曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

〔南流山〕 つくば行・前編

2011年02月03日 | 彷徨う
 
北関東は、ふらっと出掛けるのに適している。近からず遠からず、そこそこ旅をした気持ちになる。充分日帰りが可能で、大げさな支度も必要ない。
 
 
ある日、つくばに行ってみることにした。ずっと前に行ったときは土浦からバスに乗り換え、ずいぶん不便だと思ったが、今はつくばエクスプレスができて都内から一本で行ける。その気軽さに惹かれて行ってみようと思ったのだ。
 
都内に出て秋葉原から行く手もあるが、それではなんとなく味気ない。お手軽すぎるということもあるし、豪華できれいな車両では一人旅のわびしさを堪能することができない。そこで私は武蔵野線経由で行くことにした。
 
 
新宿から埼京線で武蔵浦和に出て、そこから武蔵野線に乗る。一つめの南浦和をすぎると、途端に景色が寂しくなる。
田畑が続いているが、冬なので荒地のようだ。車内は暖房が効いているが、平坦でずっと先まで見通せる荒地の眺めは、体を冷えさせる。
南越谷こそ賑わっていたが、越谷レイクタウンはぐっと寂しく映る。乗り換えのない新設駅は、駅前に不相応な商業施設と高層住宅が建っていて、それが妙に機械的で寒々しい。いずれそういったものが程よく汚れ、古びて、だんだん人が住む街といった感じになってくるのだろう。しかしその前に過疎化になるおそれもある。
 
新三郷は面白味のない駅になってしまった。以前は、まるで河原のような荒漠とした敷地に、上下線のホームが以上に離れてあったのだ。上下線の移動は、長い長い橋を渡らなくてはならなかった。
 
南流山に着いて電車を降りる。ここはつくばエクスプレスとの乗換になっているのだ。
ベンチを見ると、席の一つ一つに子供用の座布団が付いている。この駅は上下線が別れたカタチのものだが、反対側のホームにも、全てのベンチに座布団が付いている。
なんとなく、あたたかくなる光景だ。電車一本分くらい座っていこうかなと、ちょっと思った。
 
私は改札を出ると立ち食いそばで昼を済まし、つくばエクスプレスの改札に向かっていった。