四国遍路テクテク日記

「四国を歩いて遍路する。」にこだわって平成14年のGWから2年間、5回に分けて歩いた記録を中心に遍路に関するあれこれ。

平成16年1月3日(伊豫から讃岐・第34日目)

2005-08-23 09:18:53 | 第4回(伊予から讃岐)
1月3日(土曜日)
 (第8日目・通算第34日目・歩行距離 36.7km・歩行歩数45,843歩)

 5:30分に起きて朝のお勤めに行く準備をしていると電話が鳴る。
ご主人が心配して電話してくれる。
お礼を言って電話を切る。

 人気のない商店街から金堂の前を通り大師堂へ行く。
大師堂に入ると数人のお坊さんがいるが、お参りの人はほとんどいない。

 正面に護摩壇があり、そこに黒い衣をつけたお坊さんが座わり、
お寺の人が数人その前に座ったので、私もその横に座る。
 護摩供養が始まるとその奥の祭壇に住職らしい僧侶が7~8人のお坊さんを
従えて席に着く。
一番奥に昨日の尼さんが座っている。

 護摩供養とその奥で行っている朝のお勤めは全く別々に行われているようだ。

 30分ほどで、参拝者に対する言葉もなく淡々と進み、終わってしまう。
参拝者が数人しかいないせいなのか?

 宿に戻る途中、再度、金堂にお参りをする。

 朝食を終え、7:25分、ご主人に見送られて金倉寺へ向かう。

 昨夜の金比羅詣が効いているのか、体が重く足の進みが悪い。
おまけに天気はいいが気温が上がってこない。
時折、冷たい風が吹いてくる。
 意気が上がらないままダラダラと歩いているが、
金倉寺までは4キロほどしかない。


第76番札所 金倉寺

 8:10分、金倉時の山門に着く。
境内の中はガラ~ンとして、何故か寒々しい。
本堂にお参りをしていると団体遍路の一行がやってくる。
巻き込まれないように大師堂も先にお参りをして、納経所へ行く。

 納経を終え、境内に立てられているテントに行くとショウガ湯を
お接待してくれる。
ショウガのピリッとした刺激に体が元気づけられる。
 団体遍路の人達もショウガ湯のお接待を受けにくる。
ほとんど年輩のお婆さんだ。
ワイワイガヤガヤと元気な声がテントの中に響く。
やっと体が温まってきたので先へ進むことにして、お接待してくれた
お婆さんにお礼を言う。

 山門から出たすぐ先にある交差点でどちらに進めばいいか分からなくなる。
交差点の向こうにパチンコ店があり、その隣の石材店におじさんがいる。
道隆寺へはどちらへ進めばいいか聞くと、この石材店の左横にある道が
遍路道だと教えてくれる。

 交差点を渡り、おじさんにお礼を言って、遍路道へ入る。
畑の中をうねうねと続く道を歩いていくと、目の前に大きな工場が見えてくる。
金陵という酒造メーカーの工場だ。
この工場の裏手を回り込むようにして遍路道を歩いて行くと見覚えのある
大きな楠の木のところに出る。
葛原正八幡神社の楠の木だ。

 そうだ、この楠の木の向かい側に以前千円をお接待していただいた
秋山さんの家がある。
見ると、相変わらずの佇まいで秋山さんの家がある。
 表札を見ると秋山さんのお名前が書かれているので、
家の前で手を合わせ、先に進む。

 住宅地の中をドンドン歩いていくと、ほどなく、正面に道隆寺の山門が
見えてくる。


第77番札所 道隆寺

 9:25分、道隆寺に着く。

 道隆寺でお参りを済ませ、ベンチで休んでいると、
先ほど金倉寺で入れ違いに歩いていったご夫婦遍路に話しかけられる。

 このご夫婦は、私よりは少し年上といったところで静岡からお遍路に来ている。
今回はお正月に観音寺から歩き出し、今日、この道隆寺で帰るとのこと。
「6年前歩き出したが、なかなか先へ進めない。」などと話してくれる。
でも、奥さんが嬉しそうに、先ほどの金倉寺で納経帳の裏に発願年月日を
書き入れてくれたと話してくれる。
納経帳にはお参りした日付が入らないので、それはいい記念になるなあ~と
思った。

 この、ご夫婦と別れ、道隆寺の裏から国道21号を郷照寺目指して歩く。
郷照寺までは丸亀市内を通り、宇多津町までの約7キロほどだ。

 交通量の多い国道を丸亀市内に向かって歩いていると、
向こうから自転車に乗ったおじさんがやってくる。
そのおじさんが私に向かって、「金倉寺のそばにあるまんだらやに
行かないかと誘ってくれる。」
しかし、ここから金倉寺に戻るのは逆方向へ行くことになる。
「まんだら」は先ほど通ってきた金陵のそばにある善根宿だ。
丁重にお断りすると、おじさんは「まんだらやは友達がやっている。」などと
言うが何としても、この好意は私にとっては迷惑な話だ。 
 今晩泊めていただくならいいが、私は、国分寺までは行くつもりでいる。

おじさんは、善通寺の裏にあるミニ88カ所を回っているだとか、
いろいろな話をしてくれるが、ちょっとピントが外れている。
「まあ、気を付けて回りなさい。」と言って、道隆寺の方へ走っていく。

 丸亀市内に入るがお正月休みで人がほとんど歩いていない。
土器川に架かる蓬莱橋を渡り、後ろを振り返ると丸亀城が見える。
こんもりした山の上に小さな天守閣が見える。

 土器川を渡った先にうどん屋を見つける。
その名もずばり「さぬきうどん」という店だ。
それほどお腹がすいているわけではないが、本格的な讃岐うどんを
まだ食べていないので、この店にはいることにした。

 10:45分、湯気の立ち込めた店内に入りメニューを見るが
何を頼めばいいか迷ってしまう。
結局、大根おろしうどんの小400円を頼む。ツユは熱いのにした。

出てきたうどんを見ると、大きなドンブリに2玉くらいの
アツアツのうどんが入っている。
それをたっぷりの大根おろしに熱い汁を入れたつけ汁に浸して食べる。
表面はモチモチ、中はシコシコ麺でとてもおいしい。
麺が長いのでつけ汁用の容器に入りきれない。
フウフウいいながら全部食べてしまう。
おいしかった~あ。満足!満足!
さすが本場の讃岐うどん!!大満足だ!

 国道を歩いていると宇多津町に入る。
右手に行くと郷照寺の看板が出ている。
 この角を曲がろうとして、ふと反対方向を見ると、国道の左手に
人集りのしている店がある。
何かと思って看板を見ると、なんと「おか泉」だった。
「おか泉」という店は、讃岐うどんの店の中でも超有名店なのだ。
しかし店先で並んでいる人は30~40人はいるだろう。
とても並ぶ気はしないので、おか泉に入るのは諦めた。

 国道を右に曲がり少し行くと郷照寺の手前に餅屋さんがある。
ここで草餅を買って郷照寺へ行くが、この角でも警備員が交通整理をしている。


第78番札所 郷照寺

 11:25分、郷照寺に着く。

 郷照寺は参拝客でごった返している。
駐車場には車があふれ、階段を登り境内にあがるとお守りを買う人やら
お参りをする人で真っ直ぐ前に進めない。
こんなに人の多い境内は初めてだ。

 本堂でお参りを済ませ、左手の階段を上がり大師堂に行こうとするが
人が込み合って進めない。
やっと大師堂の前に着き、灯明台でロウソクに火をつけようとするが
火のついたロウソクで埋まっている。
消えかかったロウソクを外しやっと火をつける。

 大師堂に賽銭を投げようとすると、お堂の中は人であふれ祈祷を受けている。
太鼓や鉦が鳴らされお経が上げられている。

 お参りを終え、大師堂の横に回ると、そこにはテントが張られ
祈祷をする人の受付となっているようだが、ここにも長い列が出来ている。

 そういえば、宿で見たテレビでも、郷照寺や箸蔵寺は厄払いのコマーシャルを
流していた。その効果なのか?

 納経所で納経をしてもらい、裏庭の池のところで一休みする。
大師堂の方から降りてくる人波や鯉に餌をやる子供などを見ながら、
さっき買った餅を食べる。

 さて、今晩の宿も決めなければ行けない。
この時間なら国分寺までは行けるので国分寺町で宿を捜すことにした。
民宿あずさに電話するとOKとの返事。
さて、さて、残りは13キロほどなので夕方までにはつける。

 郷照寺からは、静かな住宅街の中に続く遍路道を歩いていくと、
宇多津町から坂出市にはいる。

 坂出市の中心街にある坂出商店街を歩いていると、お正月休みで閉まっている
店の中に喫茶グリーンという灯りのついている看板を見つける。
今日はそれほど先を急ぐ訳でもないので、ちょっと休んでいくことにする。

 喫茶グリーンにはいると、年輩のお客さんばかりで暗い感じがする。
久しぶりにコーヒーを頼み、週刊紙を見る。
靴と靴下を脱ぎ、すっかりくつろぎモードに入っているとママさんが
焼き芋を食べないかと言って、アルミホイルに包んだ焼き芋をくれる。
お礼を言ってもらうと、まだホコホコしている。

「男の人で食べない人もいるからね。」といって渡してくれた。
「どこから来たの?」と聞かれたので、お定まりの話をしていると、
そばにいた常連のお爺さんが「偉いもんだ!」と感心してくれる。

 さて、店を出ようと思いお金を払うとカウンターにいたおばさんが
「お金はいい!」という。
先ほど焼き芋をくれた人がママさんかと思ったらどうやら違うようだ。
このおばさんが本当のママのようだ。
「私もいろいろな人にお世話になってこの商売をしているからね。」と
いってお金を返してくれる。
お礼を言って納札を渡す。

 喫茶店を出てから商店街を歩くと見覚えのある店がある。
少し進むとまた見覚えのある店が現れる。
おかしいなあと思ってハッとした。
どうやら店を出たときに道を間違って宇多津町の方へ戻っているようだ。
あわてて、回れ右をして歩く。

 一本道だから間違えるはずはないのにと思い、よく考えるとグリーンさんは
商店街の右側にあるのに左側にあったような気がして、
左に曲がってしまったからおかしかったのだ。
ちょっと頭がボーッとしてきたか?

 商店街を抜けた後も道なりに真っ直ぐ進んでいくと、
ヘンロ標識が右手の細い道を差している。
その道を進むと踏切があり、そのまま進んでいくと八十場の水に着く。
この大師堂の前を進むと、白峰神社の裏手に出る。
ほどなく天皇寺だ。


第79番札所 天皇寺(高徳院)

 13:55分、白峰神社の本殿前を通り天皇寺に着く。
このお寺は、白峰神社の一角にひっそりと、まるで間借りをしているように
建てられている。
境内というスペースもないような場所に本堂と大師堂が棟を寄せ合うように
建てられ、ちょっと落ち着かない。

それでも、本堂と大師堂にお経を上げて納経所へ向かう。
納経所はちょっと離れた場所にある。

 神社の鳥居の前に老人の男性遍路が托鉢をしている。
その前を、ちょっと会釈だけして通り過ぎる。

 天皇寺から坂道を下り予讃線沿いの旧道を歩く。
JR鴨川駅前の交差点を左に曲がり、綾川に架かる綾川橋を渡り、
堤防の上を歩く。

 綾川橋を曲がって堤防の上を歩いていると、左手にお城のような
変わった形の建物がある。
何だろうと思って歩いていると、どうやらラブホテルのようだ。
塀を回してあり中が分からないようになっているが、出口が堤防の方にある。
その出口を何の気なしに見ながら歩いていると1台の車が出てくる。

 見るつもりはなかったのだが、出てきた車が正面から受ける日差しのせいで
運転席と助手席に座っている人がハッキリと見えてしまった。
運転していたのは65歳くらいの男性。
髪は薄くけっこうな歳だ。
助手席の女性はソバージュの髪を両手でたくしあげ、二の腕と顔が艶々と
光っている。
年齢は20代後半といったところか。
この年齢差を普通に考えると会社社長のお爺さんと水商売のホステスさんと
いった関係に見える?
いずれにしても不倫関係といった方が的を得ているのではないか。

 お遍路をしている身にとっては何も関係がないものではあるが、
お正月休みの白昼という時間を考えると、妙に生々しいものを見てしまった
気がして、何とも言いようのない気持ちが湧いてくる。

これは、羨ましいという気持ちか?または、修行が足りないせいなのか?

 綾川の堤防から国道11号の歩道を歩く。
交通量が多く騒音がひどい道を、左手に見える五色台を回り込むように歩く。
小高い丘を越えると左手に国分寺町が見えてくる。


第80番札所 国分寺

 15:35分、国分寺町の山門に着く。
 山門は参拝客の出入りでけっこうな人だ。

 山門を入ろうとすると境内から車椅子を押した夫婦が歩いてくる。
車椅子にはお婆さんが座り、押しているのは息子さんか?
その横を奥さんらしい人が一緒に歩いてくる。
山門の中央には太い土台になっている横木があり、その木を車椅子の前輪を
浮かして渡ろうとするが、横木の高さは30センチ以上あるのでうまく渡れない。
お婆さんがどこか引っかかっているのか「痛い!痛い!」と声を上げる。
すると、境内から歩いてきた男性が車椅子の前の方を持ち上げようとしたので
私も手伝い、二人で車椅子の両側から持ち上げて、横木を乗り越える。

さらに、その先には数段の階段があるので、そこも同じ要領で降ろして上げる。
車椅子を押していた人とお婆さんがお礼を言う。

 山門に立てかけた杖を持って境内に入る。
すでに日が傾いてきており、ちょっと寒くなってきた。

 本堂の前でお経を唱えるが、教本を見ている目が文字を読んで行けない。
頭がボーっとして目は教本を見ており書かれている文字を認識しているが、
見えている文字に従ってお経を唱えているのではなく、
頭とは関係なしに口が勝手に動いて般若心経を唱えている。

 不思議だ!暗記したお経を唱えている感覚とも違う。
まるで口だけが独立して勝手に般若心経を唱えている。

 今まで般若心経を暗記しようとしたけれどなかなか出来ないでいた。
それがすらすらと口をついて出てくる。
頭の中に覚えているものを思い出しながら唱えるのではなく、
口が勝手に発声しているという感覚だ。

 大師堂で教本を見ないで般若心経を唱えてみると、なんと出来るではないか。
やっと、般若心経が身に付いてきたのか??

 16:10分、民宿あずさに着く。
この宿は変な宿だ。普通の住宅を民宿にしているようだ。
居酒屋にカラオケ店などもやっているが民宿の看板がどこにもない。
私の泊まった部屋は6畳ほどの部屋でセミダブルのベットがある。
食事も、別な場所から運んできており、ご飯がドンブリ一杯に盛られている。
それを置いて行くだけで、給仕をするわけでもない。
でも、洗濯もできたし、風呂にも入れたので別に不満はない。

 夕食を運んでくれたときに宿代を払い、五色台への道を教えてもらう。
明日は勝手に出発して下さいといわれる。

 今回のお遍路をどこで区切るか考えていた。
明日は高松市内へ入る。
次に来たときのことを考えると交通の便利がいい場所が一番だ。
そうすると、五色台にある根来寺ならば不便だから何としても山は
降りなければならない、しかしあまり進んでしまうと88番の大窪寺まで
行くのにもの足りなくなってしまう。
そうこう考えると一宮寺しかない。

一宮寺ならば高松市内なので交通の便もいいだろう。
そして、一宮寺からなら88番大窪寺までは2日間でゆっくり歩ける距離だ。

 この先の行程を考えると、88番まで2日間、お礼参りの1番まで2日間、
高野山に2日間のちょうど1週間でこの歩き遍路を完結することが出来る。

 そう考えると、明日は一宮寺までで終えるのが一番いいと思う。


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