夜な夜なシネマ

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原田芳雄追悼上映。

2011年08月09日 | 映画(番外編:映画とこの人)
日曜日の朝10時。梅田のミニシアターには長蛇の列。
スクリーン2つのこの映画館では、
右側で原田芳雄追悼上映、左側ではアンパンマン。
なんたる取り合わせ。そしてどちらもほぼ満席です。

特に演技が上手いなぁと思ったことはなかったけれど、
その演技っぽくないところが演技なのかもと思った原田芳雄。
最近では、『歩いても 歩いても』(2007)や『たみおのしあわせ』(2007)、
ゲスト出演したドラマ『新参者』など、
どれも偏屈ながら温かみのある親父という印象がありました。

最も強烈に思い出すのは『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2007)。
原田芳雄のナレーションじゃなかったら、立ち直れなかったと思うほど。
あのダミ声、大好きでした。

今回、追悼上映で観たのは『ツィゴイネルワイゼン』(1980)。
当時、ドーム型の移動映画館で上映されて話題になりました。

陸軍士官学校のドイツ語教授、青地(藤田敏八)は、
同僚で親友の中砂(原田芳雄)と旅先でたまたま遭遇。
女殺しの疑いをかけられていた中砂に助け船を出します。

まるでジプシーのごとく各地を転々としている中砂と
しばし共に過ごすことになった青地は、
鰻を食べに寄った宿で、小稲(大谷直子)という芸者と会います。
弟を自殺で亡くしたばかりだという小稲の話に聞き入る中砂。

一年後、中砂の家を訪れた青地は、中砂の新妻を見てびっくり。
園(大谷直子)というその女は、小稲に瓜二つだったからです。
自分を見てニヤニヤする中砂と青地に、園は不機嫌な顔。
青地が事情を話すと余計にすねます。

さて、結婚後も風来坊であり続ける中砂は、
スペイン風邪を持って帰ってきます。
それをもらってしまった園は、幼い娘を残して他界。
乳母を雇ったという中砂のもとを青地が訪ねると、
その乳母とはあの小稲で……。

内田百閒の『サラサーテの盤』が基になっています。
何度観てもわかりそうにありません。
だけど、これはわからなくていいそうです。
鈴木清順監督自身がそうおっしゃっているらしく。
いろんな見方があっていいじゃないかと。

妖艶で可愛らしさもある大谷直子に魅せられ、
青地の妻役の大楠道代の厚化粧にビビり、
夢と現実の境目が明らかにされないまま、わけがわからず145分。
飽きずに最後まで観られるのはスゴイところ。
多くの人に言われていることですが、
この不条理さはデヴィッド・リンチ監督の作品と比較したくなります。

昭和も終盤の作品ではありますが、舞台は大正時代。
文献でしか知らなかった女給、トンビ、門付けなどが次々と登場して、
それが個人的にはとても楽しかったです。

原田芳雄は1940年生まれでしたから、本作の出演時は40歳。
ちょっと艶のあるいい男でした。
もうあのダミ声が聴けないと思うと寂しいです。合掌。

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