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『遺体 明日への十日間』

2013年03月11日 | 映画(あ行)
『遺体 明日への十日間』
監督:君塚良一
出演:西田敏行,緒形直人,勝地涼,國村隼,酒井若菜,佐藤浩市,
   佐野史郎,沢村一樹,志田未来,筒井道隆,柳葉敏郎他

TOHOシネマズ西宮で4本ハシゴの3本目。

“踊る大捜査線”シリーズの面々が監督や製作に名を連ねているとあれば、
ミーハーもしくは偽善的な作品になっても不思議ではありませんでしたが、
好感度の高そうな演技派、渋い役者陣が勢揃いしてミーハー臭なし。
ジャーナリストの石井光太による『遺体 震災、津波の果てに』の映画化です。

2011年3月11日、誰もが覚えている東日本大震災の起きた日。
岩手県釜石市の海岸沿いの町は津波に丸ごとのみ込まれ、
一夜明けてもあまりに大きすぎる被害の全容を把握することができない。

廃校となった中学校の体育館を遺体安置所として使うことが決まり、
医師の下泉(佐藤浩市)が検死作業に取りかかる。
歯科医師の正木(柳葉敏郎)も検死を依頼され、助手の大下を伴ってやってくる。

民生委員の相葉(西田敏行)は数年前まで葬儀会社に勤めていた。
遺体が次々と安置所へ運び込まれる様子に言葉を失い、
また、遺体の扱いがぞんざいであることに心を痛める。
しかし、遺体の扱いに慣れている人などほとんどいないのは当然のこと、
自分に安置所を任せてほしいと市長(佐野史郎)に直訴、ボランディアを申し出る。

遺体は「ご遺体」であって、「死体」ではない。
相葉は遺体となった一人ひとりに優しく声をかける。
死者の尊厳を損なうことなく接する相葉の姿を見て、
市職員(筒井道隆ほか)や消防署員たちの遺体への接し方も変化を見せる。

死後硬直が始まっている遺体の手足を戻そうとして、
最初はバキバキと力まかせに折っていますが、
相葉の実演によって筋肉をやわらかくしてやれば元に戻せると知ります。
開いたままの口も、周囲の筋肉をほぐせば和やかな顔に。
遺体が丁寧に扱われているのを見れば、遺族も少しは落ち着きます。
高圧的な命令や指示ではないからこそ、
安置所に居合わせた関係者たちが自然にそうするようになるのですね。

美化されている部分もあったとしても、やっぱり涙がこぼれます。
自分の患者や、昔お世話になった人が運ばれてきて、
それでも淡々と作業を進めなければならない医師たち。
久々に見た歯科助手役の酒井若菜が涙をこらえるシーンと、
住職役の國村隼がお経に詰まるシーンには胸が押しつぶされそうでした。

『ゲロッパ!』(2003)のときにも思ったこと。
実際には私より涙もろいんじゃないかと思う西田敏行。
こんな作品、客の側にいたらボロボロ泣いているんじゃないかと思うのですが、
これだけ泣くのをこらえられるなんて、凄い人やなぁ。

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