375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

●歌姫たちの名盤(5) ちあきなおみ 『VIRTUAL CONCERT 2003 朝日のあたる家』

2013年02月03日 | ちあきなおみ


ちあきなおみ 『VIRTUAL CONCERT 2003 朝日のあたる家
(2003年4月23日発売) TECE-28399

収録曲 01.百花繚乱 02.かもめの街 03.あなたのための微笑み 04.イマージュ 05.祭りの花を買いに行く 06.ダンチョネ節 07.紅とんぼ 08.酒と泪と男と女 09.東京の花売娘 10.ひとりぼっちの青春 11.スタコイ東京 12.黄昏のビギン 13.朝日のあたる家(朝日楼) 14.ラ・ボエーム 15.アコーディオン弾き 16.プラットホーム 17.喝采 18.紅い花 19.伝わりますか


ちあきなおみの名前を初めて知ったのは、筆者が中学1年になってまもなくの頃、1970年4月に発売されたお色気ソング「四つのお願い」を聴いてからだった。おそらくドリフターズの番組中だったと思う。名前がふたつ・・・のようなユニークな芸名だったので、子供である自分にも憶えやすかった。新人歌手・ちあきなおみはその年の紅白歌合戦に初出場。次代を担う若手有望歌手の一人として脚光を浴びることになる。

2年後の1972年、秋に発売された「喝采」で日本レコード大賞を受賞。歴代受賞曲の中でも文句なく大賞にふさわしい名曲によって、決定的な名声を確立することになった。その後は「夜間飛行」(1973年)、「かなしみ模様」(1974年)、「さだめ川」(1975年)、「酒場川」(1976年)、「夜へ急ぐ人」(1977年)などの話題作を毎年のように発表。1978年に郷治(宍戸錠の実弟)と結婚するまでの約10年間が第1期黄金時代と見なすことができるだろう(いわゆるコロムビア時代)。

1980年代のちあきなおみは流行歌手の第一線から離れて、マイペースなレコーディング活動に力を注ぐようになる。ジャンルの異なる4つのアルバム『それぞれのテーブル』(1981年)、『THREE HUNDREDS CLUB』(1982年)、『待夢』(1983年)、『港が見える丘』(1985年)をビクターから発表するものの、一般的にはそれほど話題にならなかった。どちらかといえば過渡期の時代で、むしろ女優やタレントとしての活動のほうが知られているかもしれない。

歌手としての往年の勢いを取り戻すのが1988年。この年、新たな所属レコード会社テイチクからオリジナル・アルバム『伝わりますか』を発表し、新宿駅裏に実在していた(かもしれない)酒場の店仕舞いをする女将の心境を歌った「紅とんぼ」が久々のヒット。11年ぶりに紅白歌合戦復帰を果たすことになる。ここから数年間が第2期黄金時代とも呼ぶべき期間で、1991年のアルバム『百花繚乱』に至るまで中味の濃い充実したキャリアを積み上げていった。しかし1992年9月11日に最愛の夫・郷治と死別すると、突然すべての芸能活動を休止。以後20年、正式に引退発表することもなく、それでいて歌手としての活動を再開することもなく、沈黙を続けることになった。

今、ちあきなおみは現役時代には決して呼ばれることのなかった称号で呼ばれている。

「伝説の大歌手」

事実、これほど復帰が待望されている歌手はいないだろう。かつて所属したレコード会社(コロムビア、テイチク)からリリースされる企画編集版のCDはロングセラーを続け、NHK-BSや民放でオンエアされる特集番組は毎回反響の嵐というフィーバーぶりである。

なぜこれほどの反響があるかというと、やはり本物の歌手だからである。
「泣き笑い」という言葉があるが、ちあきなおみの歌はまさにそれで、人生の喜怒哀楽のドラマ、陰影豊かな微妙なニュアンスをこれほど深く表現できる歌手も稀有であると思う。本人の性格が内向的であることも、芸術表現の上ではプラスだ。徹底的に人間の深層心理を極め尽くすことができるからである。それだけに、一度傷つくとなかなか立ち直れない脆さもあるのだが・・・その繊細さこそ魅力なのだから、文句もいえない。

素晴らしいCDはたくさん出ており、どれもかけがえのない心の財産になりうるものだが、 ここでは2003年にテイチクからリリースされて以来10年間ロングセラーを続けている『VIRTUAL CONCERT 2003 朝日のあたる家』をあげておこう。これはちあきなおみ最後の歌手活動となったコンサートツアーの音源を軸として、新たに発見された未発表のライヴ音源5曲(「朝日のあたる家」、「ラ・ボエーム」、「アコーディオン弾き」、「酒と泪と男と女」、「ダンチョネ節」)を目玉として加えた企画編集アルバム。もしちあきなおみが現在コンサートを行なうとしたらどういう形になるだろうか、という発想で、彼女の多彩な魅力をいろいろな角度から味わえるようにバラエティ豊かな曲目が選ばれている。

文字通り絢爛豪華な歌謡ショウの幕開けを告げる「百花繚乱」、スケールの大きな叙事詩的表現に圧倒される「かもめの街」、失われつつある日本情緒への憧憬が滲み出る「祭りの花を買いに行く」と「東京の花売り娘」、水原弘の往年の名曲をカバーした「黄昏のビギン」、現時点でのラスト・シングル「紅い花」、そしてCHAGE & ASKAの飛鳥涼が提供した情緒豊かな名曲「伝わりますか」まで、不世出の歌姫が残した歌世界に万感の思いで浸りきることができる1枚である。

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