックも蒐集している本之介はRE・FREXやBANDITSなど、ファーストアルバムでとても気に入った途端に解散、となって悲しい思いを幾度か味わされたが、まさか雑誌でも同じ気持ちを味わされるとは思わなかった。まぁこちらはバンドと違って復活の余地があるだろうから、気長に待ってみようと思った。とりあえずは『年刊』、などどうだろうか。それでもキツければ『隔年刊』。これくらいなら負担も少なく、そして珍しさからけっこう話題になって、発売時には売り切れ必至になるかもしれない。
 
この本のいちばんの力作は発行人自らの筆による「各駅酔っぱらい紀行!青春じゃない!18きっぷ」という読み物で、横浜から熊本まで各駅停車でワンカップを飲みながら向かっていく様子を、3部に分けて掲載している。面白い読み物が並んでいるが、これが最も本之介の琴線にあった。
単純にいいなぁと思うと同時に、懐かしいなぁとも思う。本之介も以前、東京から鹿児島まで各駅停車を乗り継いで行ったことがあるからだ。そのときは未成年で一滴も酒を呑まなかったが、もし今同じことをやったとしたら酒まみれとなるに違いない。本之介はビール党なので、筆者がやったように乗り換えるごとにワンカップというところ、乗り換えるごとに缶ビールとなるだろう。ローカル駅での乗り換えも問題ない。カバンにストックしておけばいいだけの話だ。ぬるいビールを厭わず飲めるというのが、本之介の数少ない特技だった。
 
この本の中ほどには、26人から取った酒と本に関するアンケートも載っている。「酒とつまみ」の大竹聡さんや「野宿野郎」のかとうちあきさんなど、ある意味求道者のような方々も答えていて、これまた面白い。質問は7つで、最初の質問は「本を読みながら酒を飲むことはありますか?」というもの。本之介は当然イエスで、一人酒では必ず本を用意している。それもほとんど、すでに読んだ本の再読。これなら酔って斜め読みになっても問題ないし、お気に入りの本はさまざまなシチュエーションで読むと新たな面白さを見出せるという利点もある。
 
リトルプレスというものは逃しやすく、また逃したら手に入れづらい。いつ二号が出ても逃さないように、しっかりアンテナを張ってようと、一号のしゃれた表紙を見ながら思ったのだった。