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カナダ・エクスプレス

多倫多(トロント)在住の癌の基礎研究を専門にする科学者の自由時間ブログです。

現代学生気質

2005年04月09日 | サイエンス
午後の休み時間を利用してスキーをした。シアトルのワシントン州立大学の教授をしている私の友人とリフトに乗りながら学生の話をした。D教授がこんな話をした。「スターバックス(これもシアトルの会社)の社長が私の息子の行っている高校に来て、『何でも好きなことをやったらいい。可能性は無限だ。』というような話をしていった。とってもよかった。うちの大学の研究室に来て、大学院生にもしてほしいものだ。」と話を閉じた。私は、「学生をいかにMotivateさせるかが問題だよね。どこでも同じだね。。。」と、相槌を打った。そして、先日の「学生の悩み」で書いたことを同時に思い出した。

バンフから

2005年04月09日 | サイエンス
一昔前は日本人の観光客で大賑わいだったバンフに来ている。カルシウムの国際会議に出席している。日本からも、十数人の研究者が出席されていて、全体で200人ぐらいの会議である。久しぶりに会う友人も多く、こういう場で3食ともにして5日も過ごすと、また友情が深まる。科学者をやっていてよかったと思うのは、こうやって世界中の素晴らしいところを訪問する機会があり、世界中の人たちと知り合いになれることだと、私の友人は口をそろえて言う。私もまったく同感である。さて、そろそろ夜8時からのセッションが始まるので、出かけることにしよう。

引地邦男先生の『NMRノート』

2005年04月05日 | サイエンス
北海道大学名誉教授・引地邦男先生がこのたびNMRの教科書『NMRノート』をまとめられ、インターネットで公開されました。同書は、NMRの基礎理論に始まり、多次元NMRの理論と応用について詳しく解説された、同氏のマスターピースであります。ご興味のある方はhttp://www.h6.dion.ne.jp/~k_folder/ をご覧ください。私のブログのBookmarksにも入れました。なお、この教科書は現在のところ出版されておりません。引地先生のご厚意で、NMRを学ぶ多くの研究者、学生諸氏の参考になれば幸いということで、無料で公開されています。ちなみに、引地先生は私の北大時代の恩師です。

セルフ・モティベーション

2005年03月27日 | サイエンス
昨日は若干急いで書いたので、一番書きたかったことが抜けてしまったような気がする。私の言いたかったのは、要するに、いかに自分自身に動機とか刺激を与えるか, 興味を起こさせるか、ということだ。それができれば、もう半分以上成功したのも同然である。そして、自分をうまく「motivate」できるかどうかが、あなたの人生の道筋を決めるひとつ重要な要素であるかもしれないことを、考えてほしい。科学者として成功できるのかどうかは、この一点に帰する所が大きいと私は思う。今の若い人たちは、そんな精神論を一笑するのかもしれない。もちろん、このことは必要条件であって、十分条件ではない。その他の要素、すなわち、環境、ひと、タイミング、運、などのほうが重要だと言われるかもしれない。私もこれらの要素が重要だとは思っている。しかし、「self motivation」以外のものがすべて手にできたとしても、自分自身を奮い立たせない限り、100%の成功はありえないと、私は主張したいのである。そして、この「self motivation」のみが自分でコントロールできる要素だから、これをうまくできる人とできない人で個人差が生まれる。私の知っている欧米の科学者で、これを持ち合わせないで成功している人は皆無である。そして、もしこれができれば、他の要素はおのずとついて来るとも、私は思うのだ。

学生の悩み

2005年03月26日 | サイエンス
北大の学生を相手に、「よいプレゼンテーションのすすめ」と題してセミナーをした。私自身満足の行くプレゼンテーションができるとは思っていないが、欧米の学会等で英語がネイティブの人の素晴らしい講演を聞いたりすると、何とかそれに近づきたいと思うものだ。そんな経験と知識から、日本の学生のためにまとめた、よい講演のポイントやテクニックを議論した。その中で、まず大切なのが、「Enthusiasm(情熱)」を表現すること、「Energetic(エネルギッシュに)」話すということを説いた。講演に限らず、サイエンティストとして、そうあることは必須であるとも説いた。すると一人の女子大学院生が、「先生はどうしてそんなに情熱的でいられるのか?」と私に質問してきた。私はその質問に少し戸惑ったが、同時に彼らの考え方に触れた気がして、なるほどと思った。とっさだったので、わたしは「自分のやっていることが面白いと思うから、情熱的でいられのです。あなたも早く面白いと思うものを見つけてください。」と返答して、その場をとりつくろった。後で考えると、彼女の質問には次のように答えるべきだったと思うのである。彼女や他の多くの学生が今悩んでいることは、一言で言うならば、人生の目的を見出せずにいることに起因するように私は思う。今の学生諸君は、生活面、学業面、いろんな意味で恵まれている。特にがんばらなくても生活していける。そして、人よりも余計にがんばったり目だったりすると、日本の社会では「出る釘は打たれる」ことになることをよく知っていて、その処世術を身に着けている。でも、私は彼らに言いたいのである。人と違う考えを持つことがオリジナリティであり、それなしには、よいサイエンスにはならない。人と違うことを恐れないでほしい。むしろ自慢すべきである。私は、サイエンスがとても面白いと思うと同時に、他のたくさんの事に興味があり、それぞれがとても面白いのである。たとえば、この私のブログで紹介していこうと思っている民族と文化のこと、シルクロードのこと、言語のこと、音楽のこと、食べ物のこと、などなど、すべてに興味が尽きない。すべてに情熱を持っている。それらすべての総和が私の人生であり、私は今、楽しく生かさせてもらっている、と思うのだ。学生の諸君、あなたもぜひ、早く人生の目的を見つけてほしい。そして、それに一直線に進んでほしい。前進あるのみであり、後ろを振り返らないのが私の処世術だ。あなたの心をすべて捧げてもいいと思うものが見つかったら(サイエンスであろうと、何であろうと)、ぜひそれを私に聞かせてほしい。きっとその話しはエキサイティングで私いや聞く人全員を惹きつけるものになるだろう。

大学教授の停年

2005年03月17日 | サイエンス
京都大学の柳田充弘先生が3月10日から、『柳田充弘の休憩時間』というブログを開始された。私がスタートしたのが3月6日であるから、ほぼ同時のスタートで、サイトを拝見するとその後毎日のように書き込みがあり、柳田先生もブログに大いに興味をもたれたようだ。私自身、少しずつその面白みが分かってきたが、いつまで続くのかは自信がない。柳田先生の初日の投稿を読んで、日本の科学を憂う気持ちになったので、ちょっとだけ書かせていただく。
 日本の国立・公立大学の教授の停年は63歳のところが多い。京大もそうである。個人差はあるが、多くの方々は63歳でなお活発に研究・教育活動をされいて、それをキャンドルの火を吹き消すように3月31日をもって、すべて終了というのは、ご本人にとっても納得がいかないだろうし、社会全体として考えたときにも得策とはいいがたいケースが生ずる。柳田先生の場合がまさにその典型である。同氏は国際的にも突出した研究をされている研究者であり、西欧の連中から見ると、「何と残念なことか」とか、中には「しめしめ、これで強力な競争相手が一人減った」という反応になるだろう。それから、柳田先生のブログを読んでどうしても合点がいかないのは、これほど優秀で著名な先生であるから、誰しも第二の就職先が決まっていて、研究をお続けになれると思うだろう。ところが、停年20日前になっても、ご本人がどうなるのか定かでないとおっしゃる。同じようなケースは、他の停年間じかの知人からも聞く。一体日本はどうなっているのだろうと頭を抱えてしまう。一言で言って、知的財産の損失だ。日本のサイエンスを全体として考えたとき、プラスにはならない。
 それでは北米ではどうなっているのか?アメリカはほとんどの大学および主たる研究機関で研究者の停年制度はない。自分の業績や健康状態を考えて自分でやめると決めたときが退職のときである。ここで一般の読者の方のために記述しておかねばならないことは、大学教授がきわめて高度に特化した知識と経験、それに国際的な人的ネットワークを要する専門職であることだ。代わりになる人を探すのが困難な職なのである。カナダの制度はアメリカよりは日本のやり方に近く、多くの大学で65歳が停年となっている。しかし、非常にアクティブな教授の場合大学側との交渉で、停年延長がある。私の知り合いのM教授の場合、3年の延長が認められて66歳になった今も活発に研究を続けている。また、65歳で停年になっても、名誉教授として研究グラントを継続して保持できれば、研究室のスペースや人を雇うことも可能で研究は続けられる。本人は年金で生活し大学からの収入はなくなるが、毎日の研究活動は続けられる。もちろん、65歳になった人全員がそうするのではなく、多くの研究者は「後進に道を譲る」道を自ら選ぶ。個人の選択すなわち自由を尊重すると同時に、研究者自身の見識ある自己評価を促すことにもなる。最後に、トロント大学は教授の65歳停年制を廃止することをつい最近決定した。