「アリスとテレスのまぼろし工場」を観てきました。
以下その感想なのですが、ネタバレはありません。
あらすじだけ簡単に紹介します。
製鉄所の爆発事故で出口を失い、時まで止り永遠の冬に閉じ込められてしまった町、見伏(みふせ)。
町の住人は
「このまま何も変えなければいつか元に戻れる」
と信じ『変える』ことを禁じ、戻れた時に戸惑わぬよう《自分確認票》の提出を義務付けていた。
《自分確認票》には、住所・氏名・年齢・髪型・趣味・好きな人・嫌いな人までもが明記されている。
その《自分確認票》を書いては消し、書いては消して、提出できずにいる中学3年生の菊入正宗(きくいりまさむね)。
そんな正宗は、『嫌いな人』欄に名を記した同級生佐上睦実(さがみむつみ)に製鉄所内部にある立入禁止の第五高炉へと連れて行かれ、そこで、言葉を話せない狼のような少女と出会う。
睦実から、その少女の世話を手伝うよう依頼された正宗は、少女に五実(いつみ)と名付ける。
正宗、睦実、五実。
3人の想いが交錯しぶつかり合い、『変化を禁じた町』に変化をもたらしていく。
以上が、あらすじです。
で、映画の紹介文には
二人の少女と正宗との出会いが世界の均衡を崩していき、日常に飽きた少年少女たちの、止められない<恋する衝動>が世界を壊し始める――。
とあります。
確かに、ヒリつくような<恋する衝動>が話を引っ張っていき、この世界を壊していくのですが、その裏に確かにある愛に胸が熱くなるんですよ。
だから、私は勝手に
“時間も空間も、幻も現実も超える『想い』がそこにある”
という煽り文句をつけたい!
と、言うのが映画の説明で、以下は私の妄想によるみゆきさんと岡田麿里監督への感想です。
観終わって、というか、観ている途中からふつふつと湧き上がってきたのが、タイトルの
“岡田麿里氏による『夜会』”
という言葉。
次に浮かんできたのが『親和性』という言葉。
『親和性』の意味に「異種の物質がよく結合すること」とあります。
みゆきさんは、試写会に寄せたメッセージで、
「アニメーションの世界と中島みゆきという組み合わせは、異種格闘技みたいな気がするんですけれど……」
と言われてましたが、全く格闘せず見事に結合していましたよ。
中島みゆきと岡田麿里という2人の作家性というか、世界観が似ているように私には思えたから。
映画を観て、みゆきさんが岡田監督の脚本を読んで『しもべ・推し』になったのも、依頼を快諾されたのも納得でした。
“ストンと胸に落ちた”って、感じです。
岡田監督自身、みゆきさんに依頼した理由を
「『選ばれなかった自分』や『置き去りにされた想い』を中島さんの歌はちゃんと見つけてくれる。
そんなところに強く惹かれました」と語られています。
また、作品のイメージと『二雙の舟』と『荒野より』が繋がっているとも仰ってます。
この理由そのものが、お二人の目線の一致ではないでしょうか。
岡田監督の言う
“『選ばれなかった自分』や『置き去りにされた想い』”。
お二人の根底に流れるもののような気がします。
そんな作家性もさることながら、みゆきさんが脚本を読み終わる前に『しもべ・推し』になっていたのは、岡田脚本の丁寧さにあるんじゃないかとも思うんです。
世界の構築も人の想いも、丁寧に描き出されているんです。
絵で見せたらいいと言うのではなく、言葉の選び方、人物の掘り下げ、ストーリー運び等がしっかりしてるんですよ。
だから、痛いほど登場人物へ感情移入してしまう。
そこに、MAPPAの綿密で迫力のあるビジュアルが重なることで、重厚で奥行きのある世界が広がる。
岡田監督の伝えたい『想い』に胸を打たれるんです。
後半は、どこがどうでとかは関係なく涙が止まりませんでした。
『心が持っていかれる』、そんな感じです。
その感じが、『夜会』を観ている時に非常に似ていたんです。
そして、直ぐに『もう一度観たい!』と強く思うところも。
しかし、全ての人に勧められるか、と言うと……う〜ん、と悩みます。
映画館でも、「ラストが……」と言ってる声が聞こえてきましたしね。
理屈で考えたら無理ですよ、と言いたかった。
こんなところも『夜会』に似てるかな(笑)
似てると言えば、こじつけぽいですが、絵を描かないアニメ監督の岡田麿里氏と、『夜会』をやるみゆきさんは似てると思うんです。
自身の伝えたいことを突き詰めて、領域外の分野に踏み込む。
枠に囚われない、そんな柔軟で自由で強い想いを持っているところが、似ていると思うんです。
そんな所にも惹かれ合ったのかな、と。
私の勝手な想像てすが。
最後に、肝心な『心音』について。
ここだけ、ネタバレさせてください。
『心音』は、エンドロールで流れます。
全く、映像はありません。
黒バックにスタッフロールが映し出されるだけです。
しかし、蘇るんです、走馬灯のように。
岡田監督も、
「言葉を失ってしまい、気づいたら泣いていました。
ここまで作品に寄り添って書いてくださるんだなと……歌詞もメロディも、ものすごい風圧がありました。
映像がぱあっと浮かんで……」
と、最初に聴かれた時のことを語っておられますが、同感です!
ラストでひと息ついた涙腺が、再び崩壊しました。
岡田監督が、
「歌詞もメロディも」
と言われているように、歌詞だけではなくメロディの進行具合やみゆきさんの歌声の変化、全てに映画をもう一度観ているような感覚にさせられるんです。
みゆきさんが以前、『夜会』が難解だみたいなことを言われた時に、
「歌詞で全て説明してるのに」みたいなことを言われてたことを思い出していました。
余計な言葉は使わずに、作品の本質を表す。
本当にみゆきさんの真骨頂ですね。
『心音』は、12日にフラゲして聴きました。
その時に感想を書こうかと思ったんですが、映画を観た後でどう変わるかも込みの方が良いかと今日まできたのですが……。
映画を観るまでに何度も聴いていたのに、観た後は、全て塗り替えられた感じです。
もう、切り離しては考えられないと言うか。
映画の帰りに聴いた時も、映像が浮かび泣きそうになって慌ててしまいましたし、帰って聴いて泣いてしまいました。
今は、何度も聴いて落ち着き、これを書くこともできるようになった次第です。
本当に、久しぶりに『夜会』を観た後の様な興奮を味合うことができました。
ただ、昼前の一番いい時間帯だったのに3割くらいの入りだったのが心配。
本当に良い作品なので、興味のある方は是非❗
涙活にもなります。
最後に、この映画で一番印象的だったのが、
『嫌い』と言うワードです。
『嫌い』が凄く切なくて、思い出しては泣きそうになります。
それ以外にも、いっぱい胸に刺さる言葉がありますよ。
久しぶりに長々と書いたので、支離滅裂になってしまいました、ごめんなさい🙇
それでも、最後までお読みいただきありがとうございます。
では、また。