夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『樹の海』

2006年02月11日 | 映画(か行)
『樹の海』
監督:瀧本智行
出演:池内博之,萩原聖人,田村泰二郎,津田寛治,
   塩見三省,井川遥,大杉漣他

ヤキソバパンが気になったものの、
セカチューでは一滴の涙も出ず、
泣けない私のほうがおかしいのか?と思いましたが、これにはジンワリ。

自殺の名所である富士山麓、青木ヶ原樹海。
ここで展開される4つのエピソード。

闇金融業の使いっ走り、チンピラのタツヤが
顧客の今日子から連絡を受ける。
夜逃げした今日子は自殺しようと樹海に入ったが、
足を挫いて動けないとタツヤに電話してきたのだ。

某団体職員の朝倉はヤクザに唆されて5億円の公金を横領。
抜けたいと申し出たとき、袋だたきにされる。
朝倉が死んだと思ったヤクザは、彼を寝袋に詰めて樹海に捨てる。
奇跡的に生きていた朝倉は寝袋から這い出るが、
今まさに首を吊ろうとしている田中と遭遇。
「止めないでください!」と叫ばれて、驚いてその場を立ち去ってしまう。

新橋の居酒屋で面会する探偵の三枝と大企業の会社員、山田。
探偵に呼び出される覚えのない山田に、三枝は1枚の写真を見せる。
そこには山田と並んで写る若い女性が。
誰だったかはまったく思い出せない。
聞けば彼女は樹海で自殺した真佐子で、写真は遺留品だという。

ネクタイで首を吊ろうとしている映子。
一流大学を出て銀行に勤めていた彼女は
不倫相手へのストーカー行為で捕まる。
それ以来、人の目を避けるように暮らし、現在は駅の売店で働いていた。
ある日、その元不倫相手が偶然売店に姿を現し、心のバランスを失う。

それぞれのエピソードに登場する人物が交錯します。
映画というよりお芝居を観ているようで、
「生と死」という重いテーマなのに
深い緑に包まれた映像と音楽が心地よく、心にしみわたります。

萩原聖人演じる朝倉が、宙づり状態の田中の横に腰をおろし、
死人に向かって心中を語るところなど、
たびたび笑ってしまうほど軽妙で、
だから余計に生きることを考えたくなります。

最後の朝倉の台詞は「田中サンの気持ち、
そこまで説明せんでもわかるって」と言いたくなりましたが、
それでもそのシーンにはジワっときました。
大杉漣のネクタイも泣かせます。

池内博之演じるタツヤは巧いけど熱すぎて、
観てるほうにエネルギーが要ります。
なんちゅうのか、桂雀三郎の落語を聴いてるみたい。
息継ぐヒマもなくてたいへんですねん。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 求む、絶品ヤキソバパン。 | トップ | 『Be Cool / ビー・クール』 »

映画(か行)」カテゴリの最新記事