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カナダ・エクスプレス

多倫多(トロント)在住の癌の基礎研究を専門にする科学者の自由時間ブログです。

グラント更新

2007年07月04日 | サイエンス
今年2月に書いていたCIHR(Canadian Institutes for Health Research)のグラントの結果が先週金曜日に発表になりました。幸いにして、申請してあった転写関連のグラントを更新することができ、5年間の予算がつきました。ほっとしました。

カナダのCIHRも米国のNIHと同様、このところ深刻な経済状況にあり、前回2006年9月締切りの結果は、採択率16%という最悪の状況でした。NIHは採択が10%を切っている状況ですので、それに比べればまだいいのかもしれませんが、これまで25-30%あった採択率がここまで落ちると、業績を出しているかなりの研究者がカットされる状況になっています。これはひとえにCIHRに配分される研究費の国の予算がカットされたためで、前回は総額$139Mという極めて低い状態でした。幸い今回は$249Mまで予算が回復したので、採択率は26%まで上昇しました。

どこの国でも、科学者はグラント獲得に関しては頭を痛めていると思います。競争の原理に基づく科学の進歩は存在するべきだと思いますが、成長に伴ってそれなりに投資を重ねていかない限り、健全な科学の進歩はあり得ません。今後もカナダ政府がCIHRを始めとするグラント機構を強く支援していくことを願っています。

YouTube

2007年06月23日 | サイエンス
皆さんはYouTubeを愛用されていますか?もちろんでしょうね?膨大な量のビデオクリップが公開されています。様々な文化圏に住む人々がビデオをシェアすることで、それまで思いもかけなかった文化との出会いが始まっているような気がします。国際交流の新しい道具として歓迎するべきかどうかは、利用者のモラルや見識にかかっているように思います。

さて、このYouTubeを科学者である皆さんはどう使っていますか?音楽や映画、テレビの情報も結構ですが、科学の目的に使ったことがありますか?

検索エンジンを利用して、たとえば「apoptosis」とか「signal transduction」とか、自分の興味のある用語を検索してみてください。思いがけない素晴らしいビデオを見つけられることがあります。

ただし借用するときは必ず作者に確認するか、個人発表用のスライドに使う場合は少なくとも作者に対する謝辞を付け加えることを忘れないようにしてください。著作権の侵害になってはいけませんので。

このYouTube自身、著作権の問題は大きな課題でしょう。最近、Google社がYouTubeを買ったとか。今後の成り行きを注目しています。

あっという間の一週間

2007年06月16日 | サイエンス
あっという間に一週間が過ぎ去りました。このところ会議や来客で忙しくしています。ブログを更新する機会がなかなか見つけられません。

今日は土曜日。このところ天気も上々、この週末も気温は30度近くまで上がることが予想されています。買ったばかりのバイク(自転車)で近所をサイクリングします。バイクは足、腰の運動にとても効果的だとどこかで聞いて、即実行。以前から自転車は持っていたのですが、数年前に息子に奪われて以来乗っていませんでした。脚力を付けることが私の目標とするところで、定年後にも動きままれる身体にしておきたいと思って言います。まだ先のことですが。

Otake様。私が毎朝行く病院のスターバックスでポール・マッカートニーのCDは見かけました。これが彼の65歳記念とは知りませんでした。早速購入して聞いてみます。情報ありがとう。

以前の記事を読まれたことがない方のために。Otake氏は私の高校時代の旧友です。当時ビートルズに一緒になって狂いました。それ以来30年以上会っていないと思います。でも、このブログのおかげで、ネット上でまた再会することができました。そして、多感だった青春期に共有した音楽の趣味をまた共有することができました。素晴らしいことです。

セミナー・ラッシュの月

2007年06月05日 | サイエンス
ここのところセミナーの来客が重なり、今月もほとんど毎週のように接客があります。通常スピーカーには1時間の講演をお願いします。そして、それ以外の時間を利用して、何人かの教授陣と個人面会を行い、お互いの研究を紹介したり、科学を取り巻く環境(グラントのこととか)などについて意見交換をします。そして夜は比較的小さなグループで会食をするという日程になるのが通常です。

これは、研究者のリクルートの時も基本的に同じです。その際、個人面会は候補者の人柄や性格を見極めるための重要な機会になります。今私の研究所ではまさにこの作業が進行中で、私がホスト役を務める今月のスピーカーのうち二人はリクルート目的です。

では、候補者の立場から、こういうインタビューの折にはどのようなことに留意すべきか?について少し書いてみます。まず、自分のやっている研究、すなわち科学に対する情熱を伝えることを心がけるべきであることは明白です。「enthusiasum」が伝わって来なければ印象がよくなるはずがありません。そして、自分の科学をどのくらい遠距離でとらえているか?いわゆる「big picture」をきちんと持っていて、その中で自分のやっている研究の意義をきちんと見極めているのか?これは重要なポイントです。往々にして、至近距離でしか自分の研究を理解しておらず、他の分野との関連や影響まで考えていない候補者は敬遠されがちです。大局を俯瞰する目を養うことは常日頃から心がけておいた方がいいと思います。

次に大事なのは相性。結局人と人のつながりが縁を産みます。これは万国共通です。面会する大半の科学者とうまく会話ができ、意志の疎通が図れるかどうか?科学に対する姿勢や考え方に意気投合できるのかどうか?同僚もしくは共同研究者として信頼できそうかどうか?そんな当たり前の人と人の付き合い方に関する能力が問われます。採用する側としても、今後何年、何十年という間、同僚としてやっていく相手を選ぶのですから、この点に慎重にならざるを得ないのは当然です。候補者側から考えても、うまくやっていけそうな同僚が多くいるかどうかを見極めることも重要です。「相思相愛」が理想です。長続きするからです。

最後にもうひとつ。通常一つの助教授ポストを公募すると、多い時で200-300人の応募があります。分野にもよるでしょうが、少なくても100人ぐらい。そこの中から書類選考でトップ5ないしトップ10を選び、インタビューに招待するのが通常でしょう。そのトップ5に入るためには、やはり論文リストが抜きんでている必要があります。NSC三大雑誌にファーストオサーで論文があれば、かなりの高い確率で残ります(研究の客観的な判断を商業誌に託す現状は問題ですが、これが現実です)。それから、将来どういう方向で研究を進めたいかということを示した研究提案書(2-3ページ)の内容も比重を持ちます。ポスドクでやっている仕事は所詮そのラボのボスの仕事です。ですから、研究提案書は、候補者が自分の持っている想像力やオリジナリティーをアピールするための重要な機会とも言えます。有効に自己主張をしましょう。この善し悪しが、候補者の将来性を判断するのに重要なファクターとなるからです。Natureの論文はあるけど、研究提案が貧弱というケースがあります。こういう人はテクニシャンに向いていると判断されかねません。それから、研究提案書は上に述べた「趨勢を見極めているか」の判断材料にもなります。将来の展望(夢でいい!)を思い切って書いた方が面白がられます。

あっと、それから、もちろん書類選考の段階では、推薦状の重みは無視できません。通常三通の推薦状があるのが好ましい。それも、できれば候補者をよく知っていて、影響力のある著名な研究者からの手紙が、「ものを言います」。推薦状の中には、巧言令色ばかりのあまり役に立たないものもありますが、率直に客観的に候補者の長所短所を指摘してあるものもあります。それから行間にそれとなく短所を指摘するような手紙があります。とにかく、いい推薦状を書いてもらえるような先生を少なくとも三人は確保しておくことは重要です。

話しはもどりますが、そんなわけで今月はまた会食が続きます。また太りそうです。もっと運動しないとだめですね。

グラント終了そして欧州へ

2007年02月27日 | サイエンス
本日無事CIHRのグラントを送りました。とは言っても、今回から申請書の送付がすべてオンラインになったので、私のアシスタントがすべての書類をPDFファイルとしてアップロードして、「申請ボタン」をクリックして終わりでした。これまで、何十部というコピーを用意してそれをFedExで送るのが最後の作業でしたが、これからは紙がずいぶん節約されます。ただ、CIHRの方で必要な部数だけプリントしているでしょうから、資源節約の観点からはあまり変化はないのかもしれませんが。こちらの労力と経費節約にはなっています。

さて今日からスイスへ出張です。ところが外はかなり雪が降っていて、私の乗る予定の飛行機の出発時刻が遅れていて、現在待機中です。

最澄の言ったこと

2007年02月11日 | サイエンス
日本の天台宗の開祖である最澄は、比叡山に仏教を学ぶ「大学」を設立した人である。当時(平安初期)仏教こそが、最もファッショナブルな学問であったわけで、その最先端の学問を学び研究しようという志しを持って最澄に師事し、比叡の山に来た学生がたくさんいた。(これは余談だが、彼が専攻した天台仏教は当時の中国仏教界では古びたものであったようだ。最澄は承知の上である。)

いずれにしても、最澄は日本初の壮大な学問の府を比叡の山に作ろうとしていた。そして、大変興味深いことだが、彼は学生たちに12年の就業を義務づけた。そして、最初の6年は「聞慧(もんえ)」、すなわち基本的な仏教概念を書物から学ぶことを第一とし、残りの6年は「思修(ししゅう)」、すなわち自分で考えて自分の解釈やアイデアで学問を修めよ、と言ったそうだ。1200年も前に言われていたことが、今でも通用することに感慨を覚える。

現在の教育システムにおいて、小学校から高校までを「聞慧」の時期とし、大学から大学院は「思修」の時期とするべきではないだろうか?と私は思う。ところが現在の大学教育は、教科書の知識の詰め込みと試験攻めで、学生に考える力をつけさせる機会を与えているとは思えないのである。そういう訓練に慣らされた学生は大学院に入っても、まだ課題(もしくは宿題)をこなすような態度から抜けきれないでいる。自分で自分の研究を開拓していこうという考えさえ浮かばないでいるような大学院生を作り出してはいないだろうか?

心よりのおめでとう!

2007年02月06日 | サイエンス
Ryoheiさん、YGさん、お二人とも始めてのグラント獲得、おめでとうございます!

こういうグッドニュースを聞くと、こちらまで明るくなります。予定していたより少ない予算しか配分されなかったからといって、しょげることはありません。これは一様に誰にでも起こっていることですので、とりあえず自分の研究が認められたことを素直に喜べばいいと思います。

お二人さん、ほんとうにおめでとう!おそらく、YGさんのCIHRは3年のグラント、RyoheiさんのNIHグラントは5年でしたね。5年は長いようであっという間に来ます。今からリニューアルに備えて成果をいち早く出すことを考え始めても、早すぎることはありません。がんばってください。

グラントに関する質問へのコメント

2007年02月04日 | サイエンス
いまCIHRのリニューアルグラントを書いている最中です。何通かグラントに関してコメントをいただきましたので、今日はこのことについて書いてみます。

まず、Ryoheiさん、最初のグラントで18%は大した物です。こんなことであきらめず、地道に成果を出して、よい論文を発表し、再度挑戦すれば必ず通ります。がんばってください。

YGさんの質問ですが、CIHR(以前はMRC)のグラント採択率が20%を切って、さらに予算もかなり減額されるという状況は以前にも何回かありました。私の知る限り、90年代に2回ありました。その都度メディア等を通して大騒ぎをして、予算が見直されるというのがこれまでの例です。ですから、今回もおそらくいづれはもとの様な状況に戻ると思います。おそらく早くてこの秋、もしかしたら来年まで待たなければならないかも知れないというのが大方の予想でしょう。この3月の締め切り分が一番厳しいというのがもっぱらの評判です。私もこの厳しい状況下でリニューアルがあります。どうなりますか...

数日前のカナダの全国紙『Globe and Mail』にMcGillの若手脳科学者Chris Parkの記事が載っていました。タイトルは「Slim budgets blunt cutting-edge research」というものです。Park博士は、同大学の将来のエースとして2005年に高待遇でHarvardから引き抜かれました。以前にも紹介したカナダ政府のResearch ChairとCFI(Canadian Foundation for Innovation)の大型装置購入予算のおかげで、優秀な研究者が獲得でき、着任前に必要な設備の予算は確保されました。しかしながら、着任後Park博士がCIHRに申請したオペレーティンググラント(運営費に相当)は承認はされたものの、彼が必要とする予算から44%も削られて、予定していたスタッフを集めることができず頭を抱えている、という内容です。紙面では、たとえ話しとして、ベーカリーに必要なオーブンや器具はみんな整ったけれども、肝心の小麦粉やイーストを買うお金や人を雇うお金がない、と紹介していました。カナダ政府の科学技術政策に矛盾を投げかけた記事の内容です。こういう話しをおおやけにして、政府を動かすというのがこの国のやり方のように思えます。他にも例はありますが、ここでは触れません。

米国の状況は、より深刻な政治問題をはらんでいますので、早急な解決がなされるかどうかちょっと心配です。米国の友人の話しを聞く限り、来年の大統領選挙まで状況が変化するようには思えません。何としても選挙の後は政治が大きく方向転換することを期待するのみです。あまり長い氷河期が続くと、米国の科学をダメにしかねません。

1月の始めにあったキーストーンの会議で聞いた話しですが、キーストーンシンポジウム全体の参加者がこのところ激減しているそうです。NIHのグラントの採択率が現在のような状況なので、教授たちが学生やポスドクをコンフェランスにも出せなくなっています。今日のサイエンスで最も大事な情報交換にも大きな悪影響を及ぼしていうるわけで、これは大変深刻な事態ですし、憂慮せざるにはいられません。引いては科学全体の進歩を減速させています。

羽生善治の一言

2007年01月22日 | サイエンス
将棋の羽生善治三冠が雑誌『なごみ』(2006年7月号)のインタビューの中でこういうことを言っています。

『将棋というものは、「いかに多くの手を考えるか」ではなくて「いかに必要のない手を捨てるか」ということが大事なんです。(中略)「こういう手は指したくないから考えない」あるいは「最初から考えない」とうのがたくさんあって、瞬間的に必要不必要を判断する。』

物事に秀でた人の語るまさに達人の一言ですね。このことは、将棋に限ったことではなく、人生全般、そして科学者の生き方にもつながるところがあり、感銘を受けずにはいられません。

人生のあらゆる場面で、その時その時で何が大切か、何が必要でないかを瞬時に見極め、行動に移すことが成功のカギだと、羽生の言葉は語っています。時間は刻々と過ぎていきますし、人間の頭脳にも限界があります。目の前にあることすべてができるわけでもありません。頭に浮かぶすべてのことをやれるわけでもありません。そんな中で、研ぎ澄まされた感性(もしくは直感)を持って、必要不必要を見極め、選択肢を瞬時に絞込み、それに向けて突進する。競争の激しい実験科学の世界にも当てはまります。羽生は将棋の世界でこの「処世術」が勝利のカギであることを実証しています。

もちろん、この感性を身につけるには努力が必要です。それは、経験によって養われものです。また、よき師(もしくは尊敬できる人や友人)を持つことも大切でしょう。そして、最後はやはり、本人のたゆみない努力と熟考が不可欠です。

三十六歳になる将棋の達人、羽生の言葉には深い重みがあります。

グラントの話し

2007年01月18日 | サイエンス
米国のNIHのグラント採択率が極端に悪くなっていることをご存知でしょうか?最新の情報では10%前後まで低下してきているとのことです。すなわち、10人に1人しかグラントが当たりません。新規グラントの採択率は更新グラントの採択率よりかなり低くなるので、始めてグラントを申請するような若い科学者の採択率は、分野にもよりますが、おそらく5%近くまで低下しているのではないでしょうか?これは実に深刻な問題です。育つべき若い研究者の芽は適度の水と肥料によって始めて開花するわけで、水も何も与えられない状況下では新しい芽は育ちません。

なぜ米国のサイエンスがこのような深刻な事態に陥っているのか?それはとりもなおさず科学技術にまわされる予算が頭打ち状況にあるからです。国の予算が現大統領の指揮の下に重点的に他の目的に使われている今の現状を打開しない限り、状況は変わらなさそうです。

これに呼応するように、カナダの国の科学技術予算も現保守党政府のもと伸び悩んでいて、米国ほどではないにせよ、現状は決して良好とはいえません。同時に、各地の大学や研究所では、カナダ政府が過去数年にわたって行ってきたブレインドレイン停止政策(すなわちCanada Research Chair)の恩恵で、研究者の人数は増える一方です。問題は、研究者の数は増えても全体のグラント総額が頭打ちの状態にあれば、同じサイズのケーキをたくさんに切って分け合うか、それともケーキを食べられる人と食べられない人の数の比がどんどん悪い方向にいくか、どちらかしかありません。

また、以前にも問題にした大型予算のプロジェクトグラントによって個人グラントへの予算配分が圧迫を受けている現状も少なからずあります。

現在の状況は一刻も早く改善されるべきですが、カナダにしろ米国にしろ政治レベルでの裁量にかかっているので我々の手でどうすることもできない状況です。

私も2月末に更新グラントの締め切りがあり、現在申請書と奮闘中です。

明日からユタ

2007年01月06日 | サイエンス
明日から11日まで学会(キーストーンシンポジウム)でユタ州スノーバードというスキーリゾートに行ってきます。この会のオーガナイザーの一人でもありますので、スキーをする暇が見つからないかもしれません。発表もあります。

トロントからはデンバー経由でソルトレイクシティーに入るのですが、息子の情報によると、デンバーのあたりでロシアのロケットが大気圏へ突入して炎上したそうですね。物騒な世の中です。頭の上から何が降ってくるかわかりません。

旅行中は、なかなか更新できないかもしれません。あしからず。

信じられないほどの暖かさ

2007年01月03日 | サイエンス
トロントはこのところ記録的な暖かさが続いています。昨日、元旦も朝から天気がよく初春のような陽気でした。雪はなく、近くにあるドンリバーという小川も今年はまったく凍っていません。こんなお正月は初めてです。

日本も暖かいと聞きますがいかがでしょうか?コロラドやカナダのマニトバ地方では大雪だと聞きます。このまま冬が終わるとは思えませんので、トロントにもいづれは寒波が到来し雪に悩まされる日々が来ることでしょう。

こちらは今週から通常通りです。この週末から始まるキーストーンミーティングの準備やら研究所の会議が続くので今週は忙しくなりそうです。

エーデルマンの『脳は空より広いか』

2006年12月02日 | サイエンス
ノーベル医学・生理学賞受賞者(1972年)で、現在サンディエゴのスクリプス研究所神経生物学部門長であるジェラルド・エーデルマン(Gerald Edelman)博士の著書『Wider than the Sky - the phenomenal gift of consciousness』の邦訳書『脳は空より広いか-「私」という現象を考える』(草思社)が出版されました。

本当にエーデルマンを理解するのは大変ですが、一般書として書かれたこの本は、ニューラルダーウィニズムやダイナミックコア仮説などの新しい視点で、意識の本質をわかりやすく解説しています。エーデルマンは、数十年前から「意識」を進化の産物として一貫してとらえてきました。この本では、意識やクオリアが脳のどのような組織化から生まれてくるのかを、彼の独自の視点で説明しています。ノーベル賞受賞対象となった細胞接着に関する細胞分子生物学の古い仕事もすべて包含されています。すごい人です。

PNEエッセイ「科学者:私の選択」

2006年11月16日 | サイエンス
今回が『蛋白質核酸酵素』のエッセイシリーズの最終版です。2006年8月号に掲載された「科学者:私の選択」を紹介します。(タイトルをクリックすると、PDFファイルがダウンロードできます。)

先日"postdoc to be"さんからいただいたコメントにあるように、若い科学者の皆さんの中には、これからどうやって自分の進む道を選んだらよいのか、悩んでいらっしゃるかたも多いだろう。私の経験が読者の参考になるかはわからないが、私がどのように科学者の道を歩んできたかについて、そのターニングポイントを自分なりに解析しながら、紹介することにした。

前にも述べたが、最終的にはあなたの判断、あなたの決断がすべてであって、既存のレールのようなものを探すだけでは「自分の道」は見出せないだろう。大平原を全速力で疾走する若い力や、大海の海原に思いっきりよく飛び込む勇気があってこそ、「自分の道」が開けるのではないかと思う。

五回にわたって紹介したPNEエッセイも本日で終了。読んでくださった皆さん、本当にありがとう。

PNEエッセイ「学会、旅、あれこれ」

2006年11月15日 | サイエンス
蛋白質核酸酵素』エッセイシリーズ第四弾、2006年5月号に掲載された「学会、旅、あれこれ」を紹介します。

気軽な読み物として書いたエッセイで、学会で知り合った人たちのこと、とある空港での大発見、私の大好きな食べ物の話し、時差ぼけ対策、などなど思いつくまま書いてみました。

研究者としての一番の楽しみは、誰も知らない新しい事実に遭遇したときだけでなく、世界中の様々な国の人たちと科学という共通言語を通して、親しくなれることだと、私は思います。自分の考えに基づいて仮説を試したり、実験に没頭したり、そしてまた考えたり...そして、学会等で世界中の色んな場所を訪れることができる。そして、訪れた国々で同じ学問を話題にして語り合う友人、知人をつくることができる。こんな職業が他にあるでしょうか? 頭のいたいグラントのことなどすっかり忘れて、まあ、そんな楽しい内容のエッセイにしたかったのですが、いかがでしょうか?