曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

Tさんと会う(2) 〔大宮〕 駅ナカ

2011年02月14日 | 電車のお話
 
武蔵浦和で武蔵野線を降りた私は、ロッテリア横の変則的な形のトイレに寄ったあと、埼京線のホームに上がった。
 
表示を見ると、次発の電車はおよそ15分後。なるほど、どうりで階段下に人がたくさんいたわけだ。
 
また降りて行くのも面倒なので、じっと待つことにする。高架になっているホームは冷たい風も吹いていて、ここでも本を読む気になれない。私は武蔵浦和の家並みと、時おり通る新幹線を見つめながら、肩をすくめて佇んでいた。
 
 
やがて各駅停車が来て、それに乗る。先に発車するのは快速だが、早めに来たので急ぐことはない。
ようやく本を開く余裕が出る。藤谷治著、『いなかのせんきょ』。このところ小説はハズレが続いたが、これは当たりで、すいすい読めていく。
 
電車はすいていて、駅に着くごとに人は降りる一方。終点の大宮に着く頃には3人ほどになっていた。
 
階段を上がって売店を覗く。駅ナカと逆に来てしまったので、一旦改札を出てコンコースを突っ切り、反対側の改札を入った。待ち合わせの時間までかなりあるので、時間をつぶそうと思ったのだ。
珈琲店があったので一杯飲もうと思ったが、せっかくだからと気ままにうろつく。いろいろなお店が所狭しと並んでいる。
 
 
以前、大宮には北の玄関口の上野と同じ雰囲気があった。北へ向かう特急や新幹線が停車する駅で、大きな荷物を抱える人も多かった。それがこのきれいな駅ナカで、一層されてしまった。この駅に来ると、いつも残念な気持ちになる。
 
 
時間をつぶそうと本屋に入ったらロバート・ホワイティングの新刊があったので購入した。待ち合わせの時間が来たので改札に向かう。駅員さんに出る旨を伝えてICカードを渡したら、入場券分引くと言われた。それだったらコンコースを突っ切らないで、面倒でも埼京線のホームから駅ナカ側に移ればよかった。
 
 
私はコンコースの中央にある前衛作品の前にTさんを見つけ、ぽんぽんと肩を叩いた。
 
(続く)