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カナダ・エクスプレス

多倫多(トロント)在住の癌の基礎研究を専門にする科学者の自由時間ブログです。

皆既日食

2009年07月23日 | サイエンス
日本を含めたアジアの一部の地域で皆既日食が観測されました。自然現象の偉大なるドラマをたくさんの人が見られたのだと思います。今世紀最長の6分39秒の完全皆既日食だったとのことです。

日本語の語源は、「(月が)日を食べる」ということなのでしょうか?恐怖感を表現しているようですね。ヒンズー教でも、日食を神がいなくなるとして恐れるそうです。ちなみに英語では「solar eclipse」もしくは「total eclipse」です。語源はよく知りませんが、こういうことを調べはじめると面白くなって、夜も眠れなくなりそうです。

残念ながら北米は今回の皆既日食の対象外でした。私も一度皆既日食を見てみたいと思っています。日本では26年後だとか。それまで、我が肉体がもつかどうか、ちょっと心配です。

夏のバーベキューパーティー

2009年07月13日 | サイエンス
7月10日(金)はラボの恒例Summer BBQパーティーでした。今回は大人だけで30人を超えたので、どのくらいの量の料理を用意すればいいのか、ちょっと見当がつきませんでした。準備も普段より時間がかかったのですが、幸いピッツバーグから昨年同様I博士が駆けつけてくれて、準備も後片付けも手伝ってくれたので大変助かりました。

それから、今回はカリフォルニアからA博士夫妻も参加してくれました。Iさんも、Aさんも10年以上も前に私のラボのポスドクでしたが、今では立派な教授になって活躍しています。さらに、以前私のラボでテクニシャンをしていたKさんとFさんも来てくれたので、私のラボ出身者の同窓会のようになりました。

天気ももってくれて、作った料理もほぼ完璧になくなりました。サラダとBBQのビーフが少し残りましたが、学生諸君のおみあげで持っていってもらったので、うまく片付きました。

このパーティーが終わると、夏も本格的になってきて、すぐに秋風が吹き始めるような気がします。今年も無事終わって本当によかった。

ゴードン会議でイタリアへ

2009年06月22日 | サイエンス
ゴードン会議に出席するため、昨日イタリアに入りました。ピサの近くのリゾートで行われます。あまりにも有名なピサの斜塔を昨日見てきました。百聞は一見にしかず、とはこのことですね。素晴らしい世界遺産を見ることができました。

ピサの町は小さくて、古い町並みがそのまま残っているので、散策にはもってこいです。本当によく歩きました。でも日ごろ鍛えてあるせいか(笑)、何時間も歩いてもなんともありませんでした。

さきほど会場のホテルにシャトルバスで入り、夕食の後のセッションを聞いたあと、部屋に戻ってきました。しばらくぶりのブログ更新ですみませんでした。会場の写真を近日中にアップします。

大学院デパートメントの50周年

2009年05月16日 | サイエンス
昨日から、私が所属するトロント大学医学部医学生物物理研究科の創立50周年を記念するシンポジウムが始まりました。大学院生主催のシンポジウムで始まり、今日は卒業生で現在各地で活躍している人々のセミナーがあります。そして夜は晩餐会です。

生物物理科はオンタリオ癌研究所がもともと母体であって、当初放射線物理やイメージング研究が主力であったため、物理の名前が残っています。しかしながら、私が赴任してきた20年前にはすでに、細胞分子生物学が主流になっていて、McCulloch博士とTill博士によるステムセルの発見によって一躍有名になりました。それに続いて、Pグライコプロテインで有名なLing博士、T細胞受容体の発見で著名なMak博士を輩出して、OCIと本研究学科の名前は世界的にもかなり知られるようになりました。

今日はこのデパートメントを築いてきた諸先輩方と交流を深めたいと思っています。

海外武者修行?支援

2009年04月18日 | サイエンス
今日の読売オンラインに「若手研究者の海外武者修行を支援、政府が渡航費や滞在費」というタイトルの記事が出ていた。5年間で1万5000人~3万人の若手研究者や大学院生に渡航費と滞在費を支給し、海外の大学や研究機関へ数か月から1年程度、派遣する構想。300億円の基金創設を、2009年度補正予算案に盛り込む、という。歓迎すべきことである。

若手研究者が海外に留学しなくなってきた傾向は90年代に始まったことである。日本の研究設備の向上やポスドク制度の導入で、海外に行く必要がなくなった状況もある。そして、社会現象として、若い人たちがリスクを避け、「平凡」かつ「安全」な生活を望むようになってきたこともあるだろう。ただ、この「安全神話」も、経済不安の中、崩れていきている。

知的層としてこれからの日本を考え、築いていく人たちが、あまり冒険を望まない。そして、経済が低迷し、社会的にも上昇気流が見えてこない現状にあって、日本と言う国の将来を考えると、いささか不安になってくるのは私だけだろうか?

若い研究者に呼びかけたい。リスクを怖がらず、前向きに未知の世界に飛び込んでみることから、何か新しいものが生まれてくることに気づいてほしい。海外で学ぶことも、その一つであろう。きっと新しい何かが見つけられるはずである。それを求めてまっしぐらに進むことが一番大事だと私は思う。今回の海外派遣支援のチャンスをぜひともうまく使ってほしい。

ところで、本当に日本の中で研究することにくらべて、海外に出て研究するほうが、大変なのだろうか?こういう先入観から、「武者修行」という言葉が三大新聞の記事タイトルになるのだろうが、いささか時代錯誤ではないか?と私は思う。確かに競争主義の原理を原点とする北米社会では厳しい現実に遭遇することもある。研究環境、研究生活という観点から考えると、研究者として日本でキャリアを積んでいくほうがはるかに大変で、苦労が多いことを、大学教授をしている私の日本の知人からの話として知っている。私は北米での研究生活がもう21年になるが、こちらでの研究及び生活環境がまんざらではないと感じられることに、感謝すらしている。

私がよく参加する学会やシンポジウムのポスター会場でこちらの若手研究者が目を輝かせて自分のポスターを説明する光景や、講演発表の会場で積極的に質問をする彼らの姿が、私には研究者としてより自然に写るし、生き生きと感じられる。こういうはつらつさが、日本の若手研究者にもっとあってもいいのではないか?彼らがそうできるような環境を作っていかなければならないと言うのが私の主張である。日本を内から変えていくことにも、予算を投じて力を入れてほしいものだ。



また出張でした

2009年04月10日 | サイエンス
日曜から水曜まで、British Columbiaへ出張していました。癌の免疫療法のシンポジウムがウイスラーであり、その後バンクーバーで親しい友人の研究室を訪れ研究打ち合わせや歓談をして、夜はTojoという有名な寿司レストランで、その友人と楽しく交友を深めることができました。彼は、今年「Order of Canada」を称号を授与される極めて著名な研究者です。L博士、本当におめでとうございます!

これまで数ヶ月出張が続いていたのですが、これからしばらく(2ヶ月ほど)出張がありません。週末は自宅でゆっくりすることができそうです。そして、山積みになった論文を片付けなければなりません。がんばらねば。。。

この週末はイースターです。今日はGood Fridayで休日です。天気もいいので、これから朝の散歩に出かけます。しばらくぶりです。愛犬の子犬Nanaを始めて外に連れて出ようかと思っています。

これからトロントにも待ちわびた春が訪れます。これからの季節は最高です。春に乾杯!

カリフォルニアの青い空

2009年03月30日 | サイエンス
UC Davis校で行われたシンポジウムに出席のため先週はサンフランシスコからDavisに行きました。ベイエリアからは2時間ほどのところにあり、ワインで有名なNapa Valleyが近くにあります。町は大学を中心に発展してきたようで、大学の周りに閑静な住宅街がある住み心地のよさそうなところです。それにしても、自転車の数には驚きました。どこへ行ってもマウンテンバイクだらけです。

同大学のA教授に自宅にお世話になり、よい週末を過ごすことができました。土曜の朝に出かけたファーマーズマーケットには、たくさんの人が来ていました。人力のメリーゴーランドが大活躍しており、何だかタイムマシンに乗ったような感じがしました。

昨日(日曜)、DavisからSF、サンタクルーズ経由でAsilomarに来ました。ここで学会があります。この地は私にとっては懐かしい場所です。ちょうど20年前、アメリカに来た翌年だったと思いますが、同じ学会に出席するため、家族でAsilomarに滞在しました。太平洋が目前に迫る大変美しい景観の場所です。近くにMontereyやCarmelといった有名な町もあります。

それにしても、カリフォルニアの空は何でこんなに青いのでしょうか?!


NIH Stimulus Package

2009年03月21日 | サイエンス
オバマ政権が次々に新しい政策を打ち出しています。昨日はテレビを通してイランの政権とイラン国民に、対話への道を呼びかけたとか。。。

科学技術へもオバマ政権は大変関心を持っているようです。特に医学関係では、幹細胞研究支援再開を打ち出し、さらに、NIHに10兆円近いStimulus Packageを与えるという話です。これまで前政権下で極度に冷え切っていたNIHの予算に関して、はっきりと方向転換を形で示したことは極めて意義深いもので、科学者としては大いに歓迎すべき政策です。もちろん、経済刺激、消費刺激を狙っているわけではあります。

ただ、この予算の大部分をきわめて短期間(約二年以内)に急いで使わなければならないという制約があり、手放しでは喜べない部分もあります。これは、いうまでもなく経済効果を狙っているためです。サイエンスは長い時間のスパンの中で科学者の努力の結晶として、新しいものが生まれてくるわけで、二年以内でいいものを早く出せ、というような発想では、予算の有効利用を考えたとき、大変無理があるように思います。

何はともあれ、これまでR01のグラントの平均競争率が10%前後だったのが、これで是正されるはずです。どうか、今後のアメリカの投資が短期的なものでなく、長期的な計画を持って、サイエンスの発展に貢献していくことを願ってやみません。もちろん、日本の科学技術投資の健全な成長も心から願っています。

久しぶりのボストン

2009年03月02日 | サイエンス
Biophysical Societyの年会のシンポジウムに招待されて、久しぶりにボストンに来ました。トロントからは一時間半のフライトですので、ちょうど東京から札幌に飛ぶ感じです。空港からハーバーにあるコンベンションセンターの会場までは15分足らずでした。タクシーの運転手さんが、空港からダウンタウンへ伸びているトンネルを自慢していました。よく覚えていませんが、ずいぶん昔にDCから運んできた廃材で作ったのだとかと言っていました。

会場のコンベンションセンターに着いて、その広さに圧倒されました。私の発表のある会場も500人以上は座れるでしょうか。。。いったい何人の参加者がいるのだろうか?私の推測では全体で3000人ぐらいの規模ではないでしょうか?

無事講演も終わってホテルに着きました。一晩泊まって、明日トロントに戻ります。明日がグラントの締め切りです。とにかくこのところ忙しすぎます。

外は雪です。明日飛行機が飛ぶことだけを祈って寝ることにします。

終わりました

2009年02月21日 | サイエンス
サンタフェで開催されていたキーストーンミーティングが無事終了しました。期間中は忙しくて、なかなかブログを書けませんでした。会議が無事終わってほっとしています。そして、無事に帰宅しました。

オーガナイザーとして一番うれしいことは、参加者から「とってもいいプログラムだったよ」と言われることです。苦心して考えた内容だけに、本当にこの言葉が一番うれしく思いました。

サンタフェはいい町です。サウスウエスト料理を期間中存分に楽しみました。でもあんな量が多くて、カロリーの高い料理を毎日食べていたら、どうなるのかと思いました。

さて、今週中にグラントを完成させなければなりません。早速「Back to work」です。

サンタフェへ

2009年02月17日 | サイエンス
昨日からニューメキシコ州サンタフェで始まったキーストーンNMRシンポジウムに来ています。オーストリアからトロントに戻り、一日家にいて、また会議です。

このシンポジウムは私がオーガナイザーの一人ですので忙しいです。ちょっとスキーをする暇はなさそうです。また、サンタフェの様子を写真でお見せします。

ランチに友人と行って来ます。

帰宅

2009年01月24日 | サイエンス
アメリカの大学でのセミナーを無事終了し、本日帰宅しました。トロントのピアソン空港に到着すると、外気温は0度で、とても暖かいのです。驚きました。

ピッツバーグでは長年の知り合いであるG教授の歓待を受けました。そして、私のラボにポスドクでいたことのあるI博士がいまでは立派にこちらの大学の助教授になっていて、滞在中はドライブをしてもらったり、色々お世話になりました。「Typhoon」という名のタイ料理のレストランで皆と和気あいあいの会食をして、楽しいひとときを過ごすことができました。とても美味しい店でした。

翌日、空港に向かう前、長年の友人であるP教授がホテルまで尋ねてきてくれて、一緒に朝食を食べながら、また楽しいひとときを過ごしました。彼は10年前まではモントリオールのMcGill大学で研究をしていたカナダ人です。私と同年代の彼にはもう孫がいるというので、驚きました。そして、同年代の息子を二人とも持っているので、「君のところも直ぐさ」、と言われて、ちょっとドキッとしました。まだ、「おじいさんになる心構えができていないよ」、と答えておきました。

今回の旅は、行く前は空港の警備などのことを考えて、あまり強く気が進みませんでしたが、本当に心から行ってよかったと思っています。たくさんの研究者に会い、いろんな話を聞き勉強になりましたし、古くからの友人に久しぶりにあえて、本当に有意義でした。皆さん、ありがとう。

セミナー・ツアー

2009年01月21日 | サイエンス
今朝4時半おきで早朝の飛行機にのり、インディアナ州のWest LafayetteにあるPurdue大学に来ています。今日は、ご存知のとおり米国の大統領就任式があったので、空港の警備が厳重で大変かと思っていましたが、それほどでもありませんでした。Customsで少し並びましたが、担当官には「Enjoy your visit!」などとgreetingされて、気味が悪いほどでした。アメリカが今後よい方向に進むことを願ってやみません。オバマ新大統領に多くの期待が集まっています。

ここPurdue大学は大きな敷地にたくさんの学生を抱えるアメリカでも有数の総合大学です。今日は教授陣と色々面談して話をききました。明日も午前中は個人面談、そして私のセミナーと続きます。その後すぐに空港に向かい、Pittsburghの飛びます。

忙しい日程ですが、各地の大学の研究者に会うことはそれなりに楽しみです。また、地方の文化らしきものにも少しだけ接することができるからです。Purdueの人たちは気さくで人懐っこい印象を持ちました。トロントと同じく東海岸時間なのですね、ここは。シカゴがすぐそこなのに。。。

ではあしたのセミナーの準備をします。

またまたグラントシーズン

2009年01月17日 | サイエンス
このところトロントは冷凍庫の中に入っているような寒さです。一昨日は、朝起きたときの外気温がマイナス23度でした。これはさすがに寒いです。でも乾燥しているので、肌が引き締まる感じはしますが、不快ではありません。日本で摂氏ゼロ度前後で湿気があり、風が吹いているときの寒さとは、かなり感じが違います。JRのホームに立っているときなど、じわじわと本当に辛いですね。ああゆう寒さとは、ちょっと質的に違っていて、ピリッとする寒さです。瞬間的で少しの時間なら「さわやか」とまでは言いませんが、そんな感触があります。

ところで、またグラントのシーズンです。2月中旬の締め切りのグラントと3月初めの締め切りのグラントがあります。それを今必死になって書いています。前者のグラントは新規プロジェクトですが、後者のグラントは長年持っているグラントのリニューアルです。グラントを書いていると今後の研究計画も煮詰まってくるといういい効果があります。プロジェクトに関してじっくり考えるからです。がんばります。


Why Science?

2008年10月24日 | サイエンス
人から「なぜサイエンスをやるのですか?(Why Science?)」と聞かれることがある。日本の学生さんの中には、私のセミナーを聞いて、なぜこんなに情熱をもってできるのかと思う人がいるらしい。「バカだから」と答えるのが、その場しのぎで体裁のいい答えにはなるが、それは何の役にも立たない。

それじゃあ、本当に心から答えるとするとどういう答えになるのだろう?私は三つのメッセージをもって返答したい。

1.真実を知る
2.未知を知る
3.将来を知る

これがサイエンスの存在する所以だと考える。当たり前の答えのように思う方もいるかも知れないが、この三つのことを知ることこそが、本当に面白くて、わくわくするから、今でもサイエンスを飽きずにやっているのだと思う。

ある生命現象に興味をそそられる。今年度のノーベル化学賞に輝かれた下村先生の研究がよい例である。オワンクラゲがなぜ緑に光るのだろう?という素朴な疑問がうまれる。真実が知りたくなる。人類にとって未知の領域である。化学のアプローチで必死でその答えを探す。まさにこれこそサイエンスである。時間はかかる。人手もいる。お金もそれなりにいる。しかし、その答えがついにわかったとき、それはたとえようのない快感であり、何ものにも変えがたい経験である。そして、その発見が将来を創造する。オワンクラゲの蛍光蛋白質がいまや癌研究の最前線で使われている。クラゲがなぜ光るのか?という素朴な基礎研究があればこそ、現代医学は進歩し、一人でも多くの人命を救うことにつながっているである。

今の若い人たちは、冒険をしないといわれる。未知への挑戦を避け、現状と安定を重要視するのだという。自分の将来を真剣に考えているからこそ、打算的になってしまうという見方もできるかも知れない。しかし、本当にそれが彼らの将来の安定や幸せにつながっていくのだろうか、と私は疑問に思う。そして、この国の将来が心配になってくる。

サイエンスにしろ、他の職種にしろ、冒険を避けていては、新しい道が開かれないと私は思う。自分がこれをやりたいと思うことが見つかれば、周りの状況や他の人たちがどう思うかなどという些細なことには目もくれず、とにかく決めた道に一直線に進んでいく勇気がほしい。その強い意志こそが、どれほどのエネルギーを生みだして、困難を乗り越える力になるかは計り知れない。ひいては、この国の活力になるのである。

サイエンスの最先端で研究している研究者を見る限り、サイエンスは情熱やエネルギーを満身にもって打ち込んでいる人たちの「意志」で前進しているのだと私は思う。あなたも、そのエネルギーを生み出す一人になってみてはいかがですか?

サイエンスは面白い。