カナダ・エクスプレス

多倫多(トロント)在住の癌の基礎研究を専門にする科学者の自由時間ブログです。

Why Science?

2008年10月24日 | サイエンス
人から「なぜサイエンスをやるのですか?(Why Science?)」と聞かれることがある。日本の学生さんの中には、私のセミナーを聞いて、なぜこんなに情熱をもってできるのかと思う人がいるらしい。「バカだから」と答えるのが、その場しのぎで体裁のいい答えにはなるが、それは何の役にも立たない。

それじゃあ、本当に心から答えるとするとどういう答えになるのだろう?私は三つのメッセージをもって返答したい。

1.真実を知る
2.未知を知る
3.将来を知る

これがサイエンスの存在する所以だと考える。当たり前の答えのように思う方もいるかも知れないが、この三つのことを知ることこそが、本当に面白くて、わくわくするから、今でもサイエンスを飽きずにやっているのだと思う。

ある生命現象に興味をそそられる。今年度のノーベル化学賞に輝かれた下村先生の研究がよい例である。オワンクラゲがなぜ緑に光るのだろう?という素朴な疑問がうまれる。真実が知りたくなる。人類にとって未知の領域である。化学のアプローチで必死でその答えを探す。まさにこれこそサイエンスである。時間はかかる。人手もいる。お金もそれなりにいる。しかし、その答えがついにわかったとき、それはたとえようのない快感であり、何ものにも変えがたい経験である。そして、その発見が将来を創造する。オワンクラゲの蛍光蛋白質がいまや癌研究の最前線で使われている。クラゲがなぜ光るのか?という素朴な基礎研究があればこそ、現代医学は進歩し、一人でも多くの人命を救うことにつながっているである。

今の若い人たちは、冒険をしないといわれる。未知への挑戦を避け、現状と安定を重要視するのだという。自分の将来を真剣に考えているからこそ、打算的になってしまうという見方もできるかも知れない。しかし、本当にそれが彼らの将来の安定や幸せにつながっていくのだろうか、と私は疑問に思う。そして、この国の将来が心配になってくる。

サイエンスにしろ、他の職種にしろ、冒険を避けていては、新しい道が開かれないと私は思う。自分がこれをやりたいと思うことが見つかれば、周りの状況や他の人たちがどう思うかなどという些細なことには目もくれず、とにかく決めた道に一直線に進んでいく勇気がほしい。その強い意志こそが、どれほどのエネルギーを生みだして、困難を乗り越える力になるかは計り知れない。ひいては、この国の活力になるのである。

サイエンスの最先端で研究している研究者を見る限り、サイエンスは情熱やエネルギーを満身にもって打ち込んでいる人たちの「意志」で前進しているのだと私は思う。あなたも、そのエネルギーを生み出す一人になってみてはいかがですか?

サイエンスは面白い。



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1 コメント

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(^_^)/~♪ (むぅー)
2008-11-01 21:50:08
1.真実を知る
2.未知を知る
3.将来を知る

私の場合.....

1.真実は人の数だけある
2.何を知らないのか知らない
3.今を把握していない

~爆!
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