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『子どもが教えてくれたこと』

2018年07月23日 | 映画(か行)
『子どもが教えてくれたこと』(原題:Et Les Mistrals Gagnants)
監督:アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン

シネ・リーブル梅田で2本ハシゴの2本目。
前述の『ゲッベルスと私』の次に。

監督はジャーナリストでもあるフランス人女性、アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン。
ご自身も幼い娘さんを病気で亡くされたという辛い過去を持つ彼女が、
重い病気と闘う5人の子どもたちの日常をフィルムに収めたドキュメンタリー。

肺高血圧症のアンブル、9歳(♀)。表皮水疱症のシャルル、8歳(♂)。
骨髄の神経芽腫を患うカミーユ(♂)、5歳。腫瘍に悩まされるテュデュアル、8歳(♂)。
腎不全のイマド、7歳(♂)。とてもとても可愛い子どもたち。

こういうドキュメンタリー作品は、子どもの話のみならず、
周囲にいる大人の話も添えられるものですが、本作はすべて子ども目線。
彼らについて、病気について、大人が語るシーンはほぼ皆無。
大人が話すのは、子どもたちと直接話しているシーンのときだけです。

ひどく重い病気を生まれたときから抱えているのに、子どもたちは明るい。
「悩み事は、脇に置いておくか、つきあっていくしかないの」とアンブル。
テュデュアルも「病気だからって幸せになれないわけじゃない」。

驚かされるのは、5人とも自分の病気についてものすごくよくわかっているということ。
自分がいつ病気に罹り、今どういう状態にあって、どんな注意が必要か、
今後どのような治療を受けてゆくのか。この歳でこんなに理解できるものなのか。
説明しても子どもには理解できないなんてことは、大人の思い込み。

通院に付き添う父親に向かってイマドが言うのは、
「腎移植を受けたら、お父さんを疲れさせなくて済む」。
父親が「子どもと一緒にいるのはお父さんの役目だから、いいんだよ」と言うと、
「お父さんの役目だけどね、でも疲れるのは疲れるでしょ」と、笑顔のイマド。

皮膚の痒みと痛みに耐えるシャルルの姿を見ると、
手湿疹で死んだほうがマシだと思うぐらい辛かったときを思い出します。
私の場合、生死に関わるような病気じゃなかったのに、
死んだほうがマシだなんて思ったことをシャルルに詫びたくなりました。
彼の「忘れないリスト」には泣いてしまう。
嬉しかったことも苦しかったことも彼は忘れたくない。

シャルルが長らく病院でつきあっている親友ジェゾンとのやりとりは可笑しい。
エンドロールで、シャルルのおばあちゃんにジェゾンがあれこれねだるシーンで、
「ぼくのおばあちゃんは君の財布じゃない」には大笑いしました。

生きていることを幸せに思い、一日一日を大事に生きている5人。
『ワンダー 君は太陽』もよかったけれど、個人的にはこっちのほうが断然お薦め。

命を、信じること。

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