375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

●歌姫たちの名盤(11) 弘田三枝子 『MICO・ジャズ・ライヴ・イン・北九州』

2013年03月17日 | 弘田三枝子


弘田三枝子 『MICO・ジャズ・ライヴ・イン・北九州
(2008年4月25日発売) POPMAY 39

収録曲 01.TEACH ME TONIGHT 02.ON A CLEAR DAY 03.SOMEONE TO WATCH OVER ME 04.BYE BYE BLACKBIRD 05.A WOMAN AM I 06.I'M IN THE MOOD FOR LOVE 07.CHATTANOOGA CHOO CHOO 08.STARDUST 09. THIS IS SWING: 世界は日の出を待っている~HOW HIGH THE MOON~CONFIRMATION~FOUR BROTHERS~FLING HOME


1947年生まれの弘田三枝子は、筆者から見れば一世代上の「団塊の世代」に属するお姉さん歌手である。この世代の歌謡曲・POPS系の歌手は、ほとんどが幼少の頃から米軍基地や高級クラブなどでライヴ経験を積んでおり、正式にレコード・デビューする時点ではすでに完成されたプロフェッショナルなレベルに達している人が多い。そういう点では、それより後の年代に属する歌手に比べると一日の長がある、というのが率直な実感であり、昭和のベスト歌手を選ぼうとすると、どうしてもこの年代の人たちに偏ってしまうのである。

それらのお姉さん歌手たちは現時点ですでに還暦を越えているわけだが、その多くが今もなお現役のステージで活躍を続けているのは尊敬に値するというしかない。先日ジャズ・アルバムをリリースした八代亜紀もそうだが、由紀さおり、伊東ゆかりあたりも新アルバムの発売が予定されている。そして、われらがMICO姫はアルバムの発売予定こそないものの、定期的に都内のライヴハウスに出演する機会がある。彼女たちの多くは歌の実力はもちろんのこと、ルックス面でも昔に比べてそれほど衰えているわけではない。デビューから何十年もの間、一定のレベルを保ち続けることができるのも不断の努力と節制の賜物であろう。 

さて、今回紹介するのは、弘田三枝子が50歳当時、1997年11月8日から9日にかけて北九州市小倉のライブハウス「BOG BAND」に出演した際、地元の熱烈なファンである高野啓一氏が録音・編集した自主制作アルバムの再発盤である。1998年に発売されたオリジナル盤は、300枚限定のプレスがあっという間に売り切れ、ネット・オークションで1万円近い値がつく幻の名盤となっていた。その後POPMAYから10年ぶりに再発売されるにあたり、マスターテープの入念なクリーニング、リミックス、リマスタリングが施され、ライヴならではのリアルな音空間が生き生きと再現されることになったのは嬉しい。

冒頭の「TEACH ME TONIGHT」から、早くもその成果を体感できる。ベースの低弦をバックグラウンドにゆったりとしたMICO姫のヴォーカルが絡む1954年作曲のスタンダード。小気味良いスキャットでささやきかけるフレーズがなんとも魅力的だ。

晴れやかな大空に朝日が昇っていくような軽快なナンバー「ON A CLEAR DAY」で心地よくスウィングしたあとは、3曲目のジョージ・ガーシュイン作曲「SOMEONE TO WATCH OVER ME」で再びスローテンポのバラードとなる。安らぎを求める女心をしみじみと歌うMICO姫。哀愁あるアルトサックスの音色がムードを高める。

4曲目は快速テンポで疾走する「BYE BYE BLACKBIRD」。ここまで緩・急・緩・急と来て、5曲目の「A WOMAN AM I」が前半のハイライトともいうべき12分の大曲となる。これはなんと彼女自身によるオリジナル曲。歌詞は一応英語だが、ラララで歌われる部分が多く、意味は判然としない。しかも全曲を支配するのは、中近東かどこかの異郷世界に迷い込んでしまったかと錯覚するような宗教的な響き。神秘のエクスタシーに包まれながらMICOならぬ巫女登場といった雰囲気である。最後はジャズらしい音楽に回帰するので、やはりこれは新しいジャズの試みと解釈すべきだろうか。ファンであればこういう音楽も洒落たお遊びとして楽しみたい気持ちになってくる。

後半の1曲目(通算6曲目)はよく耳にするお馴染みのバラード「I'M IN THE MOOD FOR LOVE」 。1935年のミュージカル映画『夜毎8時に』のテーマ曲に使われていたらしい。次の「CHATTANOOGA CHOO CHOO」は、かつて運行していたシンシナティ発チャタヌーガ行きの旅客列車を舞台にしたアップテンポの楽しい曲。浮かれ騒ぐ乗客たちの中で、ハイトーンの歓声がひときわ高くシャウトする。

続く「STARDUST」 も多くのアーティストがカバーしているスタンダード曲の王様だが、大御所の歌唱はさすがに風格が違う。

アルバムの最後を飾るのは「THIS IS SWING」 と題された快速テンポのメドレー。「世界は日の出を待っている」から「FLING HOME」までのクライマックスを一気に聴かせ、最後はお得意の高速スキャットも飛び出し、ノリノリのスウィングで締めくくる。ローカルなライブハウスなので観客の人数は多くないと思われるが、それだけにかえってアットホームで手作りな雰囲気があり、ショウが終わってからのファンとの親密な語らいさえも想像できるような、貴重なアルバムに仕上がっている。

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