夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『あなたになら言える秘密のこと』

2007年09月15日 | 映画(あ行)
『あなたになら言える秘密のこと』(原題:La Vida Secreta de las Palabras)
監督:イザベル・コイシェ
出演:サラ・ポーリー,ティム・ロビンス,ハビエル・カマラ他

『死ぬまでにしたい10のこと』(2003)の監督が、
やはりサラ・ポーリー主演で。

工場で働くハンナ。
過去の出来事で心に傷を負い、誰とも関わろうとしない。
昼食には必ずライスとチキンと半分に切ったリンゴを持参し、
食堂の片隅でひとりで食べる。

ある日、ハンナは上司に呼び出される。
真面目すぎて長年休暇を1日も取っていないハンナを
ちゃんと休ませるようにと組合から苦情が出たらしい。
上司は彼女に1ヵ月の休暇を言い渡す。

あてもなく旅に出た彼女は、偶然入ったレストランで、
僻地で看護師を緊急に要しているという話を小耳に挟む。
聞けば、海の真ん中に浮かぶ油田掘削所で爆発事故があり、
その患者を看護できる者を探しているとのこと。
看護師の資格を有しているハンナは、早速現地へ。

患者はジョゼフ。
全身に火傷を負い、一時的に視力を失っている彼は
事務的に仕事をこなすハンナに
ユーモアにあふれた質問を浴びせかける。
必要以外に口をきかなかったハンナだが、
やがてジョゼフとは言葉を交わすようになり……。

その人を信頼できるかどうかに時間は関係なし。
心を閉ざしていた女性が、ある男性と出会って徐々に心を開いてゆく。
ありがちな設定ですが、ハンナが心を閉ざしていた理由というのが、
「秘密」なんて言葉では片付けられないほど、想像を絶する超重量級。
なんぼしょっちゅうここでネタをバラしていると言っても、
この理由だけは本作の肝なので書けません。

一方、明るく振る舞うジョゼフも、本当はズタボロ。
事故として扱われたものの、事実は異なり、
ジョゼフの親友が、妻とジョゼフとの不倫を知り、
自ら死を選んだのが真相でした。

ハンナの「超重量級の理由」について、
映像で表されることは一切ありません。
ハンナの語る言葉のみ。なのに、まるでそのシーンが
目前で生々しく再現されているかのようです。

閉鎖的な油田掘削所で生活する面々も個性豊か。
特に、陽気に各国の料理を作り続けるシェフがいい。
旨い料理を食べることを通じて、
ハンナが人間的な感情を取り戻すシーンが◎。

ハンナの心の傷を丸ごと引き取ることはできなくても、
丸ごと感じ取ったジョゼフ。
触れる指先の優しさ、抱きしめる腕の力強さ。伝わります。

生きていてくれてありがとう。

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