四国遍路テクテク日記

「四国を歩いて遍路する。」にこだわって平成14年のGWから2年間、5回に分けて歩いた記録を中心に遍路に関するあれこれ。

平成15年12月29日(伊豫から讃岐・第29日目)

2005-08-16 09:49:54 | 第4回(伊予から讃岐)
12月29日(月曜日)
 (第3日目・通算第29日目・歩行距離 30.9km・歩行歩数47,827歩)

 6:00分、いつものように布団を出る。

 6:30分、1階の食堂で朝食を取る。

 テレビで天気予報を見ると、今日から少し寒波がゆるみ暖かくなると
報じている。

 ちょっと早いけれど、用意もできたので5:50分に笑福旅館を出る。
太山寺への道は旅館の前の道を真っ直ぐに歩けばよい。
女将さんに挨拶して玄関を出る。
夜明け前の薄暗い空が少しずつ明るくなってくる。


第76番札所 泰山寺

 7:25分、泰山寺に着く。
お城の石垣のような造りの壁を回り、階段を上がると境内だ。
ようやく日が射してまぶしくなってきた本堂と大師堂にお参りをするが、
私の他にお参りをしている人はいない。

 お参りを終えて納経所へ行くと中年の女性が一人納経帳を持って
ウロウロしている。
どうやら、納経所に誰もいないのでどうしたら良いか分からないようだ。
納経所にあるベルを押してあげると、奥の方から住職らしい人が出てくる。
中年女性が先に納経をすると、お礼を言って足早に境内をかけていく。

 次の栄福寺まで約3キロの道のりだ。
畑の中に続く道を歩いていると、向こうから犬の散歩をしているご夫婦が
やってくる。
挨拶をして歩いていくと、お地蔵さんと一緒に遍路石のある交差点に来る。
お地蔵さんは雨がかからないように小さな屋根が付けられた囲いの中にあり、
遍利石の指は狭い路地の先を指している。

 その差した指先に従ってしばらく歩くと、蒼社川にぶつかり堤防の上を右に
曲がって歩く。堤防の上が抜け道となっているのか車の量が多い。

 川に架かっている橋を渡り、左にある農道を歩いて行くと、
道はさらにあぜ道のようなせまい道になり、小高い山を回り込むように
続いている。

ほどなく、栄福寺の駐車場が見えてきた。


第57番札所 栄福寺

 8:15分、栄福寺に着く。
栄福寺は、小さなお寺だ。本堂も大師堂も小さく可愛らしい造りだ。
山陰にあるので日も射さず、ちょっと寒い。

 本堂と大師堂にお参りを済ませ、納経も終えると、ベンチでちょっと休む。

 ここから仙遊寺までは距離は2.5キロとさほどではないが、
仙遊寺は山の上にあるので標高差を考えると1時間弱はかかると覚悟している。
 
 8:30分、栄福寺から仙遊寺に向かう。
道はすぐに登り坂となり、溜池の上に向かって階段になる。
溜池の上に出る。この溜池は犬塚池だ。ここから山を見ると、
中腹に仙遊寺らしい瓦屋根の建物が見えている。

農道を歩いていくと、あちらこちらにお地蔵さんが祀ってある。
手を合わせながら歩いていき、ふと後ろを振り返ると、今治の街が一望できる。
しまなみ街道の橋が島々を繋いで広島方面へ続いているのがよく見える。
今治の街には朝日が当たりキラキラと輝いている。
今日歩いてきた道が一望できるので、南光坊から栄福寺までの道を目で
追ってみる。

 ほどなく、仙遊寺の山門に着く。
この山門から歩きは直登出来るが、車は右の車道を上ることになる。


第58番札所 仙遊寺

山門をくぐると、道はいきなり暗く狭い沢の中を階段となって
上へ上へと続いている。
この階段を一生懸命登ると、汗が一気に吹き出してくる。
でも、5分ほどで境内に出る。

 9:00分、ちょうど仙遊寺の境内に着く。

 ちょうど本堂に日が射し込んでいる。本堂の屋根が光の中で輝いている。
本堂の奥の方にも日差しがのびているので、その日差しを背中に受けながら
お経を唱える。
本堂の右奥にある大師堂には日が当たっていないので少し寒い。

 納経所は本堂の中にあるので、もう一度本堂へ行く。
本堂の前にあるベンチに座っていると、小学生の女の子が一生懸命ほうきで
庭を掃いている。
お父さんの手伝いをしているが、お父さんから小さな石を集めているだけで
ゴミのないところは掃かなくてもいいと言われ、ちょっと不満顔をしている。
元気なコロコロした子供だ。

 老人が話しかけてくる。
この老人も庭の掃除に来たようだ。
「どこから来た、歩いているのか?」と言われたので、
「そうです。札幌から来ています。」と言うと、これからの道を教えてくれたが、
方言でちょっと聞きづらかった。
お礼を言って、仙遊寺を後にする。
帰りは車道を下ることにした。

 仙遊寺からはJR伊予富田駅に向かうコースと五台山に向かうコースがあるが、
お爺さんの行っていたコースは溜池の手前を右に曲がれといわれたので、
五台山コースを選択する。

 山道をドンドン下っていくと、農道に出る。
そのままさらに下っていくと、なるほど、十字路の向こうに溜池がある。
この十字路を右に曲がってドンドン歩く。
五台山の入り口を過ぎたあたりから、道が分からなくなった。
国分寺のある方角よりドンドン右の方にそれているような気がする。
適当に補正して歩いていくと、牛を飼っている農家があるので道を聞いたが
よく分からない。
ズート先の方に交通量のある道路が見えているので、取りあえずそちらに
向かって歩いていく。

 もう少しで広い道に出るといったところで、後ろから走ってきた軽自動車を
運転する中年の女性から、この広い道の交差点を渡るとすぐ細い道にぶつかる
ので、その道を右に行くと橋があると教えられる。

お礼を言って、交差点を渡ろうとすると右手にうどんのやまびこを見つける。
そうすると、この交差点野崎にある細い道を左に曲がるとすぐ橋があるはず
なので、交差点を渡り細い道を女性に聞いた方向とは逆に曲がり歩く。

 ほどなく右手に橋があったので、その橋を渡り、すぐ、左に折れ、
地図に従って歩く。

 畑の中の道をドンドン歩いていく。
今日は天気も良く、風も昨日とは違って暖かい。フリースを脱いで
綿のシャツ姿になり、腕まくりをして歩く。
気持ちいい風が、頬に当たる。

 11:00分、ちょっと道に迷ったが、無事に国分寺に着く。
国分寺の山門前にある「タオルの店五九楽館」はやっていなかった。
テントが残っているだけで、その中はガランとしている。


第59番札所 国分寺

 階段を登って境内にはいると数人のお遍路さんがいるだけで閑散としている。
境内には太陽の光が当たり、眩しいくらいだ。気温も上昇している。
お参りを済ませた後、境内で日向ぼっこをする。
昨日までの冷たい風と打って変わって、今日の風は暖かく気持ちが良い。

 ここで、今晩の宿を丹原町にある栄家旅館に決めて電話をする。
女将さんが電話に出て,OKの返事を貰う。
 さて、宿も決まったし、お腹もすいてきたので昼食を取ろうと思った。
国分寺の先に食べ物屋がありそうなので、国分寺を後にする。

 15分ほど歩いたところに「いちりき」という和食のレストランを見つける。
ちょっとしゃれた感じの建物なので入るのを躊躇したが、
この先にどんな食べ物屋さんがあるか分からない。
小綺麗な店の中にはいると、お客さんはほとんどいなかった。
一番奥の席に座り、肉うどんを頼む。

 肉うどんのお陰でお腹の中もすっかり暖かくなったので、
ここからは、フリースも脱いで身軽になって歩く。

 伊予桜井の街を歩いていくと、国道196号に合流する。
交通量の多い道路なので歩道が付いているが、ゴオーゴオーという騒音の中を
歩くのは気が滅入ったしまう。

 国道が少しずつ登り坂となってくる。
歩道も狭くなってくるので、騒音が一層ひどくなる。
 左手に小さな集落があり細い道が国道と平行しているようなので、
その道を歩く。
わずか10メートルか20メートル離れるだけで騒音がぐんと少なくなる。
 集落の中を歩いていくと道が国道から離れていく。
少し戻って、国道際で一休みする。

 一休みして気持ちも新たに歩き出すと、東予市との境に来る。
ここから右手にある小道には入らなければいけないが、
行き交う車が多いのでなかなか国道を横切ることが出来ない。
 やっと、国道を横切ると、ほとんど車の走っていない車道となる。
東予学園の横を気持ちよく歩いていると、道が下り坂となり見晴らしの
いいところに出る。
山頂付近が雪で白い山並みが目の前に広がっている。
一番白いのがきっと石鎚山なのだと思うが、どの頂が石鎚山か分からない。

 道はここから集落へと続いているが、細く狭い道となる。
 少し下ったところで、お婆さんから声を掛けられる。
ミカンでもといって、3個お接待してくれる。
ここでお婆さんに、石鎚山の山頂がどれなのか教えて貰うと、
一番右端の高い雲に隠れている山頂が石鎚山だと教えてくれる。
お礼を言って、坂道をドンドン下る。

 伊予三芳の街を歩いていると急に右足の脹ら脛が痛くなる。
まるで針を刺されたような痛みが走る。
ほどなく、日切大師なので、そこまで我慢して歩く。

 14:05分、狭い路地に入ると、突き当たりに日切大師堂がある。
裏びれた小さなお堂だ。隣にある民家はまるでゴミ屋敷のようだ。
ゴミともがらくたとも言いようのない物が家の回りに捨てられている。
取りあえずお参りをして、木陰で休んでいると、隣の家から出てきた
おじさんが話しかけてくる。
どうやら、この日切大師堂を守っている人のようだ。
北海道からお遍路に来ていることなどを話していると、庭にあるミカンの木から
ミカンを2個切り取ってお接待してくれる。
お礼を言って日切大師堂をあとにしたが、脹ら脛の痛みはおさまっていた。
あの痛みは一体何だったのだろう。

 日切大師堂から10分ほど歩いたところで、玄関の開いている家の前を
通り過ぎると、「お遍路さーん」と声がかかる。
振り返って少し戻ると、家の中から70歳は過ぎている上品なお婆さんが出てくる。
「これをお接待したいのですが」と言って、小さなフクロウのマスコットを
4~5個渡してくれる。
見ると、大きさが2センチほどのフクロウだ。
手芸品のようで、赤や紫、桃色などカラフルな布をベースに可愛らしい目も
付いたフクロウだ。
お礼を言って納め札を渡すと、「フクロウは「不苦労」と書くこともでき、
「苦労せず」と読むこともできるので、お守りとして渡している」と
教えてくれる。
可愛らしいフクロウを1個杖に付けて歩くことにした。
表札を見るとNさんと書かれている。お婆さんありがとう。
Nさんからもミカンを3個頂いたので、ザックの中にミカンがあふれている。
でも、このような出会いがあるから、お遍路は楽しい。

 さて、お正月休みは郵便局の休みが長いので、9月のお遍路のように、
お金がおろせずに久百々さんの宿代を踏み倒すなどということがないように、
どこかでお金をおろさなければいけないと思っていた。

 ちょうど、お遍路道沿いに吉岡郵便局があったので少し多めにおろしておく。
これで、年明け4日までの宿代は大丈夫だ。

 空模様がおかしくなってきた。いつの間にかドンヨリと曇っている。
風も強くなってくる。寒くなってきたので雨具も付けて歩く。
丹原町にはいるが、市街地はまだ先の方だ。
なだらかに下っている道の先に市街地が見えている。
もう一息だ。疲れてきた体に活を入れる。

 ようやく丹原町に入ってきた。役場や郵便局がある。
さて、栄家旅館の場所を探さねばと思っていると、街角に街路図がある。
よく見ると、栄家旅館が書かれている。
これで、だいたいの場所もわかったので、丹原町の商店街を真っ直ぐ歩き
栄家旅館を目指す。

丹原町の商店街を抜けるとYの字の交差点がある。
何の気なしに左に曲がって進む。
しばらく行くと丹原高校の前に来たが栄家旅館がみつからない。
道を間違ったと思い引き返し、Yの字交差点を今度は右に行くと
すぐ近くに栄家旅館がある。

 16:00分、栄家旅館に着く。  
 
 女将さんので迎えを受け、2階の部屋に案内される。
洗濯機の場所を聞くと外にあると言われる。
玄関を出た駐車場の隅に洗濯機があった。
荷物を整理し、洗濯に取りかかっていると、食べませんかと焼餅を持ってきて
くれる。
熱いのでフウフウ言いながら食べる。おいしかった。
洗濯をしていると、霧雨が降ってくる。

 夕食の時間まで、しばしウトウトうたた寝をする。

 風呂に入り、夕食を食べに1階に行くと、今晩泊まるもう一人の客が
ようやく着いたようだ。

ご主人が食事を運びながら説明してくれる。
今晩の食事に出ている野菜は全て自家製のものでご主人が育てているものだ
という。
自然薯も出ていたので、これもですかというと、そうですと言われる。
自然薯は体に良いので皆さんに出しているようだ。

 ご主人はタクシーの運転手をしていたようで、お客さんを乗せて
お遍路にも随分出掛けたことがあると話してくれる。
 女将さんにNさんからお接待されたフクロウを数個あげる。
「私、フクロウ大好きなんです」と、とても喜んでくれる。

 今晩の、もう一人のお遍路さんが食卓に付く。
年齢は30過ぎのちょっと腹が出かかっているがっちりした体系の男性だ。
延命寺の先から歩いてきたと話している。
ご主人が、到着が遅いので暗くなるし道が分からないかと思い
迎えに行っていたが、探せなかったと話している。

 そうだ、歩いているときは自分一人でしっかり歩いているつもりでも、
自分の見えない、感じないところでどれだけ宿の人や地元の人に心配をかけたり、
世話になっていることがあるかを考えながら歩かなければいけない。
 この人は、暗い中でも宿を探してこれるかもしれないが、
宿の人にしてみれば、道に迷っているのではないかといろいろと心配している。
遅くなるなら電話1本かけるだけの気遣いがあればいいのになあ~と思う。
他山の石として、私も気を付けなければいけないと思った。

 この人は、明日は横峰寺から石鎚山へ登ると言っている。
でも、石鎚山の山頂付近は雪で真っ白になっている。
どこまで登れるのだろうか。

 明日はいよいよ横峰寺だ。
山登りなので早めに床につく。

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  宿の予約については、私は当日のお昼頃までにはするようにしています。
 宿の仕事を考えると、昼食時間が一番連絡が付きやすいと思って電話を
 かけています。
  最近、宿泊の予約をしておきながら連絡なしにキャンセルする人も
 いるようです。
 このような場合、今回の栄家旅館のご主人のように、どこかで道に迷って
 いるかもしれないと思い捜しに行く親切な宿もあります。
 泊めていただく方の心得として、宿に着くのが遅くなるようでしたら
 必ず連絡を入れていただきたいものです。
 そうすれば、宿に人も安心して待つでしょうし、歩いている方も、無用の
 心配をかけずに済みます。
  でも、早立ちして早めに宿に着くような行程で歩くことをおすすめします。
 自分一人で歩いているのではなくて、歩かせていただいているという気持ちが
 大切だと思います。 

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